今度の引越し先はどこだと思う?
彼女から届いた手紙に書かれていたのは、そのたった一行だけだった。鮮やかな青の紫陽花の書かれた一筆箋に、几帳面な文字が縦に並んでいる。
封筒を探ると、他にも何か入っているようだった。
中身を取り出してみると、写真が三枚入っていた。
一枚目の写真に写っているのは、なんてことのない古ぼけたアパートの室内。
家具の類はまだ何も置かれていない。まるで不動産屋のホームページの紹介画像みたいだ。1LDKだろうか、濃い木目のフローリングの隅に1口コンロしかないキッチンが写っている。
二枚目はアパートの外観。
二階建てのどこにでもありそうな特徴のない白壁のアパート。築数十年は経っているだろう。肝心のアパート名はうまい具合に写っていない。
そして三枚目を取り出すと、くらくらと眩暈がした。
「……高円寺だ」
写真に写っていたのは、高円寺駅だった。JR高円寺駅。オレンジ色の中央線と黄色の総武線が通っている、あの高円寺駅だ。
高円寺駅の南口で、彼女がカメラ目線でピースサインをしている。写真のなかの彼女は最後に会った時から経た年相応に年を取り、微笑んでいる目じりには柔らかなしわが刻まれている。
私はこんな光景を見たことがある、気がする。強烈なデジャヴのようだ。しかし、そんなことあるわけがない。
だって、高円寺駅は、もうないのだ。
私たちがともに青春を過ごしたあの夏に、無くなったはずなのだ。
***
あの頃、私たちは大学生だった。
地方から上京してやってきて、学業もバイトもそこそこに嗜み、夢中になれるものもなく、ただ時間を無為に垂れ流していた。
私が彼女とつるむようになったのに、特別な理由はない。入学式で隣になっただけの友達候補たちが、みなサークルやバイトやらのコミュニティに居場所を見出し、友達から続々と脱落していき、残ったのが私と彼女だけだったのだ。
大学を積極的にさぼるほどのモチベーションもない私たちは、よく大学の終わりに高円寺を訪れた。
二人の家に程よく近く、程よく遠く、キラキラしすぎていない中央線らしい気怠い空気が肌に合った。
時に古着屋を冷やかし、時に我々が生まれる前からある喫茶店で好きでもないコーヒーを飲み、二〇歳を越えれば居酒屋というものに突撃し、街中に友達でも知り合いでもないが見たことのある人がぽつぽつ出来て、これが大学生なんだと思っていた。
彼女とそのうち建物ごと崩れてしまうのではないかと思うほど、なんだか壁が斜めになっていそうな喫茶店で向かい合ってはハムサンドを食べていた時のことをよく覚えている。
「東京に来れば何にでもなれるかと思ってたけど、平日の昼に高円寺でハムサンドを食べる程度の青春が私には似合ってるかも」
その時に、私ははじめて気が付いた。これが青春なんだ、ということを。
***
私たちが大学三年生になった頃、何度目かわからない地球の危機が訪れていた。
物心ついたころには謎の感染症が流行し、それが落ち着いたかと思えば某国の核兵器が暴発し、地球のどこかが居住不能になった。かと思えばその直後には何か重要な資源が枯渇したらしい。私たちの世代は、何度も地球の危機を目の当たりにしている。
情報に影響されやすい大人たちは、いつも何か騒いでいるけれど、私たちは地球の危機にもすっかり慣れている。いつだって、誰か大人の偉い人が何とかしてくれて、我々庶民はなんだかんだそんなに変わらない生活を続けられているし、これからもきっとそうなるんだと思っていた。
この頃、私たちの高円寺で過ごすコースは決まっていた。
授業を終えて、まずは昼からやっている居酒屋で焼鳥を2本とホッピーだけ頼んでちみちみ飲みながらどうでもいいことを話し、店員の視線がさすがに冷たくなるころに二軒目のご飯がおいしい居酒屋に移動し腹を満たし、暗くなるころに路地裏の立ち飲み屋で満足するまでダラダラ過ごす。そして終バスが無くなる前にそれぞれの家に帰るのだ。
「だからね、こんな時代に将来も何もないじゃん」
よく私たちはそんな話をした。
路地裏の立ち飲み屋――店名は、どうしても思い出せない。いつだって「あそこの路地にある」という場所だけで認識していて、店名では認識していなかったから――のマスターの女性は、酔っ払っている私たちをいつも優しい瞳で見守っていた。
「10年前に就活人気No.1だった会社も情勢が変わってリストラ三昧。だからといって働かずに食っていけるわけでもない」
「そういうことを話していいのは就活をしている人間だけ。君は一体何社にESを出したのさ」
「聞いてくれましたね。昨日2社エントリーしましたよ」
「おお、えらい」
「JAXAと任天堂」
「ふざけてるじゃん」
「ふざけてないし」
