「さて……と……」
葛西君のお姉さんから情報を貰った僕は、翌日その手紙が挟まった本があるであろう本棚の前に立っていた。
分厚い本が並んでいるとはいえ、教育ジャンルは目の前の棚の端から端までだ。
以前までの図書室の本全部見るチャレンジよりはだいぶ絞られたと言える。
「……よしっ!」
僕は気合いを入れて、本棚の本に手を伸ばした。
「……あった……」
本棚の三分の二を確認し終えた頃だろうか。
分厚い本に挟まれて見えにくくなってた一冊の本の間にそれは挟まっていた。
少しだけ時間の経過を感じさせる、シンプルな白い封筒。
「……二通?」
封筒は二通あった。
「……どうしよう?」
幸いどちらも宛名もなく封もされていない。
読もうと思えばどちらも読めてしまうこの状況に、僕は少しだけ躊躇した。
「……とりあえず……」
僕は手紙の挟まっていた本を元の場所に戻し、二通の手紙を持ってその場を後にした。
「さて……と……」
あの人が成仏してからも、足しげく通っている第三音楽室。
いや、別にあの人に逢う前からここは僕の居場所で逃げ場所だったけど。
プロみたいな完璧な演奏はできないとはいえ、ピアノを弾くことは僕にとって、いや僕の一部だった。
だからこそ。
この音楽室が使われてないのをいいことに、通ってた訳なんだけど。
その結果、まさか自分が七不思議の仲間入りを果たすなんて思ってもなかったんだけど。
音楽室の怪異の話をした時のユーレイさんの反応を思い出す。
遠慮なく大笑いしていたあの姿もまた、ユーレイさんなんだろう。
幽霊のくせに、明るくて、僕なんかよりよっぽどキラキラして活き活きしてたユーレイさん。
成仏した後は、転生とかしちゃうんだろうか。
そしたらまた……逢えたりするんだろうか……。
そんな自分を慰めるには滑稽すぎることを考えながら、一つ目の封筒から中身を取り出す。
二つに折られた便箋をひらけば、少しだけクセがあるけどどこか力強くて読み易い文字が並んでいた。
『三年後の俺へ』
そんな書き出しから始まる手紙は、将来教師になるために教育実習でこの学校を訪れるであろう自分に宛てた物だった。
『三年後の俺へ
この手紙を読んでいるということは、俺は間違いなく教師を目指して邁進してるんだと思う。
勉強は大変ですか? 受験勉強よりきついですか? 教育実習は緊張しますか?
昔、教育実習に来た先生をからかったこと、反省しましたか?
まぁ、俺だもんな。きっと反省してると信じてる。(フラグじゃねぇぞ?)
教育実習も含めて、先生になるってのは大変なことだと思う。
だけど俺の背中を押してくれた図書館の彼のことを思い出して、頑張ってくれ。
俺も……頑張るから。
じゃあな。教育実習頑張れよ。
三年二組 沢渡 雄志』
「……さわたり……ゆうじ……かな?」
力強い筆跡で書かれた名前をなぞる。
この手紙がここにあるということは、この人は教育実習にまだ来てないんだろうか?
クラスメイトのお姉さんの話から鑑みるに、この人が教育実習に来るであろう三年後は今年のはずだ。
だけど今年は教育実習生自体来ていない。
何故なら……。
「あの……事故に遭ったって人……だったりして……」
この手紙を書いた人を直接知ってる口ぶりだったお姉さん。
保坂先生の生徒だったという、今年来る予定だった教育実習生。
お姉さんも保坂先生のクラスだったと言ってなかっただろうか……。
そしたら……この人は……。
「いや待てよ。確か事故の後、ちゃんと目を覚まして張り切ってるとかなんとか……?」
お姉さんの話を思い出す。
そうだ。確かそんなことを言っていたはずだ。
じゃあこの手紙は……。
「元の場所に戻しておかないと……」
いつかその人が、沢渡さんが教育実習に来られる日を願って。
図書室に戻ろうと立ち上がった瞬間、膝に置いていたもう一通の封筒がひらりと落ちていった。
「おっと……」
床に落ちたソレを拾い上げ、軽く埃を叩く。
「さて……」
手紙が残されていた理由もわかったし、もう一通を読む必要はあるだろうか?
