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放課後。
グラウンドの脇を通ると、サッカー部員たちがいた。
蒼也が三ツ橋やチームメイトと話していた。
「練習、右から崩す形を試したいです。三ツ橋さんが中央へ入ったら、俺が外へ開く」
「いいんじゃない?」
以前の蒼也なら、頭の中だけで考えて、そのまま走り出していただろう。
俺に気づくと、蒼也は笑って手を振った。
俺はというと、諸橋と一緒にいろんな部に出入りして取材する日々を送っている。
諸橋の特集動画の制作も進んでいた。
運動部経験者が編集に入ることで、プレーの切り取り方や見せ方がみるみる変わるのがわかる。
「このカットの方が構図が美しい」
「プレーがわからん」
宮本は唸っていた。
今日はオセロ部の取材。
インタビューは諸橋に任せてみた。
「オセロって面白さはどこすか」
「序盤は、あまり石を取らないほうがいいとことか」
「ああん……?」
顔を寄せただけのようだったが、諸橋の声と目つきでは絶妙に威嚇だった。
「取れる場所を残すためです! 最後に多ければ勝ちなので!」
オセロ部員に緊張が走る中、俺は背後で限界まで笑顔を作り、空気を和やかにする係を担当した。
そうして部活が終わり。
河川敷で蒼也を待つ。
夕方の空を眺めたり、スマホを見たりしているうちに、すぐに軽い自転車の音が近づいてくる。
自転車から降りた蒼也は俺を見て、ふわりと笑った。
並んで河川敷に腰掛け、川の中で魚を狙う大きな白い鳥を眺める。
帰り際に二人で、その日あったことを話すのが、俺たちの日課になっていた。
「…放送部に入った諸橋。玲生のことよく見てる」
「ええっ?」
「そりゃあ、最初は仕事のやり方を覚えないとだし。見て覚えることもあるだろうし」
「それに、玲生とずっと一緒にいる」
「そりゃあ同じ部活だから……」
カバンからグミを出し、蒼也の手にポトポトと出した。
蒼也は手の中のグミを見つめた。
不服そうな顔の蒼也はグミを口に入れ、しばらくもぐもぐとしていた。
それから、ベルのように肩を寄せてくっついてきた。
身体の大きな蒼也に体重を預けられると、結構重い。
撫でてなだめることにする。
しばらく撫でているうちに、蒼也は「わかってる」とつぶやいた。
蒼也はふっと起き上がった。
「抱きしめてもいいですか」
「聞くの!? いいよ」
俺から抱き着こうと腕を広げると、蒼也は長い腕を広げて俺の身体を囲むと、引き寄せる。
顔を蒼也の胸に押しつけられ、そのままぎゅっと抱きしめられた。
川の中の大きな白い鳥が、尖ったくちばしで魚を捕らえ、さっと空へ飛び上がっていった。
「玲生を一番好きなのは俺」
蒼也はますます愛情表現が上手くなり、愛情を次々と言葉にする。
蒼也の長い腕が巻きついて、起き上がれそうにない。
「離さない…もう少し、このままでいたい」
蒼也は嬉しそうに微笑んだ。
というか、ちょっと…
「愛情表現、うまくなりすぎ…!」
「一番伝えないといけない感情だから、言葉でも、態度でも表現します」
「好きです」
「俺も」
「嬉しい…」
「俺も嬉しい!」
「明日も会いたい。明後日も、その次も」
「ちょっと待って、わかった、わかったから!」
蒼也の止まらない愛情表現に少し照れながらも、腕の中にいる。
「才川蒼也くん。今、一番嬉しいことは?」
「玲生が俺の好きを、受け入れてくれることです」
「では、その気持ちを詳しく」
「好き。嬉しい。可愛い。声が好き。目が好き。髪が好き。指が好き。手が好き。言葉が好き。口が好き。足音が好き。それから…」
