ミステリアスで寡黙なエースは、恋愛をしたら変わりすぎる!

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大粒の雨が窓ガラスを叩き、滝のように流れていくのを見ながら、二人でアイスを食べた。
膝の上に顎を乗せるベルを撫でながら。


二階にある蒼也の部屋は、余計なものが少なく、きれいに片づいていた。
中学時代のものだろうか、サッカーの盾が飾ってある。


「俺も風呂に入ってきます」


蒼也が部屋を出ていく。

なにげなく机に目を向け、異物を発見した。
机の隅に置いてある、可愛い絵柄の漫画。


「恋愛漫画……?」


表紙では、制服姿の男女が見つめ合っていた。


「蒼也、こういうの読むんだ……」


あまりにも意外だったので、つい一巻を開く。


高校生二人が、両想いなのに、互いの気持ちに気づかずすれ違う話。
恋愛は苦手だけど、話の続きは気になるし、必要以上に感情移入してしまう。


「どう考えても両想いだって! そこで言えよ!」


気がつくと一巻を読み終えていた。


「続き…」


二巻に手が伸びる。二人は気持ちを告げることなくすれ違い続ける。
突然の雨に降られた二人は、男子の家へ避難する。
両親は不在。女子は、男子の大きなTシャツを借りる。
そして二人は…


「待って」


俺は自分の服を見る。
蒼也に借りた、ぶかぶかのTシャツ。
窓の外では大雨。
家にいるのは、俺と蒼也とベルの二人と一匹だけ。


「状況が一致しすぎてる……!」
「二巻を読んでいたんですか」
「うわあっ!」


いつの間にか、蒼也が部屋へ戻っていた。


「読んでない!」
「持ってる」
「読んでました!」


観念し、漫画を差し出す。


「……蒼也、恋愛漫画読むんだ」
「サッカー部で恋愛漫画が流行っていたので。興味があるので借りました」
「そっか……」


サッカー部、恋愛漫画流行ってるのか…
蒼也に恋愛漫画を貸してほしいと言われたサッカー部のやつ、驚いただろうなあ。


「恋愛漫画を読んだら何かわかるかと思ったけど、わからなくなった」


蒼也は目を伏せた。
俺も同じ。恋愛はわからないことだらけだ。


少し開いた部屋のドアから、ベルも入ってきた。


それから蒼也の部屋で、寝るまで好きなことをして過ごした。
ベルと遊びながらスマホを見たり、勉強したり、お互いの家族の話をした。


ふと、膝の上のベルが体を起こした。
鼻先でドアを押すと、隙間から出ていった。水を飲みにいくのだろうか。


ベルは構ってほしければ甘え、好きな人の膝に登る。
そばにいたければ、勝手に身体をくっつける。


――ベルみたいにできたらいいのに。


「ベルみたいにできたらいいのに」


蒼也の声だった。
思っていたことを、自分が喋ったのかと思った。


「……蒼也のことも、撫でたくなってきた」


蒼也はちょっと驚いた顔をした。


「どうぞ」


蒼也の頭が、遠慮がちに近づいてくる。


「ふふっ」


手を伸ばすと、艶々の黒い髪に指が触れる。


「ふふ…。こっちはサラサラしてる」


見た目どおり癖がなく、指がするりと通った。毛量は多く、密集。
俺の髪はちょっと癖があって、部分的にうねうねするので、いいなと思う。
ベルと同じようにさわさわと指を通していく。


蒼也は身体を小さくして、遠慮がちに俺の膝に頭を乗せてきた。
乗っているが、ほとんど体重がかかっていない。


「蒼也、ベルみたい」
「真似してる…」


蒼也がだんだん体重を預けてきて、膝の上の重みが大きくなってくる。

「ベルよりだいぶ大きいけど、蒼也も可愛いな」


俺の膝に頭を乗せたままの、蒼也の表情はわからなかった。