「お邪魔します」
「どうぞー」
その夜、約束通り京弥は俺の部屋を訪ねてきた。
一軍の部屋着を引っ張りだして着た俺は、幼馴染としての顔を貼り付けて京弥を出迎える。
「俺の部屋に来るの、何年ぶり?」
「わかんない。最後に来たの……あれだ、シュウ達とたこパしたとき」
「うわーなつい。中二とか? 楽しかったなぁ、あれ」
ヘラヘラと笑っているがその実、俺は口から心臓が飛び出そうだった。意識しないように細心の注意を払いながら、わざと大きな声を出して笑ってみせる。
着ているのはただのジャージのはずなのに、やたらと色気を纏っている京弥が悪い。
気を抜けばぎくしゃくとした歩き方になってしまいそうだ。京弥は俺の部屋に足を踏み入れるなり、ぐるりと部屋の中を見渡した。
「倉の部屋、全然変わってないね」
「えー結構変わったけどなぁ。ほら、テレビとか一回りでっかくなった」
「いやわかんないって」
「ちなみにもう一個変わってるから当ててみ?」
「えー……なんだろ」
部屋をゆっくりと巡回していた京弥は、俺の勉強机の前で足を止めた。
「あ、写真?」
「せいかーい。よくわかったな」
「卒業式のやつ? あはは、なんかこの倉、今よりだいぶ幼いね」
「当たり前じゃん。二年も前だよ」
京弥の視線の先には、机のそばの壁に掛けられたコルクボードがある。
そこには中学時代の俺と友達の写真がいくつか飾ってあった。
……って言っても、ほとんど京弥とニコイチみたいな感じだったから、九割ぐらい京弥との写真しかないんだけど。
そういえば、俺が京弥を好きって最初に自覚したの、中学のときだったな。
「このときさ、ヒロに布団取られて、倉と俺、一緒に寝たよね」
そんな風に考えていたら、京弥が俺の思考を読んだみたいに一枚の写真を指差したので、驚いてしまった。
「寝た寝た。見回りの先生来たから、慌てて隠れたんだっけ」
「そうそう。俺のベッドに倉を引きずり込んで、毛布被ってさ。先生いなくなるまで息を殺してたら、倉そのまま寝ちゃったよね?」
「あー……うん、即寝だったわ。いやぁ、あんときは眠すぎて耐えらんなかったなぁ~」
俺は大袈裟に笑ってみせた。本当のことを言えば、あれは寝たふりなんだけど。
あの夜俺が一睡もできなかったって知ったら、京弥はどう思うだろう。
中三の修学旅行の話だ。京弥と同じ布団に潜り込んで、一枚の毛布の中で隙間なく寄り添って、京弥の息遣いや鼓動の音を至近距離で感じた。幼馴染で同性で、一番の親友である京弥に対して、尋常じゃないぐらいどきどきして、息が苦しくてしょうがなかった。
対して京弥の心臓の音はいつも通りで、ああ緊張しているのは俺だけか、なんてわかってしまって、どうしようもなく悲しくなったんだ。
恋を自覚するのがときめきじゃなくて胸の痛みなんだっていうことを、俺はあの日初めて思い知った。
「あ、俺、この写真お気に入り。文化祭で顔にペイント塗ったやつ──」
写真を指差して隣の京弥に顔を向けた俺は、はっとして言葉を吞み込んだ。想像以上に近い距離に京弥の顔があったからだ。
口を閉ざして顔を背けようとした俺の頬に、京弥の手が伸びてくる。両手で頬を挟まれて、顔を京弥の方に向けるように固定されてしまった。
「なんでそっち向くの」
「……っ」
無理やり目を合わせられて、まずいと思った。多分、動揺していることに気づかれている。
京弥の顔はいつもよりも男らしいような気がして、目のやり場に困ってしまう。
「そういう冗談、タチ悪いから」
俺は素っ気なく京弥に言い放って、せめてもの抵抗で視線を外してやった。
「いいじゃん。前はこれぐらい普通にしてただろ」