マスターの趣味で、飲み屋では音楽も動画もかかっておらず、静かにラジオが流れていた。いつの時代でも、ラジオというものにはコアで熱狂的なファンが付き、無くなることがない。
「飲み過ぎじゃないの、そろそろ帰ったらどう」
マスターは40代くらいに見えた。茶色の柔らかな髪を肩あたりまで伸ばしている。前髪もかなり長く、目元はほとんど見えていない。それで周囲が見えているのか、酒は作れるのか、と一言客によく絡まれているが、そのたびに私と彼女が面倒な客を睨みつけていた。
「え~、やだ!」
「時間を見なさい」
「マスターんち高円寺でしょ、泊めてよ」
「無理。うち狭いんだから」
「え~」
「ほら、バス無くなるよ」
「むう」
彼女は頬を赤く染めながら、アルコールで蕩けた瞳で左腕の腕時計を見る。スマートウォッチでもない、オモチャのようなオレンジ色の腕時計。いつか一緒に商店街の外れを歩いていたときに、「ご自由にお持ちください」と書かれた段ボールに入っていたものだ。電池を入れ替えると問題なく動き出したレトロな玩具のようなそれを彼女はずっと愛用していた。
「わ、ほんとだ。帰ろうか」
「そだね。お会計ください」
マスターがタブレットを操作し会計を出している間に、私たちの背景で流れていた知らない芸人のラジオがぷつりと途切れる。そしてやけに神妙な男の人の声が入ってくる。
「突然ですが、ここで番組を中断し臨時ニュースをお送りします。専門家の調査によると、約3年後に地球に巨大隕石が衝突する可能性が99%であることが判明しました。巨大隕石の大きさは、直径30kmを越えると見られています。現時点ではこの巨大隕石への対処方法について目途がついていないとのことですが、今後各国政府が協力し、この巨大隕石への……」
「お会計、それぞれ3000円ね」
マスターはラジオの声を聞いているのかいないのか、私たちにそう告げた。私たちはそれぞれ決済をすると、その日はそのまま家に帰った。
私たちは、あまりにも世界の危機に慣れていた。
***
その後も、世界は大きく変わらなかった。
なんとなく誰かがどうにかしてくれるんじゃないかと、ぼんやりそんなことを考えていた。そうこうしている間に、SNSでもどこでも隕石のはなしをシリアスに語る人が増えてきた。
この隕石が本当に地球に衝突すれば、人類滅亡は避けられない、のだそうだ。
そう言われても、私たちの日常は変わらなかった。大学に行き、高円寺で飲み、時々就職活動をする。
インターネットの中では、終末を恐れて暴徒化する外国の映像がよく流れていた。しかし、ネットがどんなに世界を狭くしたとはいえ、それはあまりにも他人事で、どこか遠い世界のフィクションにしか見えなかった。しかし、日本は――高円寺は、変わらなかった。
私と彼女も、変わらないままいつものコースを繰り返しながら、それでも着実に変わっていった。
彼女はいやいやながら就活をしてそこそこのIT企業への内定を決め、私は大学院へ進むための院試に合格した。
隕石が地球へ向かっているというニュースをラジオで聞いてから、約1年が経っていた。
***
「なんかさあ、内定式とかやらんらしい」
「え、隕石で?」
「らしい」
「内定式と隕石関係なくない?」
「そんなん知らんし」
「まあそっか。新卒採る会社もだいぶ減ったらしい。院進希望者が増えまくりだって教授言ってた」
「人類滅亡するのに進路とかどうでもよくない?」
「行く先がないと心配なんだよ、人間だから」
「人間だもの」
「みつを」
彼女がホッピーを中に注いでマドラーでかき混ぜるのを、ぼんやりと見ていた。攪拌されていく茶色の液体が、ぐるぐると、酔いかけた脳みそのように回されている。
「……てかさ、申し込む?」
「親は申し込めってうるさい」
「うちも」
「……」
各国の偉い人や、世界中の色んな組織の頭のいい人たちが日々隕石をどうにかするための研究を続けているらしい。粉砕するとか、ひらりマントみたいなやつでひらっとするとか、いろんな案が日々ネットで流れてくる。しかし、それぞれ実現には多大な問題があるらしい。
隕石自体をどうにかするのとは別に、地球に隕石が衝突しても人類を存続させるための方法が様々論じられていた。一番早かったのは、やはりアメリカだ。宇宙衛星に一部の国民を避難させることを決定したが、その「一部」の抽選について喧々諤々、ほぼ内乱のような争いまで起きている。陰謀論者的には、偉い人たちはもう宇宙への避難が内定していて、一般人への避難枠はごくわずか解放されているだけだということだが、そんなの当然だろ、という気しかしない。
宇宙衛星への避難以外にも、地下核シェルターだの海底生活だの、政府や企業がありとあらゆるビジネスを目論んでいる。
人類滅亡ビジネスだ。
「一応さ、親族でお金出しあって核シェルター買ったらしい」
