そのままショッピングモールの中、大きなハンバーガーが目印のファーストフード店へ向かう。
「幼なじみの女子の気持ちを思うと…辛すぎて頭が真っ白になった…雨が上がったあとの夏の雲のデカさが悲しすぎてさあ!」
映画館を出てからずっと止まらない俺の感想を、蒼也はじっと聞いていた。
「でももう一回あのバス停に戻ったとこヤバすぎて」
自分ばかり話しすぎていることに気づき、慌てて自重する。
蒼也と来たんだから、蒼也の感想も聞きたい。
「蒼也はどうだった? 気になったところあった?」
蒼也は考えているようだった。その言葉を待つ。
まだ出てこない。待つ。
蒼也はたっぷり考えた。
「……デカいクワガタが捕れたところ」
大きなクヌギの樹液に集まっていた、デカいクワガタのシーンがぱっと思い起こされる。確かに!
「おお!! ヤバかったよな! あんなの取れたら、俺なら興奮してその夜寝られないかも」
「そこまでではないです」
「クールすぎない!? そうだ、最後の最後に遊園地でキスするところ、鳥肌立たなかった!?」
蒼也はポテトを一本口に入れ、ゆっくり噛んで飲み込んでから答えた。
「恋愛はしたことないから、よく分からないです」
「恋愛かあ……。俺も恋愛は苦手」
「さっき、あんなに泣いてたのに?」
蒼也はゆっくり、怪訝そうに言った。
「泣くから苦手なんだよ!」
蒼也は自分の中で考えを探るように黙り、それから口を開いた。
「……玲生は、恋愛したことあるんですか」
蒼也が俺のことを聞いてくるのは珍しかった。ていうか今まであったかな?
その言葉に記憶のフタが開く。
「あんまないんだ…。小六のとき塾で隣の席のララちゃんを好きだったくらいかなあ」
塾の教室の光景がありありと思い起こされる。
「でもララちゃんは、同じクラスの悠介を好きでさ……」
その日、ララちゃんは机にジュースをこぼした。
俺はその日たまたまハンカチを鞄に入れていた覚えがあったから、意気揚々と取り出した。
「それ、なぜか父親のパンツだったんだ。ギリ、ララちゃんにはバレなくて隠せたんだけど、そのとき悠介がさっとハンカチを渡してて、ララちゃん、嬉しそうにしてて……」
これだから恋愛は……
思い出しただけで落ち込んでいる俺に、蒼也は遠慮がちに自分のポテトを差し出してきた。
「蒼也、優しいやつだな……」
手を出して、遠慮なくポテトを三本取って食べる。
「うまい……」
「そんなこと言ったの、玲生が初めて」
「なんでだよ、優しいって。さっきもサッとハンカチ貸してくれたし」
「恋愛、分かってないのに、そんなに感想が出てくるんですか」
「自分が経験してなくても気持ちは分かるじゃん」
蒼也はよくわからなそうな顔をした。
なんだか少しだけ、蒼也の表情の変化が読み取れるようになってきた気がする。
そう思った途端、急に楽しくなってきた。
「映画はやっぱ、観たあとにこうやって語り合うのがいいよな! 楽し〜」
蒼也はほっとしたような顔をして、自分もポテトを食べた。
「今日も楽しかった記念に、写真撮ろ〜」
セルフィーするべくスマホを掲げると、また蒼也が律儀に画角に収まってくれた。
縮こまりながら、蒼也は珍しくまた自分から聞いてきた。
「これ、どうやって撮ってるんですか」
「腕が長いほうがたぶん綺麗に撮れるから、蒼也、撮ってみない?」
蒼也は頷いた。
「右手でこう持って、親指で…」
蒼也は説明どおり、器用に撮影した。
またしても、満面の笑顔の俺と無表情の蒼也のツーショット画像ができる。
前の写真との違いは、少しだけ広い画角になったこと。蒼也の長い腕が手前へ伸び、今度は蒼也が二人の写真を撮っていること。
笑っているのは、また俺だけだ。
これじゃあこの間と同じだ。また俺ばっかり喋ってしまった。
俺のしたいことに付き合わせただけで、蒼也は楽しくなかったのではないだろうか。
「楽しいです」
「そうだよなあ………えっ!?!?」
表情と言葉が合ってない。
相変わらずの無表情の蒼也の口から出た意外な言葉に、思わず大声で聞き返した。
「幼なじみの女子の気持ちを思うと…辛すぎて頭が真っ白になった…雨が上がったあとの夏の雲のデカさが悲しすぎてさあ!」
映画館を出てからずっと止まらない俺の感想を、蒼也はじっと聞いていた。
「でももう一回あのバス停に戻ったとこヤバすぎて」
自分ばかり話しすぎていることに気づき、慌てて自重する。
蒼也と来たんだから、蒼也の感想も聞きたい。
「蒼也はどうだった? 気になったところあった?」
蒼也は考えているようだった。その言葉を待つ。
まだ出てこない。待つ。
蒼也はたっぷり考えた。
「……デカいクワガタが捕れたところ」
大きなクヌギの樹液に集まっていた、デカいクワガタのシーンがぱっと思い起こされる。確かに!
