あと1点の俺たちは。

陸と仲良くなったきっかけは、本当に些細なことだったと思う。
小学生に上がって間もない春。人と話すことが苦手で周りに馴染めず、集団下校の最後尾を一人で歩く俺に、声を掛けてきたのが陸だった。話してみると、陸はとても明るく優しくて、とても話しやすかった。それに、陸は、俺がどんなに素っ気ない返事をしてもいつも笑顔で話してくれた。そんな陸に俺は、いつの間にか心を開いた。
聞けば、陸の家は俺の家のすぐ近くにあるらしい。そのことが分かってからは距離を縮めるのに時間はいらなかった。登下校はいつも一緒、お互いの家だって数え切れないほど遊びに行ったし、泊まったりもした。陸の家族とは家族ぐるみの付き合いで、最早、家族同然だった。
友達と呼べる相手が陸しか居なかった俺には、何をするにも全て、陸が中心になっていた。野球を始めたのも、陸に誘われたのがきっかけだった。
 小学2年の夏休み。いつものように陸と二人で宿題をしていた時のこと。
『海~』
「何」
『俺さぁ、野球クラブ入ろうと思うんだよね』
「え?」
あまりに急な話で驚いたのを今でも覚えている。その頃の俺らのクラスではクラブ活動に参加することがある種のステータスとされていたことを後になって気が付いた。
「なんで急に…。てか、なんで野球?」
『特に理由はねぇけど、なんかかっけーじゃん?と思って!』
野球がかっこいいという認識は当時もそして今もあまりないが、陸が言うならそうだろうとその時の俺も思ったに違いない。
さらに、陸は続けて言った。
『海も一緒に入ろうぜ!』
この一言が俺の、俺と陸の野球人生の始まり。