私は氷だけになったグラスから、残ったわずかな液体を口に含む。
「いいじゃん。地元どこだっけ」
「山梨」
「富士のたもとの核シェルターで生き延びる一族、イカすじゃん」
「うるさ」
へらへらと笑う彼女は、あと数ヶ月で社会人になるなんて風にはまるで見えなかった。この街もこの国も地球も、1年後に滅ぶなんて風に見えないけど。
「うちは片親だから無理かな~」
「あー」
「衛星避難も申し込むか悩んでる」
「親想い~」
「親はどうでもいいんだけどさ、宇宙とか行きたくないじゃん。服屋もないし」
「そりゃないよ」
「一生宇宙服? イヤすぎ」
「それはなくとも一生リクスーでしょ、君は」
「うちはオフィスカジュアルなんで」
「一生オフィスカジュアル」
「ギャー」
私はこの時、唐突に気が付いた。青春が終わるって言うのはこういう時のことを言うんだな、って。
でも、そんなのは許せなくて、彼女が真面目そうな顔になったことも許せなくて、「ホッピー中濃いめで」と頼みながら、ふと顔を上げてカウンターの中に向かって声をかけた。
「マスターはどうするの」
マスターは相変わらず前髪で目を隠したまま、私の使い終わったグラスに焼酎をじゃぶじゃぶ注ぐ。
「私? 私はあんたたちみたいに若年層優遇される年でもないし、このまま高円寺で店やれるだけやるつもりよ」
「かっこい~~」
「私も最後のときはここで飲んでて~~」
「若いんだから、できることはやりなさい」
「「は~~~い」」
差し出されたグラスを受け取るときに、確かに違和感を覚えたんだ。その違和感が、思い出せない。
「大丈夫、きっと最後の日もここで飲めるから」
***
結論から言うと、私は大学院へは半年だけ通い、その後は親戚が買った核シェルターへ避難した。彼女は衛星避難を申し込み、見事抽選に通ったらしく3か月だけ社会人をやった後に宇宙へと飛び立っていった。
隕石は着実に地球へ近づいた。
地球へ接近すればするほど対処する策も無くなり、人類はただXデイを待つだけになった。
避難できる人はそれぞれに考え抜いた避難を行い、避難をあきらめた人は思い思いの最後に向けて生活をしていた。
私たちが青春を過ごした高円寺では、街に残った人で終末阿波踊り大会なるやけくそなイベントが行われたらしく、残っていた地元メディアを自称するSNSアカウントが実況をしたりもした。すでに宇宙へ避難した彼女から
「見て、ウケる」
というコメント共にそのSNS投稿のURLが送られてきた。
私たちは地下と宇宙に離れても、しばらくはそんな風につながっていた。
そして、あの夏がやってきて、本当に隕石が地球に衝突した。
核シェルターの分厚い壁越しにも、とてつもない衝撃が伝わってきた。
その日のことは――なんか、いろんな人がそれぞれの語彙力を駆使して記録に残しているだろうし、わざわざ私が書くことでもないか。とにかく、その日がやってきて、地球地表が人間が住み続けられる状態ではなくなった――らしい。
その日からも私たちは生き続けた。
食事をし、排せつをし、子供たちは成長していった。隕石が衝突するとわかってから実際に衝突するまで3年もあったので、政府も様々な対策が出来ていたようで、生活は不自由ながらも生きることにそこまでの苦しみはなかった。
だから、彼女と私が疎遠になっていったのは、隕石が衝突したからとか、人類の過半数が滅亡したからというよりも、単純に大人になっていくにつれて学生時代の友人と疎遠になってしまう、よくある現象に過ぎなかったのかもしれない。
私は地下シェルターの中で大学院でやりたかった研究を少しずつ進め、彼女は宇宙衛星で仕事を割り当てられ、文句を言いながらもただ目の前の生活をすることに必死だった。
あの時は、淡々と生活をしているつもりだったけれど、思い返すとそうでもなかったのかもしれない。無くなってしまった地球の光景をよく夢に見た。大学の学食裏にあるベンチ、一人暮らしのアパートのよくカビが生える風呂場、高円寺駅前のロータリー。そんな、どうでもいい光景の夢ばかり見た。
気が付けば彼女とのやり取りの頻度が減り、数日に1度になり、月に数度になっていった。
あんなに仕事を嫌がっていた彼女は、衛星の中でも責任のある立場になったようで、地球地表の探検をしたり、日本以外の他国の持つ衛星へ飛んだり、ときどき送られてくるメッセージにはそんなことが書かれていた。
「次はオーストラリアの衛星に引っ越すことになった。なんかコアラとかカンガルーとかもいるらしい、ヤバい。なんで日本は狸を衛星に載せなかったんだろ」
「狸かよ」
「狸って日本にしかいなくって、動物園の交換レート高いらしいじゃん」
「地球時代の噂さすがにもう通じないでしょ」