「おお!! ヤバかったよな! あんなの取れたら、俺なら興奮してその夜寝られないかも」
「そこまでではないです」
「クールすぎない!? そうだ、最後の最後に遊園地でキスするところ、鳥肌立たなかった!?」
蒼也はポテトを一本口に入れ、ゆっくり噛んで飲み込んでから答えた。
「恋愛はしたことないから、よく分からないです」
「恋愛かあ……。俺も恋愛は苦手」
「さっき、あんなに泣いてたのに?」
蒼也はゆっくり、怪訝そうに言った。
「泣くから苦手なんだよ!」
蒼也は自分の中で考えを探るように黙り、それから口を開いた。
「……玲生は、恋愛したことあるんですか」
蒼也が俺のことを聞いてくるのは珍しかった。ていうか今まであったかな?
その言葉に記憶のフタが開く。
「あんまないんだ…。小六のとき塾で隣の席のララちゃんを好きだったくらいかなあ」
塾の教室の光景がありありと思い起こされる。
「でもララちゃんは、同じクラスの悠介を好きでさ……」
その日、ララちゃんは机にジュースをこぼした。
俺はその日たまたまハンカチを鞄に入れていた覚えがあったから、意気揚々と取り出した。
「それ、なぜか父親のパンツだったんだ。ギリ、ララちゃんにはバレなくて隠せたんだけど、そのとき悠介がさっとハンカチを渡してて、ララちゃん、嬉しそうにしてて……」
これだから恋愛は……
思い出しただけで落ち込んでいる俺に、蒼也は遠慮がちに自分のポテトを差し出してきた。
「蒼也、優しいやつだな……」
手を出して、遠慮なくポテトを三本取って食べる。
「うまい……」
「そんなこと言ったの、玲生が初めて」
「なんでだよ、優しいって。さっきもサッとハンカチ貸してくれたし」
「恋愛、分かってないのに、そんなに感想が出てくるんですか」
「自分が経験してなくても気持ちは分かるじゃん」
蒼也はよくわからなそうな顔をした。
なんだか少しだけ、蒼也の表情の変化が読み取れるようになってきた気がする。
そう思った途端、急に楽しくなってきた。
「映画はやっぱ、観たあとにこうやって語り合うのがいいよな! 楽し〜」
蒼也はほっとしたような顔をして、自分もポテトを食べた。
「今日も楽しかった記念に、写真撮ろ〜」
セルフィーするべくスマホを掲げると、また蒼也が律儀に画角に収まってくれた。
縮こまりながら、蒼也は珍しくまた自分から聞いてきた。
「これ、どうやって撮ってるんですか」
「腕が長いほうがたぶん綺麗に撮れるから、蒼也、撮ってみない?」
蒼也は頷いた。
「右手でこう持って、親指で…」
蒼也は説明どおり、器用に撮影した。
またしても、満面の笑顔の俺と無表情の蒼也のツーショット画像ができる。
前の写真との違いは、少しだけ広い画角になったこと。蒼也の長い腕が手前へ伸び、今度は蒼也が二人の写真を撮っていること。
笑っているのは、また俺だけだ。
これじゃあこの間と同じだ。また俺ばっかり喋ってしまった。
俺のしたいことに付き合わせただけで、蒼也は楽しくなかったのではないだろうか。
「楽しいです」
「そうだよなあ………えっ!?!?」
表情と言葉が合ってない。
相変わらずの無表情の蒼也の口から出た意外な言葉に、思わず大声で聞き返した。
