夏休みのある午後二時。
駅前の広場には、真夏の太陽が容赦なく照りつけていた。
「暑い……暑すぎる……。なんで夏休みにわざわざ外に集まるのよぉ……」
結衣が日陰を探していると、向こうから乃愛とひまりが歩いてきた。
「結衣、お待たせ」
「おっ、来た来た! 乃愛、ひまり!」
「ふふ。結衣、さっきからずっと日陰に避難してたよね」
「だって暑いんだもん! 今日、絶対三十五度くらいあるって!」
「天気予報では三十二度だぞ」
背後から聞こえた声に、結衣が振り返る。
「高城くん! いつからいたのよ!」
「今来たとこ」
颯人の隣には、午前中の部活を終えたばかりの琉生もいた。
「お疲れ様、琉生くん」
乃愛が嬉しそうに笑う。
「おう。乃愛も待たせたな」
「ううん。全然」
二人の自然なやり取りに、結衣がニヤッと笑った。
乃愛がその視線に気づき、頬を赤くする。
「もう、結衣……」
そんな四人を見ながら、ひまりが小さく笑った。
「でも、こうやって五人で遊ぶのって、なんだか新鮮だね」
「そうそう! 今日は思いっきり遊ぶよ!」
結衣が元気よく腕を上げる。
「まずは商店街! それから公園で休憩!」
「お前、今日の予定もう全部決めてんの?」
「当たり前でしょ!」
五人の笑い声が、夏の午後の駅前に響いた。
それから五人は、商店街をのんびり歩いた。
結衣が気になる雑貨を見つけるたびに立ち止まり、ひまりがそれを眺め、颯人が「まだ見るのかよ」と呆れ、琉生と乃愛がその後ろで笑っている。
そんな中――。
「ねえねえ、ちょっと待って!」
結衣が、店先に並んだキーホルダーを指差した。
小さなニコちゃんマークの下に細長いタグがつき、そこには――。
『BEST FRIEND』
と、小さな文字で刻まれている。
「かわいい……!」
乃愛が目を輝かせた。
「しかも、色違いが五個あるんだよ!」
ピンク、ブルー、イエロー、ミントグリーン、オレンジ。
半透明なアクリルの五つの笑顔が、夏の日差しを受けてころころと揺れている。
「五人分、ちょうどあるな」
琉生が笑う。
「でしょ? みんなでお揃いにしようよ!」
「いいね。夏休みの思い出になりそう」
ひまりも頷いた。
「私、イエローがいいな」
乃愛がそっと手を伸ばす。
「じゃあ俺、ブルー」
「私はオレンジ!」
結衣が即答し、ひまりはピンクを選ぶ。
残ったミントグリーンを、颯人が手に取った。
「……俺、これか」
「高城くん、似合ってるよ」
結衣が何気なくそう言うと、颯人は一瞬だけ彼女を見る。
「……そうかよ」
少し照れくさそうに、キーホルダーへ視線を落とした。
会計を済ませると、五人はそれぞれのキーホルダーを大切にしまう。
「二学期になったら、みんなスクールバッグにつけようね!」
「それ、いいな」
琉生も笑った。
乃愛は袋の中にあるイエローの小さな笑顔を、そっと見つめる。
二学期。
この五つの笑顔が、みんなのスクールバッグで揺れる日が、今から少し楽しみだった。
その後、五人はクレープを買い、近くの公園へ向かった。
「はぁ~……生き返る~!」
ベンチに座った結衣が、幸せそうにクレープを頬張る。
「結衣、さっきまで暑いって言ってたのに」
「甘いものは別腹なの!」
「それ、暑さと関係あるのか?」
「高城くん、細かい!」
隣で琉生が笑いながらクレープを食べていると、乃愛がふと、その頬を見た。
「琉生くん、クリームついてるよ」
「え?」
「ここ」
乃愛が自分の頬を指先で示す。
琉生が慌てて同じ場所を拭うと、結衣がニヤニヤしながら二人を見た。
「はいはい。青春してますねぇ」
「うるせぇ、橘」
「だって見てて面白いんだもん」
ひまりまで楽しそうに笑い、乃愛は恥ずかしそうに俯いた。
「そうだ。今日の写真、あとでグループLINEのアルバムにまとめよーっと!」
結衣がスマートフォンを掲げる。
「俺の変な顔は入れんなよ」
「えー、どうしようかな~」
「おい」
颯人が眉を寄せると、また笑い声が重なった。
学校では毎日のように顔を合わせていた五人。
けれど夏休みになれば、それぞれに予定がある。
だからこそ、こうして一緒に笑える今日の時間が、乃愛には少し特別に感じられた。
「ねえ、乃愛」
結衣が笑顔を向ける。
「今年の夏、いっぱい思い出作ろうね」
「うん……!」
乃愛も笑って頷いた。
その横から、琉生がそっと乃愛に近づく。
「……俺ともな」
小さな声が、乃愛にだけ届く。
「……うん」
頬を赤くしながら、乃愛も小さく答えた。
「おい、琉生。聞こえてんぞ」
「マジかよ、颯人」
「ふふっ」
結衣とひまりも笑い出す。
五人の笑い声が、蝉の声と一緒に夏の青空へ溶けていった。
乃愛のバッグの中には、五人で選んだイエローの小さな笑顔。
二学期になれば、それぞれ違う色の笑顔が、五人のスクールバッグで一緒に揺れる。
そんな光景を思い浮かべるだけで、乃愛の胸にも、小さな笑顔がひとつ増えた気がした――。