「そうだけど……」
言い淀む俺を少しの間眺めた後、京弥は何も言わずに俺の顔から手を離した。
ようやく息が吸いやすくなって、ほっと胸を撫で下ろす。
「無音だと寂しいね。映画でも観る? 俺のアカウント貸してあげるよ」
「っ、じゃあそうしよ。借りていい?」
「うん」
京弥から提案されて、やっと俺はいつもの調子を取り戻すことができた。
俺達はベッドの上に、壁にもたれて並んで座った。テレビの画面に、一緒に選んだ映画を映し出す。
昔もよくこんな風に、二人でのんびり部屋で過ごしたなぁ……。それがなくなったのは、高校に入って京弥が途切れることなく彼女を作り始めてからだ。
「なーんか眠くなるなぁ、この映画。さっきから同じやり取りばっかり」
「そりゃ評価低いもん。倉のその、低評価の作品ほど見たがる性格は何なの?」
「怖いもの見たさってやつ? どこがボロクソ書かれてんのか知りたくない?」
「はっ、わっかんねえ」
そう言いつつも、京弥は楽しそうに肩を揺らして笑っている。そんな京弥の横顔を覗き見て、俺も自然と笑みが溢れた。
「……あーなんか、久々に楽しいわ」
「低評価映画の面白さ、わかってきた?」
「そうじゃなくて。倉といるのが楽しいって意味」
当たり前のように返されて、一瞬時が止まった。に困るから、不意打ちでそういうことを言わないでほしい。
京弥の言葉に深い意味がないってことはわかっている。無駄に期待したらダメだ。
「最近ずっと倉とろくに会話できてなかったから、毎日つまんなかった」
「……大袈裟だな。他にも友達いるっしょ。彼女だっているんだし」
「でも倉はやっぱ特別。俺、倉といるのが一番楽しいよ」
視界の端で、京弥がこっちを見ているのがわかる。俺はあえて映画に視線を向け続けた。
今、顔を見たら、絶対舞い上がってしまう。
「倉は?」
黙り込んでいる俺の耳に、京弥の声が滑り込む。
「俺のこと、一番にしてくれないの?」
京弥はずるい。俺のことを本当の意味で一番にする気なんかないくせに、俺には一番を求めてくるんだから。
どこまでも身勝手で、俺の気持ちなんか少しも考えてくれない。
「……俺も、きょーやといんのは楽しいよ。けど、最近はちょっとキツいかも」
前を向いたまま俺が返すと、隣で京弥がわずかに身じろぐ気配がした。
「理由、聞いてもいい?」
「ごめん、言えない」
「そっか。それが避けてた理由?」
「……うん」
おかしいな。京弥に意識してほしくて始めたはずの作戦なのに、進展するどころか、京弥との間に越えられない壁を感じて、むしろダメージを受けている気がする。
幼馴染でいい。親友でいい。
本当はそんなはずない。京弥の「彼女」が羨ましくてたまらない。幼馴染よりも親友よりも、ずっと京弥に近い位置。
俺もそのポジションに置いてもらえたら、この胸の渇きは満たされるのだろうか。
「……っ、うわ⁉︎」
自然と視線が下がっていたらしい俺は、隣から京弥に肩を掴まれて、驚いて顔を上げた。
「ごめん。倉にそう言われても、俺は身を引く気ない」
肩を掴んでいる手が、するすると上にのぼって、俺の頬を撫でる。
目を見開いて見つめる先で、京弥は真剣な眼差しで俺を射抜いていた。
「絶対にまた、俺が一番って言わせてみせるから」
力強い言葉に、大きく鼓動が跳ねる。
京弥の言葉の意味なんかいちいち気にしてたらキリがないっていうのに、こんなのスルーしろなんて言われたって無理だ。
「……っ、なんでそこまでこだわんの。色んな人に一番にしてもらえてるくせに」
苦し紛れに俺が言い返すが、京弥は俺から一切目を離そうとしない。
