クラブ活動の練習は、思っていた何倍もきつくて【かっこいい】とはかけ離れていた。
持久力を付けるためにひたすらランニング。瞬間的な速さを身に付けるため短距離走、軸を安定させるための体幹トレーニング。やっと野球っぽい練習ができると思ったら、球拾いだけだったり…。野球の練習と聞いて、思いつくようなバッティングやキャッチボールなんかはほんとにたまにしかなかった。
『こんなにきついなんて聞いてねぇよ~!な~?海~!』
ある日の練習終わりの帰り道大きく伸びをしながら陸が叫んだ。
「だな…。ちょっと甘く考えすぎてたかもな…」
陸に同調をした。きっとこの同調は、陸がやめようと言い出すのを期待していたからしたのかもしれない。けれど、俺の浅はかな期待とは裏腹に、陸が続けたのは意外な言葉だった。
『でも、なんか楽しーよな!』
「…え?」
楽しい?あの練習のどこが?そう思ったが、陸の瞳があまりにも輝いて、そして本当に楽しそうに言うから、何も言えなかった。
「走ってばっかなのに?」
ようやく言えたのは反論にしては弱すぎる一言。
『まぁ、そうなんだけどさ~、必死に走って汗流すのがなんか楽しくなってきたって言うか?』うまく言えないけど、そんな感じなの!と陸は笑った。
『それに、きつくても、隣には海がいるからさ!』
陸が俺を指さした。
「それは同感。」
『どうかん?』
「俺も同じってこと。確かに練習はきついけど、陸がいるから。こうやって愚痴も言い合えるしな。」
にっと笑って言うと、陸はさらに嬉しそうに笑った。
練習はきつくて、思い描いていたようなものなんかでは決してなかったけど、陸がいるなら、陸が続けたいと言うのなら、と辞めたいと思うことはなくなった。
練習が楽しいと言っていた陸はみるみるうちにピッチングの力をつけていった。そんな陸に負けないように置いて行かれないように必死に練習を重ねるうちに、バッターとして試合を任せられるところまで実力をつけることができた。そうして、俺と陸は野球クラブで期待のバッターとピッチャーになった。
