むっとしていじける柊に、ヨータはまあまあと笑う。
「いーじゃん、いまは食いまくれるし。気にすんなって!」
「気にしてないし食いまくってる」
「だよな!」
がはは、と笑うヨータに、りおが尋ねた。
「じゃあ、これまでマック行ったのも迷惑とか我慢とかじゃなかったんだね?」
「?うん?当然だろ?」
「良かったあ。ずっとマック行ってたから心配しちゃった」
ほっとするりおに、ヨータが肘で柊をどついた。
「なんだよクソ」
「なんだとクソ」
互いに肘の付き合いをはじめた二人に、りおは苦笑した。
「でもさ、本当にプロって厳しいんだね。二人ともすごく上手だったのに」
二人が戦う試合を見たりおが言うと、ヨータが笑う。
「あー、まあ、俺はね、納得してるところあるしダンスやりたいからいいんだけど、コイツはねまだいけたと思うから」
「ねーって。なに言ってんだよ」
「いやだってさ、りおちゃんだって思うでしょ?こいつ上手いって」
「うん!すっごく上手だった」
「だからそういうのいーって、」
「お前さ、そこがよくねーのよ。セルフジャッジすんなって話。悪い癖だぞ」
「うっせ」
柊とヨータの言葉に、りおは首をかしげた。
「セルフ、ジャッジ?ってなに?」
不思議そうに首をかしげるりおに、柊とヨータが顔を見合わせた。
「え、まじ使わん?」
「そんなわからん事なんか」
逆に驚く二人に、りおが再び首をかしげた。
「つまり、セルフジャッジって、勝手に自分で判断するってこと」
「自分で判断?それって当たり前じゃないの?」
「サッカーでは審判が判断するの。アウトとかインとか。あと反則ともな。けど、審判が判断する手前で、選手が勝手に判断しちゃうのをセルフジャッジって言うんだ」
「それって、じゃあ審判はいらなくない?」
「―――――自分で判断したことが、正しいならな。セルフジャッジっていうのは、間違ってる場合とか、その判断ミスった時にきついよって話」
よくわからない、とりおが首をかしげるので、ヨータが言った。
「つまりコイツはさ、サッカーIQ高いせいで逆に判断が早いんだ。一瞬で判断する。でもサッカーって、マジで最後までなにがあるかわからんゲームなのな。だからラストまで、審判がホイッスル吹くまで勝手に判断するのがよくないの。ところがコイツはそれをよくやんのよ」
言いながらヨータは柊のあたまをくしゃくしゃと撫でた。
「うっせ。触んな」
ばしっとヨータの手をはたくが、ヨータは気にしていない。
「それがコイツの惜しいところ。うますぎて逆に失敗する」
「だから、無駄に走っても意味ねーじゃん」
「そっかなー、無駄って結果出るまでわからんもんよ」
「判るって。強すぎる相手には勝てねーんだよ」
むっとする柊だが、ヨータは笑った。
「それでもさ、なんかチャレンジしたっていうのも意味あるかもしれねーじゃん」
「お前はやれ。俺はやらない」
「なんだよつれねえぞ。一緒に失敗しよ?」
「しねーわ!勝手にやれ!」
べたべたするヨータに柊が肘をはりながら反撃するも、結局二人は並んでいるのではしゃいでいるようにしか見えなかった。
十一月一日
とうとう文化祭の当日がやってきた。
美術部員はみんなお揃いの、しかもすっかりくたびれたTシャツ姿だったが、みな誇らしげに作品の前に立った。
ダンス部のヨータの発表を見に行ったらサプライズがあって、カッコいい看板を作ったのが美術部だとステージで紹介してくれ、先輩はすさまじい拍手とコールを受けて照れていた。
いつの間に作っていたのか、同人誌やイラストを印刷して販売までやっている先輩もいて、柊もちょっと手伝った。
屋台のチュロスに、フランク、どっちもあたりで美味しかった。