「それでも倉の一番じゃなきゃ意味ない」
「意味わかんね……めちゃくちゃ言ってる自覚ある?」
「あるよ。でも、もう決めたから」
そうだ。京弥って、物凄く負けず嫌いなんだった。
昔から、テストの点とか五十メートル走のタイム張り合ってきたんだよなぁ。
今こうやってやたらと俺に執着しているのも、きっと俺の意識が突然カイに向いたからだろう。
自分が二番手にされているこの状況が許せなくて、ムキになっているだけだ。
「ねえ、カイともうキスした?」
「っ、……な、なに言ってんの⁉︎」
油断していたところに、突拍子もないことを言われて、思わず噎せてしまった。顔がじわじわ熱くなるのがわかる。
……あ、待って。京弥って今、俺とカイが付き合ってると思ってるんだっけ。
動揺する俺とは対照的に、京弥は真面目な顔をして俺の顔色をまじまじと観察している。
「その反応は、してない?」
「するわけないじゃん……。変なこと聞かないで、リアクションに困るから」
呆れ返りつつ俺が返すと、京弥は急に何も言わなくなった。
不思議に思いながら、俺は再び映画に視線を移す。もう映画の内容なんか一ミリだって頭に入っていなかった。
「──えっ?」
ぼんやりしていると京弥の顔が近づく気配がして、俺は驚いて目を見開いた。漏らした声は、ひどく間抜けなものだったように思う。
目の前が影で覆われる。女の匂いがしない、いつものシャンプーの香りが鼻を掠める。唇に触れた唇は、想像していたよりずっと柔らかかった。
「これで、ここは俺が一番だね」
少し顔を離して、京弥がくすっと微笑んだ。
テレビから流れるわざとらしい言い回しの台詞と、うるさいぐらいの銃撃音には感謝してもしきれない。
あれがなかったら多分、俺は京弥に「好き」をぶちまけて自爆していたと思う。
「どうぞー」
その夜、約束通り京弥は俺の部屋を訪ねてきた。
一軍の部屋着を引っ張りだして着た俺は、幼馴染としての顔を貼り付けて京弥を出迎える。
「俺の部屋に来るの、何年ぶり?」
「わかんない。最後に来たの……あれだ、シュウ達とたこパしたとき」
「うわーなつい。中二とか? 楽しかったなぁ、あれ」
ヘラヘラと笑っているがその実、俺は口から心臓が飛び出そうだった。意識しないように細心の注意を払いながら、わざと大きな声を出して笑ってみせる。
着ているのはただのジャージのはずなのに、やたらと色気を纏っている京弥が悪い。
気を抜けばぎくしゃくとした歩き方になってしまいそうだ。京弥は俺の部屋に足を踏み入れるなり、ぐるりと部屋の中を見渡した。
「倉の部屋、全然変わってないね」
「えー結構変わったけどなぁ。ほら、テレビとか一回りでっかくなった」
「いやわかんないって」
「ちなみにもう一個変わってるから当ててみ?」
「えー……なんだろ」
部屋をゆっくりと巡回していた京弥は、俺の勉強机の前で足を止めた。
「あ、写真?」
「せいかーい。よくわかったな」
「卒業式のやつ? あはは、なんかこの倉、今よりだいぶ幼いね」
「当たり前じゃん。二年も前だよ」
京弥の視線の先には、机のそばの壁に掛けられたコルクボードがある。
そこには中学時代の俺と友達の写真がいくつか飾ってあった。
……って言っても、ほとんど京弥とニコイチみたいな感じだったから、九割ぐらい京弥との写真しかないんだけど。
そういえば、俺が京弥を好きって最初に自覚したの、中学のときだったな。
「このときさ、ヒロに布団取られて、倉と俺、一緒に寝たよね」
そんな風に考えていたら、京弥が俺の思考を読んだみたいに一枚の写真を指差したので、驚いてしまった。
