夏が終わったら逢いにきて 〜初めて恋した相手は幽霊でした〜

「……これでも……ないな……」
 
 図書館で会ったあの人が、この高校に通うきっかけをくれたあの人がユーレイさんだったと気付いた僕は、ユーレイさんが消えて中途半端になっていた七不思議を調べることを再開していた。
 別に今更七不思議を調べたとして、成仏したであろうユーレイさんが戻ってくるわけじゃない。
 それでも僕は、ユーレイさんと過ごした日々を忘れないように、ユーレイさんとの約束を最後まで果たしたくなったのだ。

 調べ終わってなかった七不思議は一つだけ。

『図書室にある呪われた本』

 それを僕は探していた。
 だけどそれは途方もないことだと気付くのにも時間はかからなかった。

「……せめて、どんな本なのか、どんな呪いなのかくらいは明らかにして欲しかった……」

 普段あまり人が来ない専門書が並ぶ本棚の前で、僕は途方に暮れていた。
 何せこの学校の図書室はなかなか立派なのだ。何せ、図書室だけで独立した建物があるくらいで。
 もちろん蔵書量も凄くて、なんならご近所さんにも開放されてるくらいなのだ。

 今日もちらほらと僕と同じような制服を着てる人たちに交って、私服っぽい服を着た明らかに学生って年頃じゃない人もウロウロしている。

「いやもうマジで……途方もないな……」

 難しいタイトルのついた布張りの本を眺めながら、僕はどうしたもんかと頭を抱える。

「あっれ? 島ちゃん? こんなとこで何してんのぉ?」

「うわっ?!」
 
 急に声をかけられ、飛び跳ねる程驚いてしまった。
 そんな自分を恥ずかしく思いながらも、声の聞こえてきたほうに振り向けば、そこには見知ったクラスメイトの顔と……。

「あ……れ? その方は……?」

 葛西君の隣には、私服を着たいくつか年上に見える女性が立っていた。
 もちろん先も言った通り、この図書館はここの生徒以外にも開放されてるから、女性がいることはおかしくないんだけど……。

「あ? こっち? ウチのねーちゃん。なんか大学のベンキョーに必要な本探したいからって、駆り出されたん。島ちゃんはこんなとこで何してんの?」

 葛西君が不思議そうに首を傾げる。
 そりゃ、こんな専門書が並ぶエリアに僕がいるのは違和感あるけど……。

「ちょっと……本を探してて……」

「ふぅん? なんて本? ねーちゃんの本探すついでに手伝うよ」

 気のいいクラスメイトの言葉に、一も二もなく飛びつこうとして、ちょっと困ってしまった。
 呪いの本を探してますって……素直に伝えてもいいんだろうか?

 どしたー? と首を傾げる葛西君に対して、僕は明らかに挙動不審になってしまう。
 きょろきょろと視線を彷徨わせていると、彼のお姉さんだという人と目があった。
 彼女も不思議そうに僕を見ていて……。

「……あっ!」

 そうだ。彼のお姉さんと言えば、七不思議のうち、呪いの本の話を卒業直前に聞いたって人だ。

「ん?」

「島ちゃんどしたの?」
 
 性別が違うとはいえそこは姉弟。
 どこか似ている二つの顔が同じ角度で傾けられ、僕を見ている。

「あ、あの……。七不思議にある図書室にある呪いの本の話を詳しく聞きたいんですが……」

 僕の言葉に、二人はやっぱりそっくりな顔で顔を見合わせたのだった。