奏は笹尾に数学を教えてもらい始めて、笹尾との勉強会がない日も自主的に勉強していた。少し数学が分かり始めたのと、せっかく教えてもらっているのに、笹尾にガッカリされるのが嫌だったし、何より少しでも笹尾に褒めてもらいたいと思った。
「笹尾、先生になれば?」
「なに、急に?」
その日も放課後の勉強会が行われ、二人は向かい合っていた。
「笹尾の説明って凄く分かり易い。教え方、上手だなって」
「そう?」
「だって、こんなバカな俺でも理解できるようになったし」
「奏は家でも勉強してるだろ?」
初めて笹尾に名前を呼ばれ、ドキリとした。
(な、名前!下の名前で呼ばれた……)
「じゃなきゃ、放課後の勉強だけでここまでできないよ」
そのことが嬉しいのか、口角が上がっている。
普段表情がない分、たまに見せる笑顔の破壊力は凄いと奏は思う。一瞬にして、奏の心臓が大きく鳴り出す。
「う、うん。だって、笹尾にガッカリされたくないし……」
気恥ずかしくなり視線を下に向けると、目の前に笹尾のシャツが目に入る。第二ボタンが取れかかっているのに気づいた。
「ボタン……取れかかってるよ」
奏の言葉に笹尾は自分のシャツに視線を落とし、
「気づかなかった」
「着けてあげるよ」
奏はスクールバックから小さな裁縫セットを笹尾に見せた。
「女子力高くない?」
クスリと笹尾が笑った。
奏は隣の席に移動すると、笹尾のシャツを掴み、
「じっとしてて」
向き合った体勢で、取れかけたボタンに触れた。
(なんだろ……笹尾見てるとなんか違和感?なんか……変な感覚になる)
笹尾を見ているとたまに頭の隅で何か、モヤッとした感覚に陥る。そう思うも、それが何であるかは奏には分からなかった。
思いのほか笹尾との近い距離に奏は緊張し、針を持つ手が少し震えた。それを笹尾にバレないように、手際良くボタンを縫いつける。
「俺、お裁縫好きなんだ」
「へぇー」
「弟の服作ったり、弟が小さい時はフェルトとかでおもちゃ作ってあげたりしてた。男がお裁縫なんて、それこそ酒井と林のネタにされちゃうから言えないけど」
「器用なんだな」
「できたよ」
すぐそばにある笹尾の顔を見上げ、奏は満足そうに笑みを浮かべると一瞬、笹尾は呆けたように自分を見つめてきた。
そして──、
笹尾の顔が近付いてきたと思うと、そのまま触れるだけのキスをされた。
「!?」
奏は驚きで体が固まり、
「な、なに……!?な、なんで!?」
見開いた目を笹尾に向けた。笹尾は口元に手を当て耳が赤くなっているところを見ると、笹尾自身も動揺しているようだった。
「ごめん、なんかしたくなった」
奏の顔は火が点いたように熱い。
「帰ろうか」
笹尾は教室の時計を見ると、奏の返事を待たずに机の上を片付け始めた。互いに無言で片付けをし、無言のまま教室を出た。
喧騒に包まれた校内なのに、生徒の声は聞こえなかった。まるで笹尾といるこの空間だけが切り取られてしまったように感じ、校内に二人だけが取り残されたような気持ちになる。
昇降口で自分を待っている笹尾の横に並んだ。それは無意識だった。いつもそうやって笹尾は自分を待っていてくれる。先程のキスを思い出し笹尾の隣に並んだ途端、当然のように笹尾の隣に並んだ自分が恥ずかしくなってくる。その日、逆方向だというのに笹尾は奏を家まで送ってくれ、別れ際にもう一度キスをされた。
嫌だとは思わない。むしろ嬉しくて、でも少し恥ずかしいとも思う。
笹尾とのキスを思い出すとお腹の辺りがきゅうっと締めつけられる感覚になる。それと連動するように下半身に熱が集まり始めその日、奏は笹尾とのキスを思い出し自慰をしてしまった。