「寝た寝た。見回りの先生来たから、慌てて隠れたんだっけ」
「そうそう。俺のベッドに倉を引きずり込んで、毛布被ってさ。先生いなくなるまで息を殺してたら、倉そのまま寝ちゃったよね?」
「あー……うん、即寝だったわ。いやぁ、あんときは眠すぎて耐えらんなかったなぁ~」
俺は大袈裟に笑ってみせた。本当のことを言えば、あれは寝たふりなんだけど。
あの夜俺が一睡もできなかったって知ったら、京弥はどう思うだろう。
中三の修学旅行の話だ。京弥と同じ布団に潜り込んで、一枚の毛布の中で隙間なく寄り添って、京弥の息遣いや鼓動の音を至近距離で感じた。幼馴染で同性で、一番の親友である京弥に対して、尋常じゃないぐらいどきどきして、息が苦しくてしょうがなかった。
対して京弥の心臓の音はいつも通りで、ああ緊張しているのは俺だけか、なんてわかってしまって、どうしようもなく悲しくなったんだ。
恋を自覚するのがときめきじゃなくて胸の痛みなんだっていうことを、俺はあの日初めて思い知った。
「あ、俺、この写真お気に入り。文化祭で顔にペイント塗ったやつ──」
写真を指差して隣の京弥に顔を向けた俺は、はっとして言葉を吞み込んだ。想像以上に近い距離に京弥の顔があったからだ。
口を閉ざして顔を背けようとした俺の頬に、京弥の手が伸びてくる。両手で頬を挟まれて、顔を京弥の方に向けるように固定されてしまった。
「なんでそっち向くの」
「……っ」
無理やり目を合わせられて、まずいと思った。多分、動揺していることに気づかれている。
京弥の顔はいつもよりも男らしいような気がして、目のやり場に困ってしまう。
「そういう冗談、タチ悪いから」
俺は素っ気なく京弥に言い放って、せめてもの抵抗で視線を外してやった。
「いいじゃん。前はこれぐらい普通にしてただろ」
「そうだけど……」
言い淀む俺を少しの間眺めた後、京弥は何も言わずに俺の顔から手を離した。
ようやく息が吸いやすくなって、ほっと胸を撫で下ろす。
「無音だと寂しいね。映画でも観る? 俺のアカウント貸してあげるよ」
「っ、じゃあそうしよ。借りていい?」
「うん」
京弥から提案されて、やっと俺はいつもの調子を取り戻すことができた。
俺達はベッドの上に、壁にもたれて並んで座った。テレビの画面に、一緒に選んだ映画を映し出す。
昔もよくこんな風に、二人でのんびり部屋で過ごしたなぁ……。それがなくなったのは、高校に入って京弥が途切れることなく彼女を作り始めてからだ。
「なーんか眠くなるなぁ、この映画。さっきから同じやり取りばっかり」
「そりゃ評価低いもん。倉のその、低評価の作品ほど見たがる性格は何なの?」
「怖いもの見たさってやつ? どこがボロクソ書かれてんのか知りたくない?」
「はっ、わっかんねえ」
そう言いつつも、京弥は楽しそうに肩を揺らして笑っている。そんな京弥の横顔を覗き見て、俺も自然と笑みが溢れた。
「……あーなんか、久々に楽しいわ」
「低評価映画の面白さ、わかってきた?」
「そうじゃなくて。倉といるのが楽しいって意味」
当たり前のように返されて、一瞬時が止まった。に困るから、不意打ちでそういうことを言わないでほしい。
京弥の言葉に深い意味がないってことはわかっている。無駄に期待したらダメだ。
「最近ずっと倉とろくに会話できてなかったから、毎日つまんなかった」
「……大袈裟だな。他にも友達いるっしょ。彼女だっているんだし」
「でも倉はやっぱ特別。俺、倉といるのが一番楽しいよ」
視界の端で、京弥がこっちを見ているのがわかる。俺はあえて映画に視線を向け続けた。