駅前の広場には、真夏の太陽が容赦なく照りつけていた。
「暑い……暑すぎる……。なんで夏休みにわざわざ外に集まるのよぉ……」
結衣が日陰を探していると、向こうから乃愛とひまりが歩いてきた。
「結衣、お待たせ」
「おっ、来た来た! 乃愛、ひまり!」
「ふふ。結衣、さっきからずっと日陰に避難してたよね」
「だって暑いんだもん! 今日、絶対三十五度くらいあるって!」
「天気予報では三十二度だぞ」
背後から聞こえた声に、結衣が振り返る。
「高城くん! いつからいたのよ!」
「今来たとこ」
颯人の隣には、午前中の部活を終えたばかりの琉生もいた。
「お疲れ様、琉生くん」
乃愛が嬉しそうに笑う。
「おう。乃愛も待たせたな」
「ううん。全然」
二人の自然なやり取りに、結衣がニヤッと笑った。
乃愛がその視線に気づき、頬を赤くする。
「もう、結衣……」
そんな四人を見ながら、ひまりが小さく笑った。
「でも、こうやって五人で遊ぶのって、なんだか新鮮だね」
「そうそう! 今日は思いっきり遊ぶよ!」
結衣が元気よく腕を上げる。
「まずは商店街! それから公園で休憩!」
「お前、今日の予定もう全部決めてんの?」
「当たり前でしょ!」
五人の笑い声が、夏の午後の駅前に響いた。
それから五人は、商店街をのんびり歩いた。
結衣が気になる雑貨を見つけるたびに立ち止まり、ひまりがそれを眺め、颯人が「まだ見るのかよ」と呆れ、琉生と乃愛がその後ろで笑っている。
そんな中――。
「ねえねえ、ちょっと待って!」
結衣が、店先に並んだキーホルダーを指差した。
小さなニコちゃんマークの下に細長いタグがつき、そこには――。
『BEST FRIEND』
と、小さな文字で刻まれている。
「かわいい……!」
乃愛が目を輝かせた。
「しかも、色違いが五個あるんだよ!」
ピンク、ブルー、イエロー、ミントグリーン、オレンジ。
半透明なアクリルの五つの笑顔が、夏の日差しを受けてころころと揺れている。
「五人分、ちょうどあるな」
琉生が笑う。
「でしょ? みんなでお揃いにしようよ!」
「いいね。夏休みの思い出になりそう」
ひまりも頷いた。
「私、イエローがいいな」
乃愛がそっと手を伸ばす。
「じゃあ俺、ブルー」
「私はオレンジ!」
結衣が即答し、ひまりはピンクを選ぶ。
残ったミントグリーンを、颯人が手に取った。
「……俺、これか」
「高城くん、似合ってるよ」
結衣が何気なくそう言うと、颯人は一瞬だけ彼女を見る。
「……そうかよ」
少し照れくさそうに、キーホルダーへ視線を落とした。
会計を済ませると、五人はそれぞれのキーホルダーを大切にしまう。
「二学期になったら、みんなスクールバッグにつけようね!」
「それ、いいな」
琉生も笑った。
乃愛は袋の中にあるイエローの小さな笑顔を、そっと見つめる。
二学期。
この五つの笑顔が、みんなのスクールバッグで揺れる日が、今から少し楽しみだった。
その後、五人はクレープを買い、近くの公園へ向かった。
「はぁ~……生き返る~!」
ベンチに座った結衣が、幸せそうにクレープを頬張る。
「結衣、さっきまで暑いって言ってたのに」
「甘いものは別腹なの!」
「それ、暑さと関係あるのか?」
「高城くん、細かい!」
隣で琉生が笑いながらクレープを食べていると、乃愛がふと、その頬を見た。
「琉生くん、クリームついてるよ」
「え?」
「ここ」
乃愛が自分の頬を指先で示す。
琉生が慌てて同じ場所を拭うと、結衣がニヤニヤしながら二人を見た。
「はいはい。青春してますねぇ」
「うるせぇ、橘」
「だって見てて面白いんだもん」
ひまりまで楽しそうに笑い、乃愛は恥ずかしそうに俯いた。
「そうだ。今日の写真、あとでグループLINEのアルバムにまとめよーっと!」
結衣がスマートフォンを掲げる。
「俺の変な顔は入れんなよ」
「えー、どうしようかな~」
「おい」
颯人が眉を寄せると、また笑い声が重なった。
学校では毎日のように顔を合わせていた五人。
けれど夏休みになれば、それぞれに予定がある。
だからこそ、こうして一緒に笑える今日の時間が、乃愛には少し特別に感じられた。
「ねえ、乃愛」
結衣が笑顔を向ける。
「今年の夏、いっぱい思い出作ろうね」
「うん……!」
乃愛も笑って頷いた。
その横から、琉生がそっと乃愛に近づく。
「……俺ともな」
小さな声が、乃愛にだけ届く。
「……うん」
頬を赤くしながら、乃愛も小さく答えた。
「おい、琉生。聞こえてんぞ」
「マジかよ、颯人」
「ふふっ」
結衣とひまりも笑い出す。
五人の笑い声が、蝉の声と一緒に夏の青空へ溶けていった。
乃愛のバッグの中には、五人で選んだイエローの小さな笑顔。
二学期になれば、それぞれ違う色の笑顔が、五人のスクールバッグで一緒に揺れる。
そんな光景を思い浮かべるだけで、乃愛の胸にも、小さな笑顔がひとつ増えた気がした――。


