夏が終わったら逢いにきて 〜初めて恋した相手は幽霊でした〜

「沢渡(さわたり)雄志(ゆうし)です。ちょっと中途半端な時期ですが、今日から一ヶ月ほど教育実習生としてお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。あぁ、自分もこの学校の卒業生で、保坂先生に担任してもらったこともあるので、保坂先生に困ったらいつでも言ってください」

 何言ってんだお前? っていう保坂先生のツッコミに、クラス中が沸き上がる。……僕以外の。
 うん、掴みはおっけーってやつですね。わかります。最初のインプレッションは大事ですもんね。

 驚愕する僕を後目に、呑気なクラスメイトたちの質問が飛び交う。あのよくあるヤツ。彼女はいるんですかー? とか好きなタイプは何ですかー? とかだ。
 というか、そんな質問してコンプラ的に大丈夫なんだろうか……。

 現実逃避を繰り広げる僕の視線は、教室前の黒板に釘付けになっていた。
 そこには沢渡先生が自己紹介中に、保坂先生が手早く板書した沢渡先生のフルネームが書いてあって……。

「……ゆうじじゃなくて、ゆうしって読むのか……」

 とてもどうでもいいことが、僕の口をついた。

「お! 目ざといね! そう、雄志って書いてゆうしって読みます。よろしくね。島(・)原(・)くん」

 どんな地獄耳だよって悪態を胸に頬を引きつらせながら、島原と呼ばれたことに違和感を持ってしまう自分に呆れる。

 それにしても……。
 事故に遭った人とあの手紙の差出人とユーレイさんが全部同一人物なんて……聞いてないんですが?!

 本当にこれに尽きる。
 というか、幽霊になって記憶を失ってるのに七不思議に執着してた理由が、今分かった。
 ユーレイさんが執着してたのは七不思議じゃなくて……。

 僕は深々とため息を吐きながら、そっと窓の外に視線を向けたのだった。
 そんな僕をじっと見つめる沢渡先生の視線に気付かないふりをして。