確かお姉さんは、この手紙を書いた主が、沢渡さんと同じ教師の道を目指す人への手紙だと言っていた気がする。
……自慢じゃないが、教師になれるような器ではない。
だから、僕が読む資格はないと思うんだけど……。
気が付けば椅子に戻ってもう一通の封筒をひらいていた。
同じように力強い筆跡で綴られたソレは、教師だけでなくなりたい、叶えたい夢がある生徒を励ますような内容になっていた。
葛西君のお姉さんから情報を貰った僕は、翌日その手紙が挟まった本があるであろう本棚の前に立っていた。
分厚い本が並んでいるとはいえ、教育ジャンルは目の前の棚の端から端までだ。
以前までの図書室の本全部見るチャレンジよりはだいぶ絞られたと言える。
「……よしっ!」
僕は気合いを入れて、本棚の本に手を伸ばした。
「……あった……」
本棚の三分の二を確認し終えた頃だろうか。
分厚い本に挟まれて見えにくくなってた一冊の本の間にそれは挟まっていた。
少しだけ時間の経過を感じさせる、シンプルな白い封筒。
「……二通?」
封筒は二通あった。
「……どうしよう?」
幸いどちらも宛名もなく封もされていない。
読もうと思えばどちらも読めてしまうこの状況に、僕は少しだけ躊躇した。
「……とりあえず……」
僕は手紙の挟まっていた本を元の場所に戻し、二通の手紙を持ってその場を後にした。
「さて……と……」
あの人が成仏してからも、足しげく通っている第三音楽室。
いや、別にあの人に逢う前からここは僕の居場所で逃げ場所だったけど。
プロみたいな完璧な演奏はできないとはいえ、ピアノを弾くことは僕にとって、いや僕の一部だった。
だからこそ。
この音楽室が使われてないのをいいことに、通ってた訳なんだけど。
その結果、まさか自分が七不思議の仲間入りを果たすなんて思ってもなかったんだけど。
音楽室の怪異の話をした時のユーレイさんの反応を思い出す。
遠慮なく大笑いしていたあの姿もまた、ユーレイさんなんだろう。
幽霊のくせに、明るくて、僕なんかよりよっぽどキラキラして活き活きしてたユーレイさん。
成仏した後は、転生とかしちゃうんだろうか。
そしたらまた……逢えたりするんだろうか……。
そんな自分を慰めるには滑稽すぎることを考えながら、一つ目の封筒から中身を取り出す。
二つに折られた便箋をひらけば、少しだけクセがあるけどどこか力強くて読み易い文字が並んでいた。
『三年後の俺へ』
そんな書き出しから始まる手紙は、将来教師になるために教育実習でこの学校を訪れるであろう自分に宛てた物だった。
『三年後の俺へ
この手紙を読んでいるということは、俺は間違いなく教師を目指して邁進してるんだと思う。
勉強は大変ですか? 受験勉強よりきついですか? 教育実習は緊張しますか?
昔、教育実習に来た先生をからかったこと、反省しましたか?
まぁ、俺だもんな。きっと反省してると信じてる。(フラグじゃねぇぞ?)
教育実習も含めて、先生になるってのは大変なことだと思う。
だけど俺の背中を押してくれた図書館の彼のことを思い出して、頑張ってくれ。
俺も……頑張るから。
じゃあな。教育実習頑張れよ。
三年二組 沢渡 雄志』
「……さわたり……ゆうじ……かな?」
力強い筆跡で書かれた名前をなぞる。
この手紙がここにあるということは、この人は教育実習にまだ来てないんだろうか?
クラスメイトのお姉さんの話から鑑みるに、この人が教育実習に来るであろう三年後は今年のはずだ。
だけど今年は教育実習生自体来ていない。
何故なら……。
「あの……事故に遭ったって人……だったりして……」
この手紙を書いた人を直接知ってる口ぶりだったお姉さん。
保坂先生の生徒だったという、今年来る予定だった教育実習生。
お姉さんも保坂先生のクラスだったと言ってなかっただろうか……。
そしたら……この人は……。
「いや待てよ。確か事故の後、ちゃんと目を覚まして張り切ってるとかなんとか……?」
お姉さんの話を思い出す。
そうだ。確かそんなことを言っていたはずだ。
じゃあこの手紙は……。
「元の場所に戻しておかないと……」
いつかその人が、沢渡さんが教育実習に来られる日を願って。
図書室に戻ろうと立ち上がった瞬間、膝に置いていたもう一通の封筒がひらりと落ちていった。
「おっと……」
床に落ちたソレを拾い上げ、軽く埃を叩く。
「さて……」
手紙が残されていた理由もわかったし、もう一通を読む必要はあるだろうか?
確かお姉さんは、この手紙を書いた主が、沢渡さんと同じ教師の道を目指す人への手紙だと言っていた気がする。
……自慢じゃないが、教師になれるような器ではない。
だから、僕が読む資格はないと思うんだけど……。
気が付けば椅子に戻ってもう一通の封筒をひらいていた。
同じように力強い筆跡で綴られたソレは、教師だけでなくなりたい、叶えたい夢がある生徒を励ますような内容になっていた。