「来年から地球に一瞬住まわされるらしいんだけど…」
「えっ、いけるの?」
「わかんない。なんか調査メンバー選ばれた」
「こわ…」
「隕石当たったところの地球の裏側に数日滞在だって」
「死にそうじゃん」
「いるのって山梨らへんのシェルターだよね? 行けたわ行くわ」
「来なくていいし」
メッセージの頻度は減っていった。
何年ぶりかにふと思い出して誕生日のメッセージを送ろうとしたときに、メッセージは送信できなかった。彼女に何かあったのかもしれない。こんな生活だ。何年も連絡を取り合えていたことが奇跡なのだ。
私はそう思い、彼女とやりとりをした画面をそっと閉じ、すべてのメッセージ履歴をアーカイブの奥へと保存した。
***
だから、高円寺はもうあるはずがないし、高円寺に彼女がいるはずがないのだ。
送られた写真を、改めて机の上に並べる。
古ぼけたアパートの室内、外観、そして高円寺駅前でピースサインをする彼女。
あれから20年が経ち、彼女も43歳になっているはずだ。中年女性になった彼女は、当時の面影を強く残したまま、いかにも高円寺に住む古着好きなおばさんめいた服装でカメラに向かって笑顔を見せている。
手首には、見覚えのある腕時計。あの頃ずっとつけていた、あのオレンジ色の腕時計だろう。けれど、さすがにあれから20年も経ちすっかり色あせていて、ペールオレンジというか、そんな色味になっている。
合成写真だろうか。
当時の写真くらいどこかに残っているだろうし、こんな合成写真を作ることくらい簡単だ。しかし、そんなものを作ってどうなるというんだ。
わけがわからない。
それに、この強烈な既視感はなんだ。
彼女に連絡しようにも、知っている連絡先は不通になってしまっている。
何をどう考えていいかわからずに、とりあえずコーヒーでも飲もうかと椅子から立ち上がる。
その瞬間、PCに新着メールが届く。ポップアップされた通知に記載されていたのは、私とは全く関係ないけれど、あまりにも見覚えがある文字列だった。彼女が所属している日本国衛星の管理事務局から、届いた――
「新規プロジェクトへのご協力へのお願い……?」
***
●●●●様
突然のご連絡、失礼します。
日本国衛星の管理事務局では現在極秘裏にとあるプロジェクトを進めています。
本プロジェクトは、隕石衝突時の高エネルギーによって生じた局所的な「時空の特異点」の調査、および実地検証を目的としています。「時空の特異点」では、その名の通り時空間が歪んでおり、その特異点を通ることで現在とは違う時間と場所へ到達することが可能となるのではないか、と推測されています。「時空の特異点」の詳細な場所等については、プロジェクトメンバー以外への公表は出来かねてしまいますため、詳細についてはお伝え出来ませんことをご了承ください。
本プロジェクトでの実地調査メンバーに、当事務局の××××が志願いたしました……。
***
ああ、そうか。
だからか。
彼女は、あの夏の高円寺に引っ越したんだ。
彼女は「時空の特異点」からあの夏の高円寺へ辿り着いたんだ。
笑顔でピースサインをする彼女の写真を見返す。
高円寺駅の南口。彼女の身体で隠れてしまっているチェーンのアイス屋。この奥にあるのは質屋で、その奥には焼鳥屋。こちらのビルの1階はカフェで、2階は沖縄料理屋だ。この奥は、タピオカ屋が夜アイス屋になり最終的にはケバブ屋になったんだ。この道を私たちはコンビニで買ったハムカツを齧りながら歩き、手相占いを冷やかし、笑いながら歩いたんだ。
なんだ、なんて、なんてズルいんだ。
自分だけ青春を再開するなんて。
あの夏――
もしかして。既視感の正体がとつぜん分かった。
あの店のマスターだ。高円寺でいつも3軒目に訪れていた立ち飲み屋の女マスター、あれは彼女だったんだ。
送られてきた写真の目元を隠してみる。やっぱりだ。彼女は、マスターになるんだ。
それに、そうか。いつかあの店で飲んでいた時に感じた違和感の正体――それはマスターの腕時計だ。彼女の付けているオモチャみたいな腕時計にそっくりだったんだ。
何だ、わかってみれば、そんなことか。
私はコーヒーを入れるのも忘れ、再び椅子に座ると日本国衛星の管理事務局へのメッセージの返信を書き始めた。
日本国衛星
管理事務局様
ご連絡をいただきまして、まことにありがとうございます。
彼女の現在地については、2×××年の東京都高円寺近辺であると思われます。詳細な場所については彼女から送られた写真の画像データを添付いたします。また、商店街の蕎麦屋と帽子屋の間にある路地を入ったところにある立ち飲み屋にて飲食店従業員をしているはずです。
さて、一つ私からもお願いがございます。
「時空の特異点」の実地調査の第二次メンバーの募集はございますでしょうか?
