【青柳side】
「あーかわいい…。」
独り言を漏らしながらスマホの画面を眺める。
今の俺はどこの誰が見たとしても引くぐらいニヤニヤしているだろう。こんな顔、春野には見せれない。
ニヤニヤを向けられているスマホの画面には、笑顔の春野が映っている。
画面をスライドすると口にクリームをつけた春野、映画を見て泣きそうになっている春野など、初めて見る表情の春野が表示される。
「あの時からは想像できないな…。」
***
春野の第一印象は最悪だった。
「期末考査の結果返すぞー。出席番号順で来い。青柳。」
担任から成績表を受け取り、自席に座ってから学年順位を確認する。
「今回は…また二位か」
「青柳結果どう…って学年二位じゃん!お前勉強もできるもんなー。羨ましいぜ…。」
同じバスケ部の新井が悪気がなさそうにそんなことを言ってくるが、今の俺には地雷でしかない。
俺は幼い頃から要領がいい方だと自覚していた。
運動は上手い人のプレーを見て真似すればすぐできたし、勉強だって、真面目に授業を聞いていれば血の滲む努力なんてしなくても一番を取れた。
高校に入ってからもそうだと思っていたのに、高校最初の中間考査の結果は二位で、どこかの誰かにあっさりと一番の座を奪われてしまった。
前回はたまたま俺の調子が良くなくて二位だったと思っていたが、今回の結果で自分より実力があるやつが一人いることが確定してしまった。
「くそ…。」
完全に俺の一方的な妬みだったが、今まで感じてこなかった悔しさが渦巻く。
***
「青柳ー、この間の小テストの結果廊下に張り出されてるらしいから見に行こうぜ。」
休み時間、新井が元気な声で呼んでくるため素直について行く。
「俺名前載ってすらないわー…。」
廊下には上位の名前だけが張り出されていて、俺の名前は上から二番目にあった。
またしても二位だ。
一位は隣のクラスの“春野、凛…”
「なぁ新井、春野凛って知ってるか?」
「うーん名前はどこかで…ああ!こないだ生徒会に立候補してた奴だ!ほら、そこにポースター貼ってある。」
「ふーん…。皆さんの見本になれるように頑張ります…。」
ポスターにかかれた文字からは真面目さがにじみ出ているが、貼られている写真には優しい笑顔を浮かべている春野凛が写っていた。
恐らく定期考査でいつも一位を取っているのは春野凛なのだろう。
「どうした青柳、顔怖いぞ。」
「…なんでもない。」
ぼんやりと想像していたライバルの名前と顔が分かり、負の感情は更に勢いを増して渦巻いていった。
***
昼ご飯を食べたあと、少し一人になりたくて屋上へと向かかう。屋上にはいつも人がいなくて、つきまとってくる女子達もいないため気分を入れ換えるには最適な場所だ。
「はぁ五時間目は体育館か、だるいな…」
屋上へと向かう階段を登り終え、屋上へとつながる扉を開けると風が吹いて髪を揺らす。
「うわっ」
景色を見たくて柵へ向かおうと一歩目を踏み出すが、視界の端に何か黒い物体をとらえ顔を物体の方に向ける。
「ひ、人?」
どうやら黒い物体は学ランを着て体育座りをしてうつむいている生徒のようだ。
「どうした?保健室行くか…?」
恐る恐る声をかけてみると、生徒がゆっくりとこちらを向くて口を開く。
「いや、この後生徒会選挙があるから…大丈夫…。」
そう言っているが、ぎゅっと袖に爪が食い込んでいて大丈夫そうではない。
この顔何処かで見たような…
隙間から見えるネクタイは俺と同じ色をしていて、同じ一年生だということはわかる。
生徒会といえば春野凛…そうだ春野凛だ。
目の前の春野はとても緊張している様子で、ポスターの写真と随分と印象が違い気が付かなかった。
それにしても緊張しすぎじゃないか?いくら優秀だからといっても、人前に出るのはまた話が別なのだろうか。
「緊張しないでいいだろ。お前はすごいんだから。」
無意識に口から出た言葉だったが、本心だった。
俺より優秀なやつが自信がなさそうにしてもらっちゃ困る。
いつも弟にしている癖で頭にぽんと手を置くと、春野は抱えた足の中に顔をうずめてしまった。
「え、どういう反応?」
余程頭を触られたのが嫌だったのか、声をかけてもそのままぴくりともしない。
これはお前がどっかに行けという意思表示なのか?
