そんなつもりは全くなかったのに、なぜか美術部に入る事になってしまった。
(ま、いっか。どうせやることもないし)
仮入部期間が三か月もあればやめる事もできるか、と、柊が言い訳を考えていたその時だった。
ガラガラっと勢いよく美術室のドアが開けられた。
「おっすりおー!差し入れにお菓子もってき……」
賑やかな声とともに入って来たのは数人の女子生徒で、彼女らは柊を見つけると立ち止まった。
そして柊と向かい合うりおを何度も往復して見つめた。
「あ、ドモ」
なんとなく気まずく、柊が小さく頭を下げると女生徒らはお互いに頷き合うと、「では」と美術室を出て行こうとした。
「え?ちょっと!お菓子!待ってよ!」
りおが美術室のドアまで走って行って女子生徒が抱えていたファミリーパックのお菓子を掴む。
ところが生徒らはお菓子をさっと背中へ隠した。
「いやいやいや、りおさんがまさか彼氏と一緒とは思わずに失礼をば」
「なに言ってんのよ!この人は入部希望!いま入部届け出してくれたの!」
顔を真っ赤にして怒鳴るりおに、生徒らはじっと柊を見つめ、柊はこくこくと何度も頷いた。
女子生徒らはお互いに顔を見合わせると「なーんだあ」とぞろぞろと中へ入ってきた。
「せっかくなんか面白そうだったのに」
「ねー!青春かと思ったのにだまされた」
「面白くない」
さんざん勝手な事を言いながら女子達はテーブルを寄せ、トレイを持ってきてお菓子を広げ始めた。
「そこの男子!飲み物なんにする?」
「え?ええと」
「ヒイラギ君、なに飲む?お茶と、コーヒーと、紅茶があるよ」
「えと、じゃあコーヒーで」
美術室でコーヒー?と柊は不思議に思うが女子達は慣れた様子で、準備室へ向かうと飲み物を運んで来た。
「なんでそんなところに飲み物があんの?」
驚く柊に、女子らが言った。
「余った実験用の冷蔵庫貰ったから置いてあるの」
「そうそう、理系のところから貰ってきたんだって」
「あたしら自分のお茶とかも置いてる」
「なんならコンビニ飯もおいとける」
「へえー!いいなあ」
文化部ってそんなのもあるのか、と感心する柊に、女子らは顔を見合わせて言った。
「内緒だよヒイラギ君」
「そうそう、ばれたらめんどいから内緒にしといて」
「我々も内緒にしてるんだからね」
次々にそう言われ、勢いに押された柊は、うん、と何度も頷いた。
全員に飲み物が渡ると、勢いのある女子がカップを掲げた。
「ではヒイラギ君の入部を祝って、かんぱーい!」
いつの間にか柊の入部歓迎会になってしまって、これはますますやりづらいな、どうしようと思いながらも、柊も「乾杯……」とカップを合わせたのだった。
お菓子を食べながら、全員はお喋りを始めた。
動画の話、アイドルの話、アニメや漫画、内容はあまりにも多岐にわたっていて柊は面食らう。
「なあ、毎日こんな感じなん?」
「いや、さすがに毎日ではないよ」
「そうそう。文化祭まであと実質二か月ないから英気を養っているだけ」
「りおは油絵でしょ?わたしらはパネル作ろうかなって」
「私は同人誌!作って売る!」
「いいじゃん、何の同人誌?」
盛り上がる女子らは元気だが、柊にとってはあまりに知っている女子と違う。
「じゃあさ、ヒイラギ君のぶんも一緒に作った方がいいよね」
「そういえばそうだね。注文、まだ間に合うし」
なにを作るのかな?と柊が首をかしげると、女子らが答えた。
「実はさ、文化祭でみんなお揃いのTシャツとか作ろうって話してて」
「そうそう、かっこいいのがいい」
「でね、どんなのかなっていま話し合いしてたところなの」
りおが言い、柊はふーん、と話を聞いていた。
すると女子生徒の一人が言った。
「絶対にサッカーのユニフォームみたいなのがいいって!かっこいいし」
サッカーと聞いて、柊はちょっとどきっとする。
すると柊の隣に座っていたりおが苦笑しながら言った。
「この子、いまサッカーのアニメにハマってるから」
「ええ、りおだって面白いって言ってたじゃん!」
「面白いし好きだよ」
「でしょ?だったらさ、絶対おそろいのユニフォームにしようよ!あたし安いところ見つけたし。みんなで作ろうよ」
サッカーのユニフォームと聞いて柊は首を傾げた。
ユニフォームはとても高いものだし、部活で買えるような金額ではないはずだ。
(ひょっとして、騙されてないか?)