ヨータと一緒に屋台を周り終わったので、柊は言った。
「俺、ちょっと部室行ってくるわ。りおに差し入れしてくる」
「おー、行ってら」
じゃーな、とヨータと別れ、りおに差し入れるチュロスを買って柊は口笛を吹きながら美術室へ向かった。
美術室の展示を見る人もかなり落ち着いたらしく、ほとんど人は屋台の方へ向かったらしい。
「おっす、りおは?」
受付に座っている美術部員に尋ねると、「休憩中。準備室ん中」と指さされたので「サンキュ」と準備室へ向かった。
「りーお、飯食った?」
ひょこんと覗くと、りおはぱっと笑顔を見せた。
「ヒイラギ君!うん、食べたよ」
「じゃ、食後のデザート、どう?」
そういって柊がチュロスの袋を見せると、りおの目が輝く。
「チュロス!」
「一緒に食おうぜ」
「うん!」
りおと柊は準備室の床に並んで座る。
チュロスを見たりおの目が輝く。
「これ、お花が描いてある!」
「そう、ひまわり。かわいいだろ」
「とっても可愛い!」
チュロスは追加でチョコペイントのオプションができたので、りおのチュロスにはひまわりを描いてもらったのだ。
「おいしいね、いいにおいする」
「俺この味好き」
「あたしも」
そういって互いに微笑む。
「あ、そうそう、ヒイラギ君にね、あたしも差し入れがあるの」
チュロスを食べ終わり、手をはたく。
りおは立ち上がって、段ボールに隠していた大きなビニール袋を出した。
「じゃーん。なんとグレープ味の、綿菓子でーす」
「えっ、マジで?すげー、でけえ!」
「師匠のクラスはね、綿菓子だったんだけど、特別に予約で作ってくれたの。かわいいでしょ?」
りおが取り出した紫のふわふわの綿菓子に柊は目を見張った。
「すげー、かわいいじゃん」
「うん。あっという間に完売しちゃったんだって」
「だろーな、これはバカ売れするわ」
美術部の準備で忙しくて、何の店が出るかチェックを怠っていた柊はちょっと悔しい。
「でね、これはヒイラギ君に差し入れです!いつもお世話になってるから」
「お前、無理したんじゃないのか?」
「し、してないよ!ちゃんとチケットはあったし、大丈夫!」
「そっか。ならいいけど」
綿菓子を受け取ると、柊はりおに言った。
「じゃ、一緒に食おうぜ。俺一人じゃ寂しいじゃん」
「えっ、いいの?」
「こんなデケーんだぜ。食お」
「……うん!」
柊とりおは一緒に、綿菓子を千切りながら頬張った。
「うめー、あめー、すげーグレープ!」
「本当、これおいしい!来年もあったら絶対買おう」
二人で綿菓子をむしり、ぱくぱくと頬張っていると、あっというまに綿菓子は消えた。
「ふぃー、食った。めちゃくちゃうまかった」
「おいしかったねー」
「でもグレープ、りお好きなん?」
「なに言ってんの。ヒイラギ君が言ってたでしょ。グレープ大好きって」
「あ」
りおの事が好きすぎて、告白できないことにストレスがたまりすぎて、ファンタグレープが好きと叫んでしまったことを柊はようやく思い出した。
「そ、そそそ、そう。ファンタグレープ、大好き」
「だからね、グレープ予約したの。絶対にヒイラギ君、喜ぶと思って」
「うん、大好き」
頷きながら、柊は困った。
本当に好きなのはりおの方なんだけどな。
そう言えたらどんなに良いだろう。
「あ、それとね、実は、ヒイラギ君にもうひとつプレゼントがあります」
りおはごそごそと、A3サイズのパネルを取り出した。
「じゃーん」
背を向けた男性が走り出したイラストが描いてある。
「これ、ひょっとして……俺?」
「そう!試合の時のヒイラギ君。いちばんかっこよかったとことを描いたの!」
えへんと胸をはるりおだが、柊はその『一番かっこよかった』のが理解できない。