「多いって!」
END
放課後。
グラウンドの脇を通ると、サッカー部員たちがいた。
蒼也が三ツ橋やチームメイトと話していた。
「練習、右から崩す形を試したいです。三ツ橋さんが中央へ入ったら、俺が外へ開く」
「いいんじゃない?」
以前の蒼也なら、頭の中だけで考えて、そのまま走り出していただろう。
俺に気づくと、蒼也は笑って手を振った。
俺はというと、諸橋と一緒にいろんな部に出入りして取材する日々を送っている。
諸橋の特集動画の制作も進んでいた。
運動部経験者が編集に入ることで、プレーの切り取り方や見せ方がみるみる変わるのがわかる。
「このカットの方が構図が美しい」
「プレーがわからん」
宮本は唸っていた。
今日はオセロ部の取材。
インタビューは諸橋に任せてみた。
「オセロって面白さはどこすか」
「序盤は、あまり石を取らないほうがいいとことか」
「ああん……?」
顔を寄せただけのようだったが、諸橋の声と目つきでは絶妙に威嚇だった。
「取れる場所を残すためです! 最後に多ければ勝ちなので!」
オセロ部員に緊張が走る中、俺は背後で限界まで笑顔を作り、空気を和やかにする係を担当した。
そうして部活が終わり。
河川敷で蒼也を待つ。
夕方の空を眺めたり、スマホを見たりしているうちに、すぐに軽い自転車の音が近づいてくる。
自転車から降りた蒼也は俺を見て、ふわりと笑った。
並んで河川敷に腰掛け、川の中で魚を狙う大きな白い鳥を眺める。
帰り際に二人で、その日あったことを話すのが、俺たちの日課になっていた。
「…放送部に入った諸橋。玲生のことよく見てる」
「ええっ?」
「そりゃあ、最初は仕事のやり方を覚えないとだし。見て覚えることもあるだろうし」
「それに、玲生とずっと一緒にいる」
「そりゃあ同じ部活だから……」
カバンからグミを出し、蒼也の手にポトポトと出した。
蒼也は手の中のグミを見つめた。
不服そうな顔の蒼也はグミを口に入れ、しばらくもぐもぐとしていた。
それから、ベルのように肩を寄せてくっついてきた。
身体の大きな蒼也に体重を預けられると、結構重い。
撫でてなだめることにする。
しばらく撫でているうちに、蒼也は「わかってる」とつぶやいた。
蒼也はふっと起き上がった。
「抱きしめてもいいですか」
「聞くの!? いいよ」
俺から抱き着こうと腕を広げると、蒼也は長い腕を広げて俺の身体を囲むと、引き寄せる。
顔を蒼也の胸に押しつけられ、そのままぎゅっと抱きしめられた。
川の中の大きな白い鳥が、尖ったくちばしで魚を捕らえ、さっと空へ飛び上がっていった。
「玲生を一番好きなのは俺」
蒼也はますます愛情表現が上手くなり、愛情を次々と言葉にする。
蒼也の長い腕が巻きついて、起き上がれそうにない。
「離さない…もう少し、このままでいたい」
蒼也は嬉しそうに微笑んだ。
というか、ちょっと…
「愛情表現、うまくなりすぎ…!」
「一番伝えないといけない感情だから、言葉でも、態度でも表現します」
「好きです」
「俺も」
「嬉しい…」
「俺も嬉しい!」
「明日も会いたい。明後日も、その次も」
「ちょっと待って、わかった、わかったから!」
蒼也の止まらない愛情表現に少し照れながらも、腕の中にいる。
「才川蒼也くん。今、一番嬉しいことは?」
「玲生が俺の好きを、受け入れてくれることです」
「では、その気持ちを詳しく」
「好き。嬉しい。可愛い。声が好き。目が好き。髪が好き。指が好き。手が好き。言葉が好き。口が好き。足音が好き。それから…」
「多いって!」
END