彼女から届いた手紙に書かれていたのは、そのたった一行だけだった。鮮やかな青の紫陽花の書かれた一筆箋に、几帳面な文字が縦に並んでいる。
封筒を探ると、他にも何か入っているようだった。
中身を取り出してみると、写真が三枚入っていた。
一枚目の写真に写っているのは、なんてことのない古ぼけたアパートの室内。
家具の類はまだ何も置かれていない。まるで不動産屋のホームページの紹介画像みたいだ。1LDKだろうか、濃い木目のフローリングの隅に1口コンロしかないキッチンが写っている。
二枚目はアパートの外観。
二階建てのどこにでもありそうな特徴のない白壁のアパート。築数十年は経っているだろう。肝心のアパート名はうまい具合に写っていない。
そして三枚目を取り出すと、くらくらと眩暈がした。
「……高円寺だ」
写真に写っていたのは、高円寺駅だった。JR高円寺駅。オレンジ色の中央線と黄色の総武線が通っている、あの高円寺駅だ。
高円寺駅の南口で、彼女がカメラ目線でピースサインをしている。写真のなかの彼女は最後に会った時から経た年相応に年を取り、微笑んでいる目じりには柔らかなしわが刻まれている。
私はこんな光景を見たことがある、気がする。強烈なデジャヴのようだ。しかし、そんなことあるわけがない。
だって、高円寺駅は、もうないのだ。
私たちがともに青春を過ごしたあの夏に、無くなったはずなのだ。
***
あの頃、私たちは大学生だった。
地方から上京してやってきて、学業もバイトもそこそこに嗜み、夢中になれるものもなく、ただ時間を無為に垂れ流していた。
私が彼女とつるむようになったのに、特別な理由はない。入学式で隣になっただけの友達候補たちが、みなサークルやバイトやらのコミュニティに居場所を見出し、友達から続々と脱落していき、残ったのが私と彼女だけだったのだ。
大学を積極的にさぼるほどのモチベーションもない私たちは、よく大学の終わりに高円寺を訪れた。
二人の家に程よく近く、程よく遠く、キラキラしすぎていない中央線らしい気怠い空気が肌に合った。
時に古着屋を冷やかし、時に我々が生まれる前からある喫茶店で好きでもないコーヒーを飲み、二〇歳を越えれば居酒屋というものに突撃し、街中に友達でも知り合いでもないが見たことのある人がぽつぽつ出来て、これが大学生なんだと思っていた。
彼女とそのうち建物ごと崩れてしまうのではないかと思うほど、なんだか壁が斜めになっていそうな喫茶店で向かい合ってはハムサンドを食べていた時のことをよく覚えている。
「東京に来れば何にでもなれるかと思ってたけど、平日の昼に高円寺でハムサンドを食べる程度の青春が私には似合ってるかも」
その時に、私ははじめて気が付いた。これが青春なんだ、ということを。
***
私たちが大学三年生になった頃、何度目かわからない地球の危機が訪れていた。
物心ついたころには謎の感染症が流行し、それが落ち着いたかと思えば某国の核兵器が暴発し、地球のどこかが居住不能になった。かと思えばその直後には何か重要な資源が枯渇したらしい。私たちの世代は、何度も地球の危機を目の当たりにしている。
情報に影響されやすい大人たちは、いつも何か騒いでいるけれど、私たちは地球の危機にもすっかり慣れている。いつだって、誰か大人の偉い人が何とかしてくれて、我々庶民はなんだかんだそんなに変わらない生活を続けられているし、これからもきっとそうなるんだと思っていた。
この頃、私たちの高円寺で過ごすコースは決まっていた。
授業を終えて、まずは昼からやっている居酒屋で焼鳥を2本とホッピーだけ頼んでちみちみ飲みながらどうでもいいことを話し、店員の視線がさすがに冷たくなるころに二軒目のご飯がおいしい居酒屋に移動し腹を満たし、暗くなるころに路地裏の立ち飲み屋で満足するまでダラダラ過ごす。そして終バスが無くなる前にそれぞれの家に帰るのだ。
「だからね、こんな時代に将来も何もないじゃん」
よく私たちはそんな話をした。
路地裏の立ち飲み屋――店名は、どうしても思い出せない。いつだって「あそこの路地にある」という場所だけで認識していて、店名では認識していなかったから――のマスターの女性は、酔っ払っている私たちをいつも優しい瞳で見守っていた。
「10年前に就活人気No.1だった会社も情勢が変わってリストラ三昧。だからといって働かずに食っていけるわけでもない」
「そういうことを話していいのは就活をしている人間だけ。君は一体何社にESを出したのさ」
「聞いてくれましたね。昨日2社エントリーしましたよ」
「おお、えらい」
「JAXAと任天堂」
「ふざけてるじゃん」
「ふざけてないし」
