あと1点の俺たちは。


あの日を境に、俺は陸の隣を常にキープするようになった。どんな時も隣に並んで些細なことでも気がつけるように、助けられるように陸から離れないでいた。肩がぶつかりそうなほど近くで歩いたり、膝の上に乗せたりした。それだけではなくて、陸が俺にだけでも甘えられるように手を尽くした。小さな事でも零さず褒めたり、さりげなく頭を撫でてやったり。そうしていくうちに陸にも変化が表れ始めた。これまでは俺の方から隣に来るように行ったりスキンシップを沢山とったりしていたが、何も言わなくても陸の方から隣に来たり、俺にやたらと褒められたがったり、くっついてきたりすることが増えた。
中学生という難しい年頃は、そういう他人の距離感にやたらと敏感で、面白がったりする。しかし、幸いにも俺と陸は物心ついた時から二人で居る印象が強かったのか、周りも「仲良いな」「さすが幼馴染だな!」くらいにしか思っていなかった。代わりに俺と陸は合わせて【幼馴染ーズ】というダサいあだ名がつけられた。
そう呼ばれるのも満更でもなかった。陸も嫌そうな顔も無理に笑っているような感じもなかった。それを見て俺は何故かほっとしたのを覚えている。この安堵の意味を俺は後に思い知らされることになるがこの時の俺はまだ何も知る由もなかった。
 俺と陸の近すぎる距離感は季節を問わず、暑い夏でも2人ピッタリくっついて行動を共にした。食べ物のひとくち交換も間接キスも当たり前でなんの疑問にも思わず日常茶飯事だった。距離感がさらに近くなりスキンシップが増えたと同時に、互いの家に泊まりに行く回数も増えていった。部活が終わってそのまま俺が陸の家に泊まったり、オフの日に遊びに行ってそのまま泊まったり、テスト勉強を一緒にした流れでそのまま泊まったり。おかげで四六時中と言ってもいいほど陸と一緒に居られるようになって俺は嬉しかった。最初は別々で寝ていたのが段々と距離が近くなり、最終的には陸の方から一緒に寝ようと言ってきた。1つのベッドで向かい合って寝る夜が増えていく。顔が近くて妙に恥ずかしさがあった日々も回数を重ねていくうちに慣れていた。どれだけ距離が近くても、俺たちはこれを「幼馴染だから」「心を許した親友だから」「当たり前だよな」と笑いあった。親友としての距離感だと信じて疑わなかった。
俺の過保護も陸との近さも、友達だから唯一の親友だから何もおかしなことはない。これからも俺と陸は、幼馴染で唯一無二の仲のいい親友同士——のはずだった。変わることなどないと思っていたのに——。