「いーじゃん、いまは食いまくれるし。気にすんなって!」
「気にしてないし食いまくってる」
「だよな!」
がはは、と笑うヨータに、りおが尋ねた。
「じゃあ、これまでマック行ったのも迷惑とか我慢とかじゃなかったんだね?」
「?うん?当然だろ?」
「良かったあ。ずっとマック行ってたから心配しちゃった」
ほっとするりおに、ヨータが肘で柊をどついた。
「なんだよクソ」
「なんだとクソ」
互いに肘の付き合いをはじめた二人に、りおは苦笑した。
「でもさ、本当にプロって厳しいんだね。二人ともすごく上手だったのに」
二人が戦う試合を見たりおが言うと、ヨータが笑う。
「あー、まあ、俺はね、納得してるところあるしダンスやりたいからいいんだけど、コイツはねまだいけたと思うから」
「ねーって。なに言ってんだよ」
「いやだってさ、りおちゃんだって思うでしょ?こいつ上手いって」
「うん!すっごく上手だった」
「だからそういうのいーって、」
「お前さ、そこがよくねーのよ。セルフジャッジすんなって話。悪い癖だぞ」
「うっせ」
柊とヨータの言葉に、りおは首をかしげた。
「セルフ、ジャッジ?ってなに?」
不思議そうに首をかしげるりおに、柊とヨータが顔を見合わせた。
「え、まじ使わん?」
「そんなわからん事なんか」
逆に驚く二人に、りおが再び首をかしげた。
「つまり、セルフジャッジって、勝手に自分で判断するってこと」
「自分で判断?それって当たり前じゃないの?」
「サッカーでは審判が判断するの。アウトとかインとか。あと反則ともな。けど、審判が判断する手前で、選手が勝手に判断しちゃうのをセルフジャッジって言うんだ」
「それって、じゃあ審判はいらなくない?」
「―――――自分で判断したことが、正しいならな。セルフジャッジっていうのは、間違ってる場合とか、その判断ミスった時にきついよって話」
よくわからない、とりおが首をかしげるので、ヨータが言った。
「つまりコイツはさ、サッカーIQ高いせいで逆に判断が早いんだ。一瞬で判断する。でもサッカーって、マジで最後までなにがあるかわからんゲームなのな。だからラストまで、審判がホイッスル吹くまで勝手に判断するのがよくないの。ところがコイツはそれをよくやんのよ」
言いながらヨータは柊のあたまをくしゃくしゃと撫でた。
「うっせ。触んな」
ばしっとヨータの手をはたくが、ヨータは気にしていない。
「それがコイツの惜しいところ。うますぎて逆に失敗する」
「だから、無駄に走っても意味ねーじゃん」
「そっかなー、無駄って結果出るまでわからんもんよ」
「判るって。強すぎる相手には勝てねーんだよ」
むっとする柊だが、ヨータは笑った。
「それでもさ、なんかチャレンジしたっていうのも意味あるかもしれねーじゃん」
「お前はやれ。俺はやらない」
「なんだよつれねえぞ。一緒に失敗しよ?」
「しねーわ!勝手にやれ!」
べたべたするヨータに柊が肘をはりながら反撃するも、結局二人は並んでいるのではしゃいでいるようにしか見えなかった。
十一月一日
とうとう文化祭の当日がやってきた。
美術部員はみんなお揃いの、しかもすっかりくたびれたTシャツ姿だったが、みな誇らしげに作品の前に立った。
ダンス部のヨータの発表を見に行ったらサプライズがあって、カッコいい看板を作ったのが美術部だとステージで紹介してくれ、先輩はすさまじい拍手とコールを受けて照れていた。
いつの間に作っていたのか、同人誌やイラストを印刷して販売までやっている先輩もいて、柊もちょっと手伝った。
屋台のチュロスに、フランク、どっちもあたりで美味しかった。
