「やっぱり……ちゃんと見つけてくれたんだ……」
図書室の蛍光灯の光に照らされて、散々女子たちの称賛を浴びていた整った顔をほころばせて笑うのは……。
言わずもがな、沢渡先生だった。
自分でも軽率だとは思う。
何せ相手は教育実習生とはいえ、仮にも先生だ。
個人的な感情をやり取りしてる場合じゃない。
だけどどうしても気になってしまったのも確かで。
そう。
幽霊になったユーレイさんは記憶を失っていた。
自分がここの生徒で三年生であることは覚えていても、他は何一つ覚えていなかった。
なんで七不思議に執着していたかってことさえ。
そしたら今は?
何がどうなって生き返ったのかはわからないけど、今は生身の人間になってるわけだ。
だったら、幽霊になった時みたいに今度は幽霊の時の記憶を覚えてないんじゃないかって……。
そう……思ったのだ。
まぁ、だから何だって話なんだけど。
確かに僕はユーレイさんにあまり公にできない気持ちを抱いていた。
それは確か。
彼が消えてしまった時は、失恋とかそう言った感情で喪失感がヤバかったのも確か。
結果、受験勉強が散々だったのも確か。
だけどそれは僕の事情。
彼にとっては……。
沢渡雄志という、僕より三つ年上のこの人は……どう思ってるんだろう。
自分が幽霊だったことを覚えているんだろうか?
僕と過ごしたあの時間を覚えてくれているんだろうか?
それならそれでよかった。
僕はユーレイさんに気持ちを伝えてなかった。
伝える前に消えてしまった。
今となってはそれでよかったと思える。
僕の気持ちを何一つ知らないまま消えてしまったユーレイさん。
今となってはそれでよかったんだ。
そんなことを考えながらたどり着いた先は図書室だった。
手紙は読み終わってから見つけた場所に戻しておいた。
だからぱっと見は誰かが見つけたとは思わないだろう。
……ちょっと二通目をくしゃくしゃにしちゃったけども……。
だけど……。
僕が見つけたとは思わないんじゃないだろうか。
幽霊だった時の記憶がないならなおさら。
それを確かめに隠し場所のある本棚へと近づいて、見つけたのは……。
本の間から二通の手紙を取り出す沢渡先生の姿だった。
「君なら……絶対見つけてくれると思ってたんだぁ。ね? ほくちゃん」
「あ……」
僕の希望的観測は、あっという間に崩れていった。
どうやら沢渡先生にはユーレイさんだった時の記憶がばっちりしっかり残ってるらしい。
いや待て。
まだ慌てる時間じゃない。
どっかで見たネットミームが頭の中を駆け巡る。
だって別に、僕はユーレイさんに気持ちを伝えた訳じゃないんだから。
それに……。
沢渡先生が図書館で会ったという中三の少年が僕だということにもきっと気付いていない……はずだ。
だから……だいじょうぶ……。
「ひぇぇぇぇ?!」
「……ほくちゃん、図書室ではしぃーだよ?」
いやわかってる。それはわかってる。
わかってるから……。
耳元で囁くなっ!
「だ、だ、だ、だ、だったら離してください」
頬にあたるスーツの感触に驚きを隠せない。
背中に回された腕の熱さも、僕の後頭部に触れる吐息も。抱きしめられてるって現実を否が応でも突き付けてくる。
どうしてこんなことに?! って叫びたいのに、ここが図書室だって事実だけで口封じされてしまう。
「……あー、ほくちゃんに触れる……」
まるでお風呂にでも入ってるかのような声をあげるのは、何故か僕を抱き締めてる沢渡先生だ。
「さ、沢渡先生! 誰かに見られたら……っ!」
「うーん、もうちょっとほくちゃんを堪能したいー」
「そうは言っても……っ!」
なんとか逃れようとしても、体格差もあってか離れることはできない。
いや、それは言い訳だ。
だって僕自身、本気で離して欲しいなんて思ってないんだから。
引き離すふりをして沢渡先生のスーツの背中に触れる。
さわりとした生地の下には、確かに肉体の感触が、熱があった。
それが、泣きたくなるほど嬉しい。
「ほくちゃん……。手紙を見つけてくれて……俺を満たしてくれてありがとう……」
「ひぇ?!」
耳を擽る低い声に、ドクドクと心臓が跳ねる。
そのままふわりと耳朶に触れたのは……。
「ひぇぇぇぇ」
沢渡先生の唇だった。
沢渡先生が触れた場所に血流が集中する。
ジンジンとした甘い痺れが、全身へと広がってくような錯覚を覚えて……。
「……きゅう……」
「わぁ! ほくちゃん!」
情けなくも僕は、気絶した。
だってしょうがないだろう! こういったことに免疫なんて欠片もなかったんだからっ!
