ミステリアスで寡黙なエースは、恋愛をしたら変わりすぎる!

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日曜日は、サッカー部の練習試合。


今日は特集動画の素材を撮るため、宮本も一緒だ。
画角に収まる青い空、山、グラウンド、サッカー部員たち。
カメラを構えた宮本は、「画面は悪くないですね」とまんざらではなさそうだった。


相手は県の強豪、T学園。


俺たちの市立H高等学校サッカー部も弱小ではないが、強豪相手に前半はかなり押されていた。
連続して得点されたときは、絶望した。


前半。
蒼也は何度も相手ディフェンスの裏へ走った。だが、パスは出てこない。
蒼也が声を出して要求していないのか。
味方同士がかみ合わないまま、前半が終わった。


スコアは0-2。


ハーフタイム。


ベンチへ戻った選手たちが輪になる。その中で、蒼也が何かを話しているのが見えた。
ここからでは声までは聞こえない。
けれど、蒼也にしては珍しく、よく口を動かしている。
周りの部員たちも、蒼也を見ていた。


「才川がなんか言ってますね」


宮本のカメラが蒼也をズームしたようだった。


ハーフタイムを挟んで後半が始まった。


流れが変わる。
同じクラスの三ツ橋が中盤でボールを奪った。


「裏!」


蒼也の声がグラウンドに響いた。

蒼也が素早く相手ディフェンスの裏へ走り込む。蒼也がフリーだ。
三ツ橋が迷わずパスを出す。

「いけーー蒼也ーー!! そこだ!! いけるぞーー!!」


今日一番の大声が出る。


蒼也が落ち着いて放ったシュートは、綺麗な弧を描き、ゴールキーパーが高く掲げた手をすり抜けて、ゴールネットを揺らした。


得点だ! 1-2。


「やったああああ!!」
「やったー!」
「入った!! 入った!!」


思わずジャンプし、隣にいたサッカー部員たちと次々にハイタッチした。

こっちに気づいたのか、蒼也がこちらを見る。


「才川くんが笑ってる!」


女子が、目ざとく黄色い声を上げた。


蒼也は笑っていた。


「ほんとだ! 蒼也が笑ってる!!」


蒼也が笑っているのを見るのは、初めてだった。
びっくりして、俺も女子と一緒になって騒いだ。


蒼也の得点で勢いがつき、続けて三ツ橋が同点ゴールを決めた。

2-2。


そして終了間際。
こぼれ球を拾った蒼也が、なんと逆転弾を決める。

3-2。


そしてそのまま試合を終えた。
なんと逆転勝利。


この劇的な試合結果は、お昼の放送で余すところなく伝えないと。


興奮冷めやらぬまま、サッカー部の主将と、得点した三ツ橋にそれぞれインタビューした。


最後に蒼也のところに行く。
かしこまった様子で、マイク代わりのスマホを差し出す。

「本日2得点の才川くん、試合を振り返ってどうですか……!?」


かしこまっていられず、嬉しさのあまり蒼也の周りを回る。


「後半急に変わったな~! 前半劣勢だったのに、流れが変わって大逆転だった!」


蒼也は見慣れたように、俺が回り終わるのを待っていた。


「言ったので」


蒼也の言葉の続きを待つ。


「どこへボールがほしいか。それと、気持ちで負けてる、どうしても勝ちたいって」


「蒼也が、自分から!?」


「はい。伝えるには言うしかない」
「おお…! それで変わったんだな!」
「わからないけど…、空気は変わった」
「すごいな、蒼也!」


俺は両手を広げて喜んだ。
蒼也はまた少し微笑んでいた。


「玲生のおかげ」
「どっから俺出てきたの!?」


唐突に俺の名前が出てきてきょとんとすると、蒼也がまた少し笑った。


その晩の蒼也のSNSは、試合が終わった後のフィールドの写真だった。
青い空。遠くにまだ残っている観客。

「いい写真だなー!」


写真に添えられていた文章は、
『どこにいるかすぐわかる』だった。


なにが?


てっきり試合後の感想が見れると思っていたので、俺は首を傾げた。