隣の席のキミとひみつの合図 ~強い絆と恋の付箋。どれだけ離れても、君にだけ届く想いがある~

月曜日の放課後。

乃愛は結衣とひまりに連れられ、駅前のショッピングモールへ来ていた。

きっかけは、朝。

昨夜、羽瀬くんと交わしたLINEを二人に見せたことだった。

土曜日に、市立図書館で二人きりで勉強する。

それを知った結衣が、黙っているはずもなく――。

「――よし! 今日は乃愛の『最高に可愛い』を、私たちが一二〇パーセント引き出してあげるからね!」

「そ、そんなに気合い入れなくても……っ」

「何言ってんの。初めて学校の外で二人で会うんでしょ? 大事じゃん!」

目を輝かせた結衣が、店内から次々と服を持ってくる。

「ね、これどう?」

「結衣、それはちょっと攻めすぎ」

すかさず、ひまりの冷静な声が飛んだ。

「えー? 可愛いのに」

「可愛いけど、乃愛なら……こっちの方が似合うと思う」

ひまりが手に取ったのは、ほんのり桜色のブラウスと、アイボリーのギャザースカートだった。

柔らかな色合いに、乃愛の目が引き寄せられる。

「……可愛い」

「でしょ? 乃愛の優しい雰囲気にも合うと思う」

「ひまり、天才! 乃愛、これ着てみよ!」

「えっ、い、今?」

「今!」

結衣に背中を押され、乃愛は試着室へ入った。

カーテンを閉め、袖を通す。

着替え終えて鏡の前に立つと、乃愛は思わず瞬きをした。

桜色のブラウスに、ふわりと揺れるアイボリーのスカート。

制服姿とは少し違う自分が、鏡の中にいる。

(……羽瀬くん、変だって思わないかな)

土曜日、この姿を羽瀬くんに見られる。

そう考えた途端、急に恥ずかしくなってきた。

「乃愛ー? 着替えた?」

「う、うん……」

恐る恐るカーテンを開ける。

次の瞬間。

「……っ、乃愛、可愛すぎ!」

結衣の声が店内に響いた。

「乃愛、可愛すぎ! これ、土曜日に羽瀬くんが見たら、絶対顔真っ赤にするって!」

「ゆ、結衣……っ」

顔が熱くなる乃愛の隣で、ひまりも柔らかく微笑んだ。

「うん。本当に似合ってる。乃愛の優しい雰囲気がちゃんと出てるよ」

「……ほんと?」

「ほんと」

鏡の中の自分を、もう一度見つめる。

少し前まで、羽瀬くんと話すだけでも緊張していた。

それなのに今は、土曜日に二人で会うための服を選んでいる。

そんな自分の変化を、二人が自分のことのように喜んでくれている。

それが乃愛には、何より嬉しかった。

「ありがとう、二人とも……」

乃愛は照れながらも、鏡の中の自分へ小さく笑ってみる。

「私、すごくドキドキするけど……この服なら、少しだけ自信が持てる気がする」

「でしょ!」

結衣が嬉しそうに乃愛の肩を抱いた。

「じゃあ、これで決まり! このまま乃愛の家行って、当日の髪型も決めよ!」

「ふふ、賛成」

「えっ、まだあるの……?」

思わず目を丸くした乃愛に、二人の笑い声が重なった。

あれほど緊張して、不安だった土曜日。

けれど、大好きな親友たちがこうして一緒に楽しみにしてくれるだけで、その気持ちも少しずつ変わっていく。

なんだか、宝箱を開ける前みたいに。

怖さよりも、優しくて温かな待ち遠しさが、胸の中で少しずつ大きくなっていた。

買い物を終えた三人は、紙袋を手に店を出る。

「あー、土曜日が楽しみだなぁー!」

「結衣のデートじゃないんだから」

「だって、羽瀬くんの反応が気になるの! 乃愛、めっちゃ可愛くしちゃうんだから!」

「ゆ……結衣!」

「ふふ、結衣、まだやる気満々だね」

「……お手柔らかにお願いします」

そう言いながらも、乃愛の口元には笑みが浮かんでいた。

三人は顔を見合わせて笑い、腕を組んで駅の通路を歩いていく。

土曜日が来るのが、昨日より少し楽しみになっていた――。