学園一の女に一目惚れされて

 望美と話し合ってから数日、望美様が学校に来なくなった。

 望美様ファンクラブの面々が私に「何か知らないの?」と話しかけてくることも増えた。

 だが、本当に知らないので「知らない」と答え続けていた。







 昼休みに私は、望美にメールを送る。

 《大丈夫?どうかした?》

 《大丈夫ですわ、妹が熱を出しましてその看病をしていますの》

 《そうだったんだ、もし何か要るものとかあったら言ってね?買って来るから》

 《ありがとう( *´꒳`* )》








 放課後、お見舞いにでも行こうかと望美に提案したのだが、「妹は人見知りなので来ないで欲しい」と返ってきた。

 心愛も今日は委員会会議があるらしく、「先に帰ってて」と言われてしまっている。

 私はそれに従って、今日は大人しく帰ることにした。

 学校を出て歩き始めると、夕日が辺りを染める。

 私はスマホを取り出して、イヤホンを挿すと音楽アプリを開いてお気に入りの音楽を再生した。

 辺りの喧騒も静かになり、頭の中を音楽が支配する。

 ぼんやりと電車に乗って車窓を眺めようかとも思ったが、目線のやり場に困りゲームをすることにした。








 次の日も望美は休んでいた。

 私は今日もお見舞いに行こうかと提案してみた。

 すると……

 《お願いします、飲み物が丁度無くなってしまったの》

 《分かった、放課後に行くね》

 久しぶりに望美に会えると、心が弾んでしまいそうになるのを必死に堪えてあくまでも平常運転を心がけた。








 放課後、私はスーパーに寄って定番の飲み物を買ってから指定された住所まで来ていた。

「お待ちしておりましたわ、さぁさぁ入って入って」

「お邪魔します」

 初めての望美の自宅は予想通り白が基調のとても綺麗な所だった。

「飲み物ありがとう、結芽」

「このくらい全然大丈夫だよ。それより、妹さん大丈夫なの?」

「それはもう完全に治りましたわ。念の為にあと2日程休ませますが……」

「そっか、良かったー……」

「ありがとう、心配してくれて」

「当たり前でしょ、大好きな友達の妹さんなんだから」

 そんな会話をしていると、通路に面している扉から人が覗いて居るのが見えた。

「妹さん?はじめまして、南雲 結芽です。お姉さんのお友達です」

 私が声をかけると、扉がゆっくりと開きやがて小さな声が聞こえてきた。

「はじめまして……山丸 美月です。よろしくお願いします」

「よろしくね」

 私がそう言うと、美月は一礼してから扉を高速で閉めた。

 長居するのも迷惑だろうと、そろそろ帰ると望美に伝えると望美は了承して笑顔で手を振って私を見送った。








 2日後、宣言通りに望美がやって来ると、クラスは大いに賑わう。

「おはようございます!望美様っ!」

 ファンクラブの面々も涙を流しながら喜んでいた。

 望美が私の隣に座って、小さく手を振ってくれた。

 私も小さく手を振り返す。

 すると、望美は微笑み返してスマホをいじり出した。

 そして、私のスマホが望美からのメールを通知する。

 《お見舞い、ありがとうございました。美月も今日から学校に行きましたわ》

 《良かったよ、無事に治って》

 《えぇ》

 会話が出来ない分、メールでやり取りをする。

 隣に座って居るのに、遠い存在みたいだ。

 そんなことを思っていると、中城様がやって来た。

「望美!来てたんだ?」

「うん、今日から」

「そうなんだ、美月ちゃんはもう大丈夫なの?」

「えぇ、もう平気ですわ」

 どうやら、中城様も美月のことを知っているらしい。

「なら、良かったー。今日愛に行こうかなー?」

「美月を思うなら、今日は辞めておいて」

「はいはい、繊細だもんね。分かってますよ」

 ふたりの会話をぼんやりと聞き耳を立ていると、私の名前が出てきた。

「そうそう!2日前に結芽もお見舞いに来ましてね?美月が挨拶をしましたの!大きな成長よね♪」

「そうだねー、良かったねー」

 中城様の適当な返しで会話は終わり、中城様は自分のクラスに戻って行った。

 私は心弾んだ様子の望美を見て、いつもは冷静で大人びた印象だったのにまた新たな一面を発見したことに成長を感じるのだった。