ミステリアスで寡黙なエースは、恋愛をしたら変わりすぎる!



#3
蒼也の企画動画を進めるには、蒼也の周囲の人にも話を聞く必要がある。


同じクラスでサッカー部の三ツ橋に取材した。
休み時間、教室の窓際で数人と喋っていたところインタビュー。


「才川の取材? そうだなあ…あいつ、個人技は抜群なんだけど」


明朗で頭の回転の速い三ツ橋は、スラスラと続けた。


「周囲との連携や意思疎通が明らかに苦手だな。言葉も身振りも少なすぎ。もったいないって思ってる」


やはりサッカー部でも、思っていることを言葉にできないと思われているのか。


それから三ツ橋は少し考えて、言った。


「でも、無愛想だけど、よく気がつく。片づけもいつも最後まで残ってるし」


放課後、コンビニ。


部活帰りにコンビニにいた一年のサッカー部員たちに取材した。


「才川、フリーキックめっちゃ上手い。あと走るの速すぎ」
「確かに部活中ずっと一緒にいるけど、何考えてるかは全くわからないですね」
「サッカー部の仲間はいるけど、友達って言えそうなの、いるかなあ。でも本人はあまり気にしてなそう」


選手としてもまだまだ成長の余地あり、か。


■

放課後のグラウンド。


校舎の影でサッカー部が終わるのを待っていると、俺の姿を見つけた蒼也が近づいてきた。


俺はニヤッと笑って手を振る。
蒼也も片手を上げた。


「おつかれー!」
「おつかれさまです」


ぺこりと頭を下げてから、蒼也は俺に向き直った。

「次は、どんな練習ですか」
「次は、書く!」
「書く…」


「と言っても、もうインタビューの時にやってくれてたな」


スマホを出して、SNSを見せる。


「俺、毎日やってるんだけど、自分だけの非公開アカウントに日記書いてる」


画面を埋める文章量に、蒼也は目を細めた。


「その日喋りきれなかったことがたくさんあるから、書かないと爆発しそうでさ!」


スワイプして、カラオケの日の日記、映画の日の日記を出す。


「蒼也とカラオケに行ったことも映画に行ったことも書いてる」
「……」


蒼也は長文をじっと見ている。


楽しかったこと、何を話したか、ポップコーンが半分残ったこと、ハンカチを貸してくれたこと、ポテトをくれたこと。


日記なので、ちょっと恥ずかしくなってスマホを隠す。


「蒼也もSNSに日記を書いてみるのはどう? 非公開でいいから、その日何があって、どう思ったとか」
「やります」


蒼也は強く頷いた。


「おお〜!」


嬉しくて、その場で跳ねた。
蒼也はよく跳ねる生き物に慣れてきたらしく、不審そうな目線はもう送らなかった。


「自主練ですね」


蒼也が取り出したスマホを二人で覗き込む。


「じゃあこのアプリ入れてー」
「……こういうの使ったことなくて」
「任せて! 俺使いまくってるから」


俺が横からスルスル操作していくのを、蒼也は大人しく見ていた。
スマホの画面の中には、できたての蒼也のアカウントが映る。


「これで好きな写真をアップロードして、好きなこと書く!」


無言でスマホを見ている蒼也の顔を、うきうきして覗き込む。


「フォローしていい?」
「はい」


俺がフォローすると、蒼也はさっき説明されたとおりに操作し、鍵をかけた。
フォロワーが俺だけの、非公開アカウントが完成した。


「じゃあ今日からなんか書いてみて!」
「なんか……」


蒼也は考え込んでいた。


家に帰ってなにげなくSNSを開くと、蒼也のアカウントが更新されている。


投稿されていたのは、空き地でこっちを見ている茶色い猫の画像。


「おおっ、初投稿!」


写真と一緒に書かれていた文章は、『かわいい』。


「ふふっ。四文字」


それから、毎晩更新される蒼也のSNSを見るのが楽しみになった。


『学食に天ぷらそばが出た。』


日記というか献立! 好きなのかな?


夕焼けと隊列を組んで飛んでいく鳥の画像。


『部活でうまく伝えられなかった。気持ちが沈んだ』


感情になってきた!


『パスミスしてしまった。思ったのと違う結果になって気持ち悪いと思った』


文が増えてきた! どう思ったか書いてある…!


『明日はT学園と練習試合』


『応援と取材に行くから!』と即メッセージを送った。