マスターの趣味で、飲み屋では音楽も動画もかかっておらず、静かにラジオが流れていた。いつの時代でも、ラジオというものにはコアで熱狂的なファンが付き、無くなることがない。
「飲み過ぎじゃないの、そろそろ帰ったらどう」
マスターは40代くらいに見えた。茶色の柔らかな髪を肩あたりまで伸ばしている。前髪もかなり長く、目元はほとんど見えていない。それで周囲が見えているのか、酒は作れるのか、と一言客によく絡まれているが、そのたびに私と彼女が面倒な客を睨みつけていた。
「え~、やだ!」
「時間を見なさい」
「マスターんち高円寺でしょ、泊めてよ」
「無理。うち狭いんだから」
「え~」
「ほら、バス無くなるよ」
「むう」
彼女は頬を赤く染めながら、アルコールで蕩けた瞳で左腕の腕時計を見る。スマートウォッチでもない、オモチャのようなオレンジ色の腕時計。いつか一緒に商店街の外れを歩いていたときに、「ご自由にお持ちください」と書かれた段ボールに入っていたものだ。電池を入れ替えると問題なく動き出したレトロな玩具のようなそれを彼女はずっと愛用していた。
「わ、ほんとだ。帰ろうか」
「そだね。お会計ください」
マスターがタブレットを操作し会計を出している間に、私たちの背景で流れていた知らない芸人のラジオがぷつりと途切れる。そしてやけに神妙な男の人の声が入ってくる。
「突然ですが、ここで番組を中断し臨時ニュースをお送りします。専門家の調査によると、約3年後に地球に巨大隕石が衝突する可能性が99%であることが判明しました。巨大隕石の大きさは、直径30kmを越えると見られています。現時点ではこの巨大隕石への対処方法について目途がついていないとのことですが、今後各国政府が協力し、この巨大隕石への……」
「お会計、それぞれ3000円ね」
マスターはラジオの声を聞いているのかいないのか、私たちにそう告げた。私たちはそれぞれ決済をすると、その日はそのまま家に帰った。
私たちは、あまりにも世界の危機に慣れていた。
***
その後も、世界は大きく変わらなかった。
なんとなく誰かがどうにかしてくれるんじゃないかと、ぼんやりそんなことを考えていた。そうこうしている間に、SNSでもどこでも隕石のはなしをシリアスに語る人が増えてきた。
この隕石が本当に地球に衝突すれば、人類滅亡は避けられない、のだそうだ。
そう言われても、私たちの日常は変わらなかった。大学に行き、高円寺で飲み、時々就職活動をする。
インターネットの中では、終末を恐れて暴徒化する外国の映像がよく流れていた。しかし、ネットがどんなに世界を狭くしたとはいえ、それはあまりにも他人事で、どこか遠い世界のフィクションにしか見えなかった。しかし、日本は――高円寺は、変わらなかった。
私と彼女も、変わらないままいつものコースを繰り返しながら、それでも着実に変わっていった。
彼女はいやいやながら就活をしてそこそこのIT企業への内定を決め、私は大学院へ進むための院試に合格した。
隕石が地球へ向かっているというニュースをラジオで聞いてから、約1年が経っていた。
***
「なんかさあ、内定式とかやらんらしい」
「え、隕石で?」
「らしい」
「内定式と隕石関係なくない?」
「そんなん知らんし」
「まあそっか。新卒採る会社もだいぶ減ったらしい。院進希望者が増えまくりだって教授言ってた」
「人類滅亡するのに進路とかどうでもよくない?」
「行く先がないと心配なんだよ、人間だから」
「人間だもの」
「みつを」
彼女がホッピーを中に注いでマドラーでかき混ぜるのを、ぼんやりと見ていた。攪拌されていく茶色の液体が、ぐるぐると、酔いかけた脳みそのように回されている。
「……てかさ、申し込む?」
「親は申し込めってうるさい」
「うちも」
「……」
各国の偉い人や、世界中の色んな組織の頭のいい人たちが日々隕石をどうにかするための研究を続けているらしい。粉砕するとか、ひらりマントみたいなやつでひらっとするとか、いろんな案が日々ネットで流れてくる。しかし、それぞれ実現には多大な問題があるらしい。
隕石自体をどうにかするのとは別に、地球に隕石が衝突しても人類を存続させるための方法が様々論じられていた。一番早かったのは、やはりアメリカだ。宇宙衛星に一部の国民を避難させることを決定したが、その「一部」の抽選について喧々諤々、ほぼ内乱のような争いまで起きている。陰謀論者的には、偉い人たちはもう宇宙への避難が内定していて、一般人への避難枠はごくわずか解放されているだけだということだが、そんなの当然だろ、という気しかしない。
宇宙衛星への避難以外にも、地下核シェルターだの海底生活だの、政府や企業がありとあらゆるビジネスを目論んでいる。
人類滅亡ビジネスだ。
「一応さ、親族でお金出しあって核シェルター買ったらしい」
