ゾウのおなかに一等星


 二日前のこと、俺のスマホにLINEが届いた。

『次回、これ、どう?』

 続けてぽこんッと写真が送られてくる。
 アートアクアリウムのインスタのスクショだ。
 濃紺をバックに、丸い金魚が何体も泳いでいる。美しい光景だとは思うけれど……

「まった面倒なものを」

 呟いて、そっくりそのままの台詞を送る。
 すぐに既読がついて、またポンっと吹き出しが増えた。

『数を少なくして、ひらひら増やして』
「デッサンするから待て」

 待てと言って手のひらを前に出すタヌキのスタンプを送り、手元に白紙と太いサインペンを引き寄せる。
 眼鏡を押し上げ、届いた画像をチラチラと見ながら、長い腕に映えるような構図を考える。
 数は二体か、多くても三体。いや、二体にして尾びれを広げた方がいい。鱗は一部だけを煌めかせて。
 数分で描いたそれを写真に撮り、LINEに上げる。

『これで』

 続けて腰を振るキツネのスタンプ。またなんなんだ、このスタンプのチョイスは。
 ふっと笑って、「明日?」と送る。
 すぐにキツネが投げキッスを返してきた。つまりはオッケーということだろう。
 LINEを閉じて、金魚の画像の検索をかける。期限は明日。
 美しさと格好よさが共存したようなデザインを考える。立体的に、でも派手過ぎない。
 鱗の煌めきと華やかな尾びれ。そして忘れてはいけないのが……あの腕に残る跡。

「今回は目と、鱗かな」

 もう十年以上見てきた腕だ。ほくろの位置ですらも完璧に覚えている。
 俺は勉強をそっちのけで夢中になって金魚を描き続けた。