隣の席のキミとひみつの合図 ~強い絆と恋の付箋。どれだけ離れても、君にだけ届く想いがある~

お風呂を済ませた乃愛は、自室のベッドに寝転びながら、何度目か分からないほどスマートフォンの画面を確認していた。

一番上にあるのは、夕方交換したばかりの名前。

『羽瀬 琉生』

それを見るだけで、隠れ家で頭をぽんぽんと撫でられた感触まで思い出してしまう。

(本当に……メッセージ、くれるのかな……)

ずっと待っている自分が恥ずかしくなり、乃愛が枕へ顔を埋めた、そのとき。

トロン、と通知音が鳴った。

「……っ!」

慌てて画面を見る。

『お疲れ! ちゃんと無視しないで待っててくれた?笑』

胸が大きく跳ねた。

乃愛はベッドの上に座り直し、すぐに指を動かす。

『お疲れ様です。
無視なんてするわけないですって言ったじゃないですか……。
ちゃんと、待ってました』

送信した直後、すぐに『既読』がついた。

「あ……」

たった二文字なのに、画面の向こうに羽瀬くんがいる。

そう思うだけで、頬が熱くなった。

やがて届いた返信には、高城くんへお礼を伝えたら、なぜか購買の焼きそばパンを要求された、と書かれていた。

思わず笑ってしまう。

学校での付箋とは違う。

誰にも見られない、自分と羽瀬くんだけの会話。

テストのことや、高城くんの予想問題のこと。やり取りを重ねるうちに、乃愛は少しだけ勇気を出して文字を打った。

『もし本当に分からないところがあったら……
私でよければ、いつでも教えますからね?』

送信。

すぐに既読はついた。

けれど――返事が来ない。

画面の上に『入力中……』と表示されては消え、しばらくすると、また現れる。

(……変なこと送っちゃったかな)

お節介だっただろうか。

乃愛がスマートフォンを握り直した、そのとき。

ポン、と通知音が鳴った。

『じゃあさ、今度の土曜日、部活休みだから
市立図書館で一緒にテスト勉強しない?

白石さんに教えてもらったら、
俺も古典なんとかなりそうだし!

……急にごめん。
でも、マジで一緒に行きてーなって。だめかな?』

「……え」

もう一度、最初から読む。

そして、もう一度。

土曜日。

学校ではなく、市立図書館で。

羽瀬くんと二人で会う。

(羽瀬くん……私と一緒に勉強したいって思ってくれたんだ……)

頬が自然と緩んでいく。

そして、ふと思った。

(……お昼、どうするんだろう)

朝から勉強するなら、途中でお腹も空くはずだ。

(お弁当……作って持っていったら、喜んでくれるかな……)

「……っ!」

そこまで考えて、乃愛は慌ててスマートフォンで顔を隠した。

(わ、私、何考えてるの……っ)

恥ずかしい。

それでも、胸に芽生えた楽しみは消えてくれない。

乃愛は少し迷ってから、返信を打った。

『うん、喜んで。
土曜日、すっごく楽しみにしてるね、羽瀬くん』

送信ボタンを押した。

*―*―*

その頃、琉生は自室のベッドでスマートフォンを握りしめていた。

乃愛から届いた、

『私でよければ、いつでも教えますからね?』

その一文を見てから、何度文章を書いては消したか分からない。

勉強を教えてもらうだけなら、学校でもできる。

本当は――学校の外で、白石さんと会いたかった。

だから最後には、隠しきれなかった本音まで送ってしまった。

『マジで一緒に行きてーなって。だめかな?』

「……直球すぎたか?」

送ったあとになって不安になり、琉生はベッドへ仰向けに倒れ込む。

その瞬間、通知音が鳴った。

勢いよくスマートフォンを持ち上げる。

『うん、喜んで。
土曜日、すっごく楽しみにしてるね、羽瀬くん』

「…………」

琉生は数秒その文字を見つめたあと、小さく拳を握った。

「……っしゃ」

自分だけじゃなかった。

白石さんも、土曜日を楽しみにしてくれている。

そう分かっただけで、さっきまでの不安が一気に吹き飛んだ。

学校ではない場所で、二人きり。

今度の土曜日が、急に待ち遠しくなった――。