「じゃあ…生徒会選挙頑張って。」
石と化した春野と二人きりは気まずくて、一応応援の言葉を残してから体育館へと向かった。
***
春野と屋上で初めて喋った日から、よく目が合うようになった。
視線を感じたほうを向くと大体春野が俺のことを見ていて、目が合ったと思うとすぐに顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。
それは今まで女子に向けられてきたものと同じで、
ああ、俺のことが好きなんだなとすぐわかった。
最初はその状況に優越感を感じていた。自分より優れている人が自分のことが好きだと思うと、妬みの気持ちも薄れたからだ。
ただ、視線を感じないときに春野を見てみると、先生からの頼みごとを快く了承していたり、特別仲がいいわけでもないクラスメイトに勉強を教えていたりと、いつも隙がなく、まさに誰もが憧れるような人間だった。
初めて春野と喋ったあとに行われた生徒会選挙でもそうだった。
屋上ではあんなに緊張していて、自分の名前すらも言えないのではないかと心配したが、舞台に上がった春野はポスターと同じ笑顔を浮かべながら、完璧な演説をやりきった。
普段の春野しか知らない人から見れば、春野はまさに完璧な理想の人物だろう。
しかし、俺は屋上で緊張しきっている春野を見ているため、春野は理想を演じていること、そしてそれを保つ為にとてつもない努力をしている事を知っている。何が春野をそうさせるのかはわからないが、とにかく言えることは、大した努力もしていない自分が春野を妬んでいたのはとても恥ずかしいことだったということだ。
「はは、かわい…。」
誰もが憧れる春野は俺と目が合ったときだけ、顔を赤くして隙を見せる。
本人は隠せてるつもりなのかもしれないけど、俺のことが好きってバレバレだ。
そんな春野に次第と目を奪われ、春野のことがどんどん愛おしくなっていった。
屋上の時のように、俺にだけ本当の春野を見せてほしい。
その気持ちがどんどん膨らんでいって、自分でも引くが、春野の近くにいられるようにと、二年生になってから生徒会に入り副会長になった。
「なんでそんなに俺に優しくしてくれるの…?」
春野にそう聞かれたとき正直どう答えていいか分からなかった。
俺はなんでこんなに春野に執着しているんだろうか。
俺は…
「春野のことが好きだから。」
そうか、俺は春野のことが好きだったのか。
自分の気持ちを口にした後に納得をした。
春野を見ると今まで以上に顔を真っ赤にして目を見開いていた。
俺にしか見せないその顔が大好きだ。
春野に俺のことをどう思ってるか聞いてみると好きじゃないなんて言ってきたが、完全に後悔が顔に出ている。
やっぱりかわいい。もっと春野のことを知りたい、この世の春野を苦しめるものすべてから守りたい。
今は素直になれないとしても、春野は俺のことが好きなんだから、ゆっくり俺から逃げられないようにすればいい。
これから時間をかけて俺のこと好きって言わせるから。
「覚悟、しててね。」
「あーかわいい…。」
独り言を漏らしながらスマホの画面を眺める。
今の俺はどこの誰が見たとしても引くぐらいニヤニヤしているだろう。こんな顔、春野には見せれない。
ニヤニヤを向けられているスマホの画面には、笑顔の春野が映っている。
画面をスライドすると口にクリームをつけた春野、映画を見て泣きそうになっている春野など、初めて見る表情の春野が表示される。
「あの時からは想像できないな…。」
***
春野の第一印象は最悪だった。
「期末考査の結果返すぞー。出席番号順で来い。青柳。」
担任から成績表を受け取り、自席に座ってから学年順位を確認する。
「今回は…また二位か」
「青柳結果どう…って学年二位じゃん!お前勉強もできるもんなー。羨ましいぜ…。」
同じバスケ部の新井が悪気がなさそうにそんなことを言ってくるが、今の俺には地雷でしかない。
俺は幼い頃から要領がいい方だと自覚していた。
運動は上手い人のプレーを見て真似すればすぐできたし、勉強だって、真面目に授業を聞いていれば血の滲む努力なんてしなくても一番を取れた。
高校に入ってからもそうだと思っていたのに、高校最初の中間考査の結果は二位で、どこかの誰かにあっさりと一番の座を奪われてしまった。
前回はたまたま俺の調子が良くなくて二位だったと思っていたが、今回の結果で自分より実力があるやつが一人いることが確定してしまった。
「くそ…。」
完全に俺の一方的な妬みだったが、今まで感じてこなかった悔しさが渦巻く。
***
「青柳ー、この間の小テストの結果廊下に張り出されてるらしいから見に行こうぜ。」
休み時間、新井が元気な声で呼んでくるため素直について行く。
「俺名前載ってすらないわー…。」
廊下には上位の名前だけが張り出されていて、俺の名前は上から二番目にあった。
またしても二位だ。
一位は隣のクラスの“春野、凛…”
「なぁ新井、春野凛って知ってるか?」
「うーん名前はどこかで…ああ!こないだ生徒会に立候補してた奴だ!ほら、そこにポースター貼ってある。」
「ふーん…。皆さんの見本になれるように頑張ります…。」