心配になって、つい柊は尋ねた。
「あのさ、その安いユニっていくらくらい?」
「うーんと、いまスマホないからわかんないけど、確か一枚四千円くらいで作ってくれるの」
「四千円?ユニを?プリントだけじゃなく?ユニ本体全部コミで?」
驚く柊に、女子らが頷く。
「うん。だから予算で足りない分はわたしらも手出しにしてって言ってて」
「ちょ、ちょっと待って。マジでちょっと待って」
あまりに呑気な様子に、柊は驚いたあまり、飲んでいたコーヒーでむせてしまい、ごほごほと咳きこんだ。
お菓子を食べていた女子らは目を丸くしていたが、咳がおさまった柊は机を軽く叩きながら言った。
「マジで待って。本気で。それヤバいから待って」
女子らは頷き、柊の咳がおさまるのを待った。
「どうしたんヒイラギ君」
「なんか大変なこと?」
そっか、と柊はあまりの文化の違いに驚きを隠せなかった。
「えーと、マジでその業者やめて。間違いなく詐欺だから」
柊の言葉に、しばらく呆然としていた女子達は、はっとして「えぇえー!」と大きな声をあげた。
「本当に?本当に詐欺?」
驚く女子生徒らに柊は頷く。
「マジで詐欺だよ。だってユニがそんな値段とかありえんし」
「レプリカって書いてあったから、そうなんだって思ってて」
「んなはずねーよ。マジでやめとけ。届かないかもしれないレベル」
「えぇえ……ショック」
「評価もよかったのに」
ざわつく女子生徒らは本当になにも知らなかったらしい。
「ねえ、ヒイラギ君はなんで詐欺ってわかるの?」
「なんでって。俺、サッカーやってたし本物のユニも持ってるし」
誕生日のプレゼントは大抵好きなチームのユニフォームだったので、そのあたりは自信がある。
すっくと女子生徒の一人が立ち上がった。
「わかった!じゃあ今日はいまからマックで会議しよ。ヒイラギ君の言う通りなら文化祭のおそろTも最初から考え直さないといけないし」
校内はスマホ禁止なので、その情報もいまは確かめようがない。
「そのほうがいいかもな。ユニのことなら俺わかるし」
柊が言うと、女子らは顔を見合わせて頷き「よっし!」と次々と机やお菓子を片付け始めた。
「じゃあもう今から作戦会議。マックに移動しよ」
また突然動き出した女子達に圧倒されながら、柊も片付けに参加した。
(ま、いっか。どうせやることもないし)
仮入部期間が三か月もあればやめる事もできるか、と、柊が言い訳を考えていたその時だった。
ガラガラっと勢いよく美術室のドアが開けられた。
「おっすりおー!差し入れにお菓子もってき……」
賑やかな声とともに入って来たのは数人の女子生徒で、彼女らは柊を見つけると立ち止まった。
そして柊と向かい合うりおを何度も往復して見つめた。
「あ、ドモ」
なんとなく気まずく、柊が小さく頭を下げると女生徒らはお互いに頷き合うと、「では」と美術室を出て行こうとした。
「え?ちょっと!お菓子!待ってよ!」
りおが美術室のドアまで走って行って女子生徒が抱えていたファミリーパックのお菓子を掴む。
ところが生徒らはお菓子をさっと背中へ隠した。
「いやいやいや、りおさんがまさか彼氏と一緒とは思わずに失礼をば」
「なに言ってんのよ!この人は入部希望!いま入部届け出してくれたの!」
顔を真っ赤にして怒鳴るりおに、生徒らはじっと柊を見つめ、柊はこくこくと何度も頷いた。
女子生徒らはお互いに顔を見合わせると「なーんだあ」とぞろぞろと中へ入ってきた。
「せっかくなんか面白そうだったのに」
「ねー!青春かと思ったのにだまされた」
「面白くない」
さんざん勝手な事を言いながら女子達はテーブルを寄せ、トレイを持ってきてお菓子を広げ始めた。
「そこの男子!飲み物なんにする?」
「え?ええと」
「ヒイラギ君、なに飲む?お茶と、コーヒーと、紅茶があるよ」
「えと、じゃあコーヒーで」
美術室でコーヒー?と柊は不思議に思うが女子達は慣れた様子で、準備室へ向かうと飲み物を運んで来た。
「なんでそんなところに飲み物があんの?」
驚く柊に、女子らが言った。
「余った実験用の冷蔵庫貰ったから置いてあるの」
「そうそう、理系のところから貰ってきたんだって」
「あたしら自分のお茶とかも置いてる」
「なんならコンビニ飯もおいとける」
「へえー!いいなあ」
文化部ってそんなのもあるのか、と感心する柊に、女子らは顔を見合わせて言った。
「内緒だよヒイラギ君」
