従姉がナンパしたグループの一人は、俺が男だと知ったあとも距離を縮めてくる

 それからというもの、日曜日になるまで、なんとなく落ち着かなかった。
 アルバイトも忙しく、ゆっくり考える時間もあまりないまま、気づけば当日になっていた。
 今回の待ち合わせ場所は、勉強もできるカフェだ。
 俺の家からのほうが少し近く、そこで課題をやったあと、一緒に昼ご飯も食べることになっている。
 久しぶりに会うけど、勉強会で何を話そう。
 ああ、でも、あまり話しかけたら邪魔になってしまうよな。
 そんなことを考えながら、家を出て駅へ向かった。
 電車に乗り、カフェの最寄り駅で降りる。
 俺のほうが数分早く着く予定だったので、邪魔にならないよう駅の隅に寄り、海里くんを待った。
 しばらくすると、電車が到着する音が聞こえてきた。
 階段を降りてくる人の中に、海里くんの姿を探す。
 すると、俺の記憶よりも少し日に焼けた海里くんの姿が見えた。
 俺はすぐに片手を上げる。
 ここだよ、と伝えるように、少しだけ手を振った。
 海里くんは階段を降りながら周囲を見渡し、俺を見つけたようで、片手を上げて振り返してくれた。
 そのまままっすぐ俺のところまで来ると、海里くんが口を開く。
「ごめん、お待たせ」
「いえ。わざわざこっちまで来てもらって、ありがとうございます」
「いや、全然。ここのカフェに行きたいなーって思ってたから。俺のほうこそ、急に誘ってごめんね」
「いえ、誘ってくれてありがとうございます」
「それならよかった」
 そう言って、海里くんが笑う。
 海里くんの家の近くには、大きな図書館もあるし、勉強できる場所もいろいろある。
 店だって、こっちよりずっと多い。
 それなのに、わざわざ俺の家に近いこっちまで来てくれた。
 そんな海里くんの優しさに触れて、胸が温かくなった。
 二人で並んで歩きながら、カフェへ向かう。
 海里くんがスマホの地図を見ながら、道を案内してくれている。
「海里くん、この辺に来たことありますか?」
「んー、あんまりないかな」
「じゃあ、これから行くカフェも初めてですか?」
「うん。翔に教えてもらったんだ」
「そうなんですね」
「ここ、落ち着いてて勉強しやすいみたいだよ。あと、ご飯も美味しいらしい」
「そうなんですか?」
「そうそう。何食べようかな」
「楽しみですね。ランチのために、課題を頑張れそうです」
「ね。さっさと終わらせて、美味しいもの食べよっか」
「はい!まずは課題終わらせることを頑張らないとですね」
「うん。頑張ろ」
 海里くんはそう言って、もう一度スマホの地図を確認する。
「こっちで合ってるみたい。もう少しだよ」
「はい」
 海里くんの隣を歩きながら、目的のカフェを目指した。
 しばらく歩くと、目的のカフェに着いた。
 店内に入り、二人でドリンクを注文する。
 受け取ったドリンクを手に、海里くんについて二階へ上がった。
 二階には、コンセントの付いた机がいくつか並んでいる。
 窓際の席は人気があるのか、ほとんど埋まっていた。
「窓際、空いてますけど……ちょっと暑そうですね」
「そうだね。あっちにしよっか」
 海里くんが窓から少し離れた席を指差す。
 そこに向かい合って座った。
 机は思っていたより広く、テキストを広げても十分に余裕がある。
「ここ、いいですね」
「そうだね。机も広いし、勉強しやすそう」
「これなら課題も捗りそうです」
「だね。じゃあ、今日は課題を終わらせることを目標に頑張ろうか」
「はい。頑張りましょう」
 俺は鞄からテキストを取り出し、机の上に広げた。
 海里くんも向かいでテキストを開く。
「よし。始めよっか」
「はい」
 二人でテキストを開き、それぞれ課題に取りかかった。