月華は陽だまりに花ひらく

恋なんて、愛なんて、大嫌いだ。

そんな薄っぺらいものにすべてを懸けて、人生を狂わせる人間が嫌いだ。

――そして、私たちを置いて逝った両親が、何より嫌いだ。

父と母は、恋愛結婚だった。

王都一の美女と謳われた母に、王太子は惚れてしまった。

けれど母は、その求婚を退けたのだ。

そして選んだのは、貧しい男爵家の息子だった父。

二人は手を取り合って王都を逃げ出し、駆け落ちした。

その代償は、あまりにも大きかった。

母の実家であるイヴェルナ公爵家は王家の怒りを買い、辺境へと実質的な追放を受けた。

もし、あのとき。

母が王太子の求婚を受け入れていたら。

父と母が、愛なんてものを選ばずに、家のために生きていたら。

私たちは、負債に追われることもなかった。

両親が心労に蝕まれ、早くにこの世を去ることもなかった。

そして――。

幼い私たちを残して、親戚たちが手のひらを返すこともなかった。

愛が、私たちのすべてを一瞬にして壊し去った。

残ったのは莫大な借金と、冷たい不毛の地。

だから私は、愛なんて信じない。

恋なんて、必要ない。

誰かを想うことなど、愚かなこと。

そう思って生きてきた。

きっと、これからもそうだ。

いつしか、感情を表に出すことのできない私を人々はこう呼ぶようになった。
――『月夜の令嬢』、と