ポスターにかかれた文字からは真面目さがにじみ出ているが、貼られている写真には優しい笑顔を浮かべている春野凛が写っていた。
恐らく定期考査でいつも一位を取っているのは春野凛なのだろう。
「どうした青柳、顔怖いぞ。」
「…なんでもない。」
ぼんやりと想像していたライバルの名前と顔が分かり、負の感情は更に勢いを増して渦巻いていった。
***
昼ご飯を食べたあと、少し一人になりたくて屋上へと向かかう。屋上にはいつも人がいなくて、つきまとってくる女子達もいないため気分を入れ換えるには最適な場所だ。
「はぁ五時間目は体育館か、だるいな…」
屋上へと向かう階段を登り終え、屋上へとつながる扉を開けると風が吹いて髪を揺らす。
「うわっ」
景色を見たくて柵へ向かおうと一歩目を踏み出すが、視界の端に何か黒い物体をとらえ顔を物体の方に向ける。
「ひ、人?」
どうやら黒い物体は学ランを着て体育座りをしてうつむいている生徒のようだ。
「どうした?保健室行くか…?」
恐る恐る声をかけてみると、生徒がゆっくりとこちらを向くて口を開く。
「いや、この後生徒会選挙があるから…大丈夫…。」
そう言っているが、ぎゅっと袖に爪が食い込んでいて大丈夫そうではない。
この顔何処かで見たような…
隙間から見えるネクタイは俺と同じ色をしていて、同じ一年生だということはわかる。
生徒会といえば春野凛…そうだ春野凛だ。
目の前の春野はとても緊張している様子で、ポスターの写真と随分と印象が違い気が付かなかった。
それにしても緊張しすぎじゃないか?いくら優秀だからといっても、人前に出るのはまた話が別なのだろうか。
「緊張しないでいいだろ。お前はすごいんだから。」
無意識に口から出た言葉だったが、本心だった。
俺より優秀なやつが自信がなさそうにしてもらっちゃ困る。
いつも弟にしている癖で頭にぽんと手を置くと、春野は抱えた足の中に顔をうずめてしまった。
「え、どういう反応?」
余程頭を触られたのが嫌だったのか、声をかけてもそのままぴくりともしない。
これはお前がどっかに行けという意思表示なのか?
「じゃあ…生徒会選挙頑張って。」
石と化した春野と二人きりは気まずくて、一応応援の言葉を残してから体育館へと向かった。
***
春野と屋上で初めて喋った日から、よく目が合うようになった。
視線を感じたほうを向くと大体春野が俺のことを見ていて、目が合ったと思うとすぐに顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。
それは今まで女子に向けられてきたものと同じで、
ああ、俺のことが好きなんだなとすぐわかった。
最初はその状況に優越感を感じていた。自分より優れている人が自分のことが好きだと思うと、妬みの気持ちも薄れたからだ。
ただ、視線を感じないときに春野を見てみると、先生からの頼みごとを快く了承していたり、特別仲がいいわけでもないクラスメイトに勉強を教えていたりと、いつも隙がなく、まさに誰もが憧れるような人間だった。
初めて春野と喋ったあとに行われた生徒会選挙でもそうだった。
屋上ではあんなに緊張していて、自分の名前すらも言えないのではないかと心配したが、舞台に上がった春野はポスターと同じ笑顔を浮かべながら、完璧な演説をやりきった。
普段の春野しか知らない人から見れば、春野はまさに完璧な理想の人物だろう。
しかし、俺は屋上で緊張しきっている春野を見ているため、春野は理想を演じていること、そしてそれを保つ為にとてつもない努力をしている事を知っている。何が春野をそうさせるのかはわからないが、とにかく言えることは、大した努力もしていない自分が春野を妬んでいたのはとても恥ずかしいことだったということだ。
「はは、かわい…。」
誰もが憧れる春野は俺と目が合ったときだけ、顔を赤くして隙を見せる。
本人は隠せてるつもりなのかもしれないけど、俺のことが好きってバレバレだ。
そんな春野に次第と目を奪われ、春野のことがどんどん愛おしくなっていった。
屋上の時のように、俺にだけ本当の春野を見せてほしい。
その気持ちがどんどん膨らんでいって、自分でも引くが、春野の近くにいられるようにと、二年生になってから生徒会に入り副会長になった。
「なんでそんなに俺に優しくしてくれるの…?」
春野にそう聞かれたとき正直どう答えていいか分からなかった。
俺はなんでこんなに春野に執着しているんだろうか。
俺は…
「春野のことが好きだから。」
そうか、俺は春野のことが好きだったのか。
自分の気持ちを口にした後に納得をした。
春野を見ると今まで以上に顔を真っ赤にして目を見開いていた。
俺にしか見せないその顔が大好きだ。
春野に俺のことをどう思ってるか聞いてみると好きじゃないなんて言ってきたが、完全に後悔が顔に出ている。
やっぱりかわいい。もっと春野のことを知りたい、この世の春野を苦しめるものすべてから守りたい。
今は素直になれないとしても、春野は俺のことが好きなんだから、ゆっくり俺から逃げられないようにすればいい。
これから時間をかけて俺のこと好きって言わせるから。
「覚悟、しててね。」