図書室の蛍光灯の光に照らされて、散々女子たちの称賛を浴びていた整った顔をほころばせて笑うのは……。
言わずもがな、沢渡先生だった。
自分でも軽率だとは思う。
何せ相手は教育実習生とはいえ、仮にも先生だ。
個人的な感情をやり取りしてる場合じゃない。
だけどどうしても気になってしまったのも確かで。
そう。
幽霊になったユーレイさんは記憶を失っていた。
自分がここの生徒で三年生であることは覚えていても、他は何一つ覚えていなかった。
なんで七不思議に執着していたかってことさえ。
そしたら今は?
何がどうなって生き返ったのかはわからないけど、今は生身の人間になってるわけだ。
だったら、幽霊になった時みたいに今度は幽霊の時の記憶を覚えてないんじゃないかって……。
そう……思ったのだ。
まぁ、だから何だって話なんだけど。
確かに僕はユーレイさんにあまり公にできない気持ちを抱いていた。
それは確か。
彼が消えてしまった時は、失恋とかそう言った感情で喪失感がヤバかったのも確か。
結果、受験勉強が散々だったのも確か。
だけどそれは僕の事情。
彼にとっては……。
沢渡雄志という、僕より三つ年上のこの人は……どう思ってるんだろう。
自分が幽霊だったことを覚えているんだろうか?
僕と過ごしたあの時間を覚えてくれているんだろうか?
それならそれでよかった。
僕はユーレイさんに気持ちを伝えてなかった。
伝える前に消えてしまった。
今となってはそれでよかったと思える。
僕の気持ちを何一つ知らないまま消えてしまったユーレイさん。
今となってはそれでよかったんだ。
そんなことを考えながらたどり着いた先は図書室だった。
手紙は読み終わってから見つけた場所に戻しておいた。
だからぱっと見は誰かが見つけたとは思わないだろう。
……ちょっと二通目をくしゃくしゃにしちゃったけども……。
だけど……。
僕が見つけたとは思わないんじゃないだろうか。
幽霊だった時の記憶がないならなおさら。
それを確かめに隠し場所のある本棚へと近づいて、見つけたのは……。
本の間から二通の手紙を取り出す沢渡先生の姿だった。
「君なら……絶対見つけてくれると思ってたんだぁ。ね? ほくちゃん」
「あ……」
僕の希望的観測は、あっという間に崩れていった。
どうやら沢渡先生にはユーレイさんだった時の記憶がばっちりしっかり残ってるらしい。
いや待て。
まだ慌てる時間じゃない。
どっかで見たネットミームが頭の中を駆け巡る。
だって別に、僕はユーレイさんに気持ちを伝えた訳じゃないんだから。
それに……。
沢渡先生が図書館で会ったという中三の少年が僕だということにもきっと気付いていない……はずだ。
だから……だいじょうぶ……。
「ひぇぇぇぇ?!」
「……ほくちゃん、図書室ではしぃーだよ?」
いやわかってる。それはわかってる。
わかってるから……。
耳元で囁くなっ!
「だ、だ、だ、だ、だったら離してください」
頬にあたるスーツの感触に驚きを隠せない。
背中に回された腕の熱さも、僕の後頭部に触れる吐息も。抱きしめられてるって現実を否が応でも突き付けてくる。
どうしてこんなことに?! って叫びたいのに、ここが図書室だって事実だけで口封じされてしまう。
「……あー、ほくちゃんに触れる……」
まるでお風呂にでも入ってるかのような声をあげるのは、何故か僕を抱き締めてる沢渡先生だ。
「さ、沢渡先生! 誰かに見られたら……っ!」
「うーん、もうちょっとほくちゃんを堪能したいー」
「そうは言っても……っ!」
なんとか逃れようとしても、体格差もあってか離れることはできない。
いや、それは言い訳だ。
だって僕自身、本気で離して欲しいなんて思ってないんだから。
引き離すふりをして沢渡先生のスーツの背中に触れる。
さわりとした生地の下には、確かに肉体の感触が、熱があった。
それが、泣きたくなるほど嬉しい。
「ほくちゃん……。手紙を見つけてくれて……俺を満たしてくれてありがとう……」
「ひぇ?!」
耳を擽る低い声に、ドクドクと心臓が跳ねる。
そのままふわりと耳朶に触れたのは……。
「ひぇぇぇぇ」
沢渡先生の唇だった。
沢渡先生が触れた場所に血流が集中する。
ジンジンとした甘い痺れが、全身へと広がってくような錯覚を覚えて……。
「……きゅう……」
「わぁ! ほくちゃん!」
情けなくも僕は、気絶した。
だってしょうがないだろう! こういったことに免疫なんて欠片もなかったんだからっ!