ヨータと一緒に屋台を周り終わったので、柊は言った。
「俺、ちょっと部室行ってくるわ。りおに差し入れしてくる」
「おー、行ってら」
じゃーな、とヨータと別れ、りおに差し入れるチュロスを買って柊は口笛を吹きながら美術室へ向かった。
美術室の展示を見る人もかなり落ち着いたらしく、ほとんど人は屋台の方へ向かったらしい。
「おっす、りおは?」
受付に座っている美術部員に尋ねると、「休憩中。準備室ん中」と指さされたので「サンキュ」と準備室へ向かった。
「りーお、飯食った?」
ひょこんと覗くと、りおはぱっと笑顔を見せた。
「ヒイラギ君!うん、食べたよ」
「じゃ、食後のデザート、どう?」
そういって柊がチュロスの袋を見せると、りおの目が輝く。
「チュロス!」
「一緒に食おうぜ」
「うん!」
りおと柊は準備室の床に並んで座る。
チュロスを見たりおの目が輝く。
「これ、お花が描いてある!」
「そう、ひまわり。かわいいだろ」
「とっても可愛い!」
チュロスは追加でチョコペイントのオプションができたので、りおのチュロスにはひまわりを描いてもらったのだ。
「おいしいね、いいにおいする」
「俺この味好き」
「あたしも」
そういって互いに微笑む。
「あ、そうそう、ヒイラギ君にね、あたしも差し入れがあるの」
チュロスを食べ終わり、手をはたく。
りおは立ち上がって、段ボールに隠していた大きなビニール袋を出した。
「じゃーん。なんとグレープ味の、綿菓子でーす」
「えっ、マジで?すげー、でけえ!」
「師匠のクラスはね、綿菓子だったんだけど、特別に予約で作ってくれたの。かわいいでしょ?」
りおが取り出した紫のふわふわの綿菓子に柊は目を見張った。
「すげー、かわいいじゃん」
「うん。あっという間に完売しちゃったんだって」
「だろーな、これはバカ売れするわ」
美術部の準備で忙しくて、何の店が出るかチェックを怠っていた柊はちょっと悔しい。
「でね、これはヒイラギ君に差し入れです!いつもお世話になってるから」
「お前、無理したんじゃないのか?」
「し、してないよ!ちゃんとチケットはあったし、大丈夫!」
「そっか。ならいいけど」
綿菓子を受け取ると、柊はりおに言った。
「じゃ、一緒に食おうぜ。俺一人じゃ寂しいじゃん」
「えっ、いいの?」
「こんなデケーんだぜ。食お」
「……うん!」
柊とりおは一緒に、綿菓子を千切りながら頬張った。
「うめー、あめー、すげーグレープ!」
「本当、これおいしい!来年もあったら絶対買おう」
二人で綿菓子をむしり、ぱくぱくと頬張っていると、あっというまに綿菓子は消えた。
「ふぃー、食った。めちゃくちゃうまかった」
「おいしかったねー」
「でもグレープ、りお好きなん?」
「なに言ってんの。ヒイラギ君が言ってたでしょ。グレープ大好きって」
「あ」
りおの事が好きすぎて、告白できないことにストレスがたまりすぎて、ファンタグレープが好きと叫んでしまったことを柊はようやく思い出した。
「そ、そそそ、そう。ファンタグレープ、大好き」
「だからね、グレープ予約したの。絶対にヒイラギ君、喜ぶと思って」
「うん、大好き」
頷きながら、柊は困った。
本当に好きなのはりおの方なんだけどな。
そう言えたらどんなに良いだろう。
「あ、それとね、実は、ヒイラギ君にもうひとつプレゼントがあります」
りおはごそごそと、A3サイズのパネルを取り出した。
「じゃーん」
背を向けた男性が走り出したイラストが描いてある。
「これ、ひょっとして……俺?」
「そう!試合の時のヒイラギ君。いちばんかっこよかったとことを描いたの!」
えへんと胸をはるりおだが、柊はその『一番かっこよかった』のが理解できない。