私は氷だけになったグラスから、残ったわずかな液体を口に含む。
「いいじゃん。地元どこだっけ」
「山梨」
「富士のたもとの核シェルターで生き延びる一族、イカすじゃん」
「うるさ」
へらへらと笑う彼女は、あと数ヶ月で社会人になるなんて風にはまるで見えなかった。この街もこの国も地球も、1年後に滅ぶなんて風に見えないけど。
「うちは片親だから無理かな~」
「あー」
「衛星避難も申し込むか悩んでる」
「親想い~」
「親はどうでもいいんだけどさ、宇宙とか行きたくないじゃん。服屋もないし」
「そりゃないよ」
「一生宇宙服? イヤすぎ」
「それはなくとも一生リクスーでしょ、君は」
「うちはオフィスカジュアルなんで」
「一生オフィスカジュアル」
「ギャー」
私はこの時、唐突に気が付いた。青春が終わるって言うのはこういう時のことを言うんだな、って。
でも、そんなのは許せなくて、彼女が真面目そうな顔になったことも許せなくて、「ホッピー中濃いめで」と頼みながら、ふと顔を上げてカウンターの中に向かって声をかけた。
「マスターはどうするの」
マスターは相変わらず前髪で目を隠したまま、私の使い終わったグラスに焼酎をじゃぶじゃぶ注ぐ。
「私? 私はあんたたちみたいに若年層優遇される年でもないし、このまま高円寺で店やれるだけやるつもりよ」
「かっこい~~」
「私も最後のときはここで飲んでて~~」
「若いんだから、できることはやりなさい」
「「は~~~い」」
差し出されたグラスを受け取るときに、確かに違和感を覚えたんだ。その違和感が、思い出せない。
「大丈夫、きっと最後の日もここで飲めるから」
***
結論から言うと、私は大学院へは半年だけ通い、その後は親戚が買った核シェルターへ避難した。彼女は衛星避難を申し込み、見事抽選に通ったらしく3か月だけ社会人をやった後に宇宙へと飛び立っていった。
隕石は着実に地球へ近づいた。
地球へ接近すればするほど対処する策も無くなり、人類はただXデイを待つだけになった。
避難できる人はそれぞれに考え抜いた避難を行い、避難をあきらめた人は思い思いの最後に向けて生活をしていた。
私たちが青春を過ごした高円寺では、街に残った人で終末阿波踊り大会なるやけくそなイベントが行われたらしく、残っていた地元メディアを自称するSNSアカウントが実況をしたりもした。すでに宇宙へ避難した彼女から
「見て、ウケる」
というコメント共にそのSNS投稿のURLが送られてきた。
私たちは地下と宇宙に離れても、しばらくはそんな風につながっていた。
そして、あの夏がやってきて、本当に隕石が地球に衝突した。
核シェルターの分厚い壁越しにも、とてつもない衝撃が伝わってきた。
その日のことは――なんか、いろんな人がそれぞれの語彙力を駆使して記録に残しているだろうし、わざわざ私が書くことでもないか。とにかく、その日がやってきて、地球地表が人間が住み続けられる状態ではなくなった――らしい。
その日からも私たちは生き続けた。
食事をし、排せつをし、子供たちは成長していった。隕石が衝突するとわかってから実際に衝突するまで3年もあったので、政府も様々な対策が出来ていたようで、生活は不自由ながらも生きることにそこまでの苦しみはなかった。
だから、彼女と私が疎遠になっていったのは、隕石が衝突したからとか、人類の過半数が滅亡したからというよりも、単純に大人になっていくにつれて学生時代の友人と疎遠になってしまう、よくある現象に過ぎなかったのかもしれない。
私は地下シェルターの中で大学院でやりたかった研究を少しずつ進め、彼女は宇宙衛星で仕事を割り当てられ、文句を言いながらもただ目の前の生活をすることに必死だった。
あの時は、淡々と生活をしているつもりだったけれど、思い返すとそうでもなかったのかもしれない。無くなってしまった地球の光景をよく夢に見た。大学の学食裏にあるベンチ、一人暮らしのアパートのよくカビが生える風呂場、高円寺駅前のロータリー。そんな、どうでもいい光景の夢ばかり見た。
気が付けば彼女とのやり取りの頻度が減り、数日に1度になり、月に数度になっていった。
あんなに仕事を嫌がっていた彼女は、衛星の中でも責任のある立場になったようで、地球地表の探検をしたり、日本以外の他国の持つ衛星へ飛んだり、ときどき送られてくるメッセージにはそんなことが書かれていた。
「次はオーストラリアの衛星に引っ越すことになった。なんかコアラとかカンガルーとかもいるらしい、ヤバい。なんで日本は狸を衛星に載せなかったんだろ」
「狸かよ」
「狸って日本にしかいなくって、動物園の交換レート高いらしいじゃん」
「地球時代の噂さすがにもう通じないでしょ」
「来年から地球に一瞬住まわされるらしいんだけど…」