その行動で、笹尾に対する自分の答えは出ている気がした。
「笹尾、先生になれば?」
「なに、急に?」
その日も放課後の勉強会が行われ、二人は向かい合っていた。
「笹尾の説明って凄く分かり易い。教え方、上手だなって」
「そう?」
「だって、こんなバカな俺でも理解できるようになったし」
「奏は家でも勉強してるだろ?」
初めて笹尾に名前を呼ばれ、ドキリとした。
(な、名前!下の名前で呼ばれた……)
「じゃなきゃ、放課後の勉強だけでここまでできないよ」
そのことが嬉しいのか、口角が上がっている。
普段表情がない分、たまに見せる笑顔の破壊力は凄いと奏は思う。一瞬にして、奏の心臓が大きく鳴り出す。
「う、うん。だって、笹尾にガッカリされたくないし……」
気恥ずかしくなり視線を下に向けると、目の前に笹尾のシャツが目に入る。第二ボタンが取れかかっているのに気づいた。
「ボタン……取れかかってるよ」
奏の言葉に笹尾は自分のシャツに視線を落とし、
「気づかなかった」
「着けてあげるよ」
奏はスクールバックから小さな裁縫セットを笹尾に見せた。
「女子力高くない?」
クスリと笹尾が笑った。
奏は隣の席に移動すると、笹尾のシャツを掴み、
「じっとしてて」
向き合った体勢で、取れかけたボタンに触れた。
(なんだろ……笹尾見てるとなんか違和感?なんか……変な感覚になる)
笹尾を見ているとたまに頭の隅で何か、モヤッとした感覚に陥る。そう思うも、それが何であるかは奏には分からなかった。
思いのほか笹尾との近い距離に奏は緊張し、針を持つ手が少し震えた。それを笹尾にバレないように、手際良くボタンを縫いつける。
「俺、お裁縫好きなんだ」
「へぇー」
「弟の服作ったり、弟が小さい時はフェルトとかでおもちゃ作ってあげたりしてた。男がお裁縫なんて、それこそ酒井と林のネタにされちゃうから言えないけど」
「器用なんだな」
「できたよ」
すぐそばにある笹尾の顔を見上げ、奏は満足そうに笑みを浮かべると一瞬、笹尾は呆けたように自分を見つめてきた。
そして──、
笹尾の顔が近付いてきたと思うと、そのまま触れるだけのキスをされた。
「!?」
奏は驚きで体が固まり、
「な、なに……!?な、なんで!?」
見開いた目を笹尾に向けた。笹尾は口元に手を当て耳が赤くなっているところを見ると、笹尾自身も動揺しているようだった。
「ごめん、なんかしたくなった」
奏の顔は火が点いたように熱い。
「帰ろうか」
笹尾は教室の時計を見ると、奏の返事を待たずに机の上を片付け始めた。互いに無言で片付けをし、無言のまま教室を出た。
喧騒に包まれた校内なのに、生徒の声は聞こえなかった。まるで笹尾といるこの空間だけが切り取られてしまったように感じ、校内に二人だけが取り残されたような気持ちになる。
昇降口で自分を待っている笹尾の横に並んだ。それは無意識だった。いつもそうやって笹尾は自分を待っていてくれる。先程のキスを思い出し笹尾の隣に並んだ途端、当然のように笹尾の隣に並んだ自分が恥ずかしくなってくる。その日、逆方向だというのに笹尾は奏を家まで送ってくれ、別れ際にもう一度キスをされた。
嫌だとは思わない。むしろ嬉しくて、でも少し恥ずかしいとも思う。
笹尾とのキスを思い出すとお腹の辺りがきゅうっと締めつけられる感覚になる。それと連動するように下半身に熱が集まり始めその日、奏は笹尾とのキスを思い出し自慰をしてしまった。
その行動で、笹尾に対する自分の答えは出ている気がした。