「そうそう、ばれたらめんどいから内緒にしといて」
「我々も内緒にしてるんだからね」
次々にそう言われ、勢いに押された柊は、うん、と何度も頷いた。
全員に飲み物が渡ると、勢いのある女子がカップを掲げた。
「ではヒイラギ君の入部を祝って、かんぱーい!」
いつの間にか柊の入部歓迎会になってしまって、これはますますやりづらいな、どうしようと思いながらも、柊も「乾杯……」とカップを合わせたのだった。
お菓子を食べながら、全員はお喋りを始めた。
動画の話、アイドルの話、アニメや漫画、内容はあまりにも多岐にわたっていて柊は面食らう。
「なあ、毎日こんな感じなん?」
「いや、さすがに毎日ではないよ」
「そうそう。文化祭まであと実質二か月ないから英気を養っているだけ」
「りおは油絵でしょ?わたしらはパネル作ろうかなって」
「私は同人誌!作って売る!」
「いいじゃん、何の同人誌?」
盛り上がる女子らは元気だが、柊にとってはあまりに知っている女子と違う。
「じゃあさ、ヒイラギ君のぶんも一緒に作った方がいいよね」
「そういえばそうだね。注文、まだ間に合うし」
なにを作るのかな?と柊が首をかしげると、女子らが答えた。
「実はさ、文化祭でみんなお揃いのTシャツとか作ろうって話してて」
「そうそう、かっこいいのがいい」
「でね、どんなのかなっていま話し合いしてたところなの」
りおが言い、柊はふーん、と話を聞いていた。
すると女子生徒の一人が言った。
「絶対にサッカーのユニフォームみたいなのがいいって!かっこいいし」
サッカーと聞いて、柊はちょっとどきっとする。
すると柊の隣に座っていたりおが苦笑しながら言った。
「この子、いまサッカーのアニメにハマってるから」
「ええ、りおだって面白いって言ってたじゃん!」
「面白いし好きだよ」
「でしょ?だったらさ、絶対おそろいのユニフォームにしようよ!あたし安いところ見つけたし。みんなで作ろうよ」
サッカーのユニフォームと聞いて柊は首を傾げた。
ユニフォームはとても高いものだし、部活で買えるような金額ではないはずだ。
(ひょっとして、騙されてないか?)
心配になって、つい柊は尋ねた。
「あのさ、その安いユニっていくらくらい?」
「うーんと、いまスマホないからわかんないけど、確か一枚四千円くらいで作ってくれるの」
「四千円?ユニを?プリントだけじゃなく?ユニ本体全部コミで?」
驚く柊に、女子らが頷く。
「うん。だから予算で足りない分はわたしらも手出しにしてって言ってて」
「ちょ、ちょっと待って。マジでちょっと待って」
あまりに呑気な様子に、柊は驚いたあまり、飲んでいたコーヒーでむせてしまい、ごほごほと咳きこんだ。
お菓子を食べていた女子らは目を丸くしていたが、咳がおさまった柊は机を軽く叩きながら言った。
「マジで待って。本気で。それヤバいから待って」
女子らは頷き、柊の咳がおさまるのを待った。
「どうしたんヒイラギ君」
「なんか大変なこと?」
そっか、と柊はあまりの文化の違いに驚きを隠せなかった。
「えーと、マジでその業者やめて。間違いなく詐欺だから」
柊の言葉に、しばらく呆然としていた女子達は、はっとして「えぇえー!」と大きな声をあげた。
「本当に?本当に詐欺?」
驚く女子生徒らに柊は頷く。
「マジで詐欺だよ。だってユニがそんな値段とかありえんし」
「レプリカって書いてあったから、そうなんだって思ってて」
「んなはずねーよ。マジでやめとけ。届かないかもしれないレベル」
「えぇえ……ショック」
「評価もよかったのに」
ざわつく女子生徒らは本当になにも知らなかったらしい。
「ねえ、ヒイラギ君はなんで詐欺ってわかるの?」
「なんでって。俺、サッカーやってたし本物のユニも持ってるし」
誕生日のプレゼントは大抵好きなチームのユニフォームだったので、そのあたりは自信がある。
すっくと女子生徒の一人が立ち上がった。
「わかった!じゃあ今日はいまからマックで会議しよ。ヒイラギ君の言う通りなら文化祭のおそろTも最初から考え直さないといけないし」
校内はスマホ禁止なので、その情報もいまは確かめようがない。
「そのほうがいいかもな。ユニのことなら俺わかるし」
柊が言うと、女子らは顔を見合わせて頷き「よっし!」と次々と机やお菓子を片付け始めた。
「じゃあもう今から作戦会議。マックに移動しよ」
また突然動き出した女子達に圧倒されながら、柊も片付けに参加した。