「えっ、いけるの?」
「わかんない。なんか調査メンバー選ばれた」
「こわ…」
「隕石当たったところの地球の裏側に数日滞在だって」
「死にそうじゃん」
「いるのって山梨らへんのシェルターだよね? 行けたわ行くわ」
「来なくていいし」
メッセージの頻度は減っていった。
何年ぶりかにふと思い出して誕生日のメッセージを送ろうとしたときに、メッセージは送信できなかった。彼女に何かあったのかもしれない。こんな生活だ。何年も連絡を取り合えていたことが奇跡なのだ。
私はそう思い、彼女とやりとりをした画面をそっと閉じ、すべてのメッセージ履歴をアーカイブの奥へと保存した。
***
だから、高円寺はもうあるはずがないし、高円寺に彼女がいるはずがないのだ。
送られた写真を、改めて机の上に並べる。
古ぼけたアパートの室内、外観、そして高円寺駅前でピースサインをする彼女。
あれから20年が経ち、彼女も43歳になっているはずだ。中年女性になった彼女は、当時の面影を強く残したまま、いかにも高円寺に住む古着好きなおばさんめいた服装でカメラに向かって笑顔を見せている。
手首には、見覚えのある腕時計。あの頃ずっとつけていた、あのオレンジ色の腕時計だろう。けれど、さすがにあれから20年も経ちすっかり色あせていて、ペールオレンジというか、そんな色味になっている。
合成写真だろうか。
当時の写真くらいどこかに残っているだろうし、こんな合成写真を作ることくらい簡単だ。しかし、そんなものを作ってどうなるというんだ。
わけがわからない。
それに、この強烈な既視感はなんだ。
彼女に連絡しようにも、知っている連絡先は不通になってしまっている。
何をどう考えていいかわからずに、とりあえずコーヒーでも飲もうかと椅子から立ち上がる。
その瞬間、PCに新着メールが届く。ポップアップされた通知に記載されていたのは、私とは全く関係ないけれど、あまりにも見覚えがある文字列だった。彼女が所属している日本国衛星の管理事務局から、届いた――
「新規プロジェクトへのご協力へのお願い……?」
***
●●●●様
突然のご連絡、失礼します。
日本国衛星の管理事務局では現在極秘裏にとあるプロジェクトを進めています。
本プロジェクトは、隕石衝突時の高エネルギーによって生じた局所的な「時空の特異点」の調査、および実地検証を目的としています。「時空の特異点」では、その名の通り時空間が歪んでおり、その特異点を通ることで現在とは違う時間と場所へ到達することが可能となるのではないか、と推測されています。「時空の特異点」の詳細な場所等については、プロジェクトメンバー以外への公表は出来かねてしまいますため、詳細についてはお伝え出来ませんことをご了承ください。
本プロジェクトでの実地調査メンバーに、当事務局の××××が志願いたしました……。
***
ああ、そうか。
だからか。
彼女は、あの夏の高円寺に引っ越したんだ。
彼女は「時空の特異点」からあの夏の高円寺へ辿り着いたんだ。
笑顔でピースサインをする彼女の写真を見返す。
高円寺駅の南口。彼女の身体で隠れてしまっているチェーンのアイス屋。この奥にあるのは質屋で、その奥には焼鳥屋。こちらのビルの1階はカフェで、2階は沖縄料理屋だ。この奥は、タピオカ屋が夜アイス屋になり最終的にはケバブ屋になったんだ。この道を私たちはコンビニで買ったハムカツを齧りながら歩き、手相占いを冷やかし、笑いながら歩いたんだ。
なんだ、なんて、なんてズルいんだ。
自分だけ青春を再開するなんて。
あの夏――
もしかして。既視感の正体がとつぜん分かった。
あの店のマスターだ。高円寺でいつも3軒目に訪れていた立ち飲み屋の女マスター、あれは彼女だったんだ。
送られてきた写真の目元を隠してみる。やっぱりだ。彼女は、マスターになるんだ。
それに、そうか。いつかあの店で飲んでいた時に感じた違和感の正体――それはマスターの腕時計だ。彼女の付けているオモチャみたいな腕時計にそっくりだったんだ。
何だ、わかってみれば、そんなことか。
私はコーヒーを入れるのも忘れ、再び椅子に座ると日本国衛星の管理事務局へのメッセージの返信を書き始めた。
日本国衛星
管理事務局様
ご連絡をいただきまして、まことにありがとうございます。
彼女の現在地については、2×××年の東京都高円寺近辺であると思われます。詳細な場所については彼女から送られた写真の画像データを添付いたします。また、商店街の蕎麦屋と帽子屋の間にある路地を入ったところにある立ち飲み屋にて飲食店従業員をしているはずです。
さて、一つ私からもお願いがございます。
「時空の特異点」の実地調査の第二次メンバーの募集はございますでしょうか?