今、顔を見たら、絶対舞い上がってしまう。
「倉は?」
黙り込んでいる俺の耳に、京弥の声が滑り込む。
「俺のこと、一番にしてくれないの?」
京弥はずるい。俺のことを本当の意味で一番にする気なんかないくせに、俺には一番を求めてくるんだから。
どこまでも身勝手で、俺の気持ちなんか少しも考えてくれない。
「……俺も、きょーやといんのは楽しいよ。けど、最近はちょっとキツいかも」
前を向いたまま俺が返すと、隣で京弥がわずかに身じろぐ気配がした。
「理由、聞いてもいい?」
「ごめん、言えない」
「そっか。それが避けてた理由?」
「……うん」
おかしいな。京弥に意識してほしくて始めたはずの作戦なのに、進展するどころか、京弥との間に越えられない壁を感じて、むしろダメージを受けている気がする。
幼馴染でいい。親友でいい。
本当はそんなはずない。京弥の「彼女」が羨ましくてたまらない。幼馴染よりも親友よりも、ずっと京弥に近い位置。
俺もそのポジションに置いてもらえたら、この胸の渇きは満たされるのだろうか。
「……っ、うわ⁉︎」
自然と視線が下がっていたらしい俺は、隣から京弥に肩を掴まれて、驚いて顔を上げた。
「ごめん。倉にそう言われても、俺は身を引く気ない」
肩を掴んでいる手が、するすると上にのぼって、俺の頬を撫でる。
目を見開いて見つめる先で、京弥は真剣な眼差しで俺を射抜いていた。
「絶対にまた、俺が一番って言わせてみせるから」
力強い言葉に、大きく鼓動が跳ねる。
京弥の言葉の意味なんかいちいち気にしてたらキリがないっていうのに、こんなのスルーしろなんて言われたって無理だ。
「……っ、なんでそこまでこだわんの。色んな人に一番にしてもらえてるくせに」
苦し紛れに俺が言い返すが、京弥は俺から一切目を離そうとしない。
「それでも倉の一番じゃなきゃ意味ない」
「意味わかんね……めちゃくちゃ言ってる自覚ある?」
「あるよ。でも、もう決めたから」
そうだ。京弥って、物凄く負けず嫌いなんだった。
昔から、テストの点とか五十メートル走のタイム張り合ってきたんだよなぁ。
今こうやってやたらと俺に執着しているのも、きっと俺の意識が突然カイに向いたからだろう。
自分が二番手にされているこの状況が許せなくて、ムキになっているだけだ。
「ねえ、カイともうキスした?」
「っ、……な、なに言ってんの⁉︎」
油断していたところに、突拍子もないことを言われて、思わず噎せてしまった。顔がじわじわ熱くなるのがわかる。
……あ、待って。京弥って今、俺とカイが付き合ってると思ってるんだっけ。
動揺する俺とは対照的に、京弥は真面目な顔をして俺の顔色をまじまじと観察している。
「その反応は、してない?」
「するわけないじゃん……。変なこと聞かないで、リアクションに困るから」
呆れ返りつつ俺が返すと、京弥は急に何も言わなくなった。
不思議に思いながら、俺は再び映画に視線を移す。もう映画の内容なんか一ミリだって頭に入っていなかった。
「──えっ?」
ぼんやりしていると京弥の顔が近づく気配がして、俺は驚いて目を見開いた。漏らした声は、ひどく間抜けなものだったように思う。
目の前が影で覆われる。女の匂いがしない、いつものシャンプーの香りが鼻を掠める。唇に触れた唇は、想像していたよりずっと柔らかかった。
「これで、ここは俺が一番だね」
少し顔を離して、京弥がくすっと微笑んだ。
テレビから流れるわざとらしい言い回しの台詞と、うるさいぐらいの銃撃音には感謝してもしきれない。
あれがなかったら多分、俺は京弥に「好き」をぶちまけて自爆していたと思う。


