軽蔑する柊の言葉に、萌々は俯いて黙ってしまう。
やはり図星かと柊は呆れた。
「カフェでもどこでも行けばいいだろ。なんで勉強してる連中の邪魔してんだよ」
「だってカフェだって高いし……」
「じゃあ大人しく勉強しとけばいいだろ。なに他人いびってはしゃいでたんだよ。くそさびぃ」
すると萌々は、ぽろぽろと涙を流し始めた。
「そんな言い方、ないじゃない……」
「だからなんだよ。真剣なヤツ邪魔するの、俺が一番嫌ってるってお前知ってるだろ。忘れたのかよ」
「覚えてるよ」
むっとしたまま萌々は言い返す。
「覚えてるけど、でもあたしにも付き合いが」
「スマホで晒すって脅す付き合いか?」
すると萌々は驚いたみたいに目を見開いた。
「なにそれ?あたしそんなのしてない」
「あそこに居る連中が教えてくれたぞ。席を奪っちゃ、スマホ向けて晒してやるって言ってたって」
「うそ、そんなのあたし、知らない」
驚く萌々の様子に、ひょっとしたら本当に知らなかったのかもしれない、と柊は思う。
だが、だからといってりおを傷つけたことは許せない。
例え、萌々本人がそう言ったわけでなくとも。
「……だから、学校であんなに怒られたんだ」
呟く萌々は、なにか合致したようで、柊の前に立ち上がると、深々と頭を下げた。
「本当に、あたしの友達がごめんなさい。学校でも、もうあそこには行っちゃいけないって言われたから、もう行けないと思う」
「そっか。良かった」
ほっとする柊の言葉に、萌々の目はすっと傷ついた色になる。
だが、そのことに柊は当然気づかない。
「ね、謝ったでしょ。だから柊、ブロック解いてよ」
「俺いまスマホねえし。いますぐは無理」
「だったら後でもいいから!」
「しつけー。そんなんお前に言われる筋合いねえし」
そっぽを向く柊に、萌々は突然怒って言った。
「あの子がいまの柊の彼女なの?スマホもあの子が持ってんのね?」
萌々の突っ込みに、柊は一瞬言葉が止まった。
ふん、と萌々は柊を一瞥した。
「じゃあ、あたし挨拶してくるね。柊の元カノでーすって」
「おいやめろよ!」
真剣に怒鳴る柊に、萌々の怒りは沸き上がる。
「なんでよ!本当のことでしょ!別にいーじゃん、今カノなら気にしなくてもさあ」
「だからあいつはちげーよ!ただの部活仲間なんだよ!」
怒鳴る柊に、萌々はむかっときて怒鳴り返した。
「嘘つくのやめてよ、あたし見たんだから!あの子にはキャップ被らせてたでしょ!あたしには触らせもしなかったくせに!」
萌々に言われ、初めて柊はその事に気づき、呆然と立ち尽くす。
そうだ、確かに柊はあのキャップがものすごくお気に入りで大切で、萌々に触られそうになったとき触らせなかった。
でも、りおには、そんなことはしなかった。
「……大事だから、預かって貰ったんだよ。あいつは人のもの大事にするヤツだから」
「なにそれ。あたしが滅茶苦茶するみたい」
「そんな事は」
「あーもう、ムカつく!ムカつくムカつく!なんなの!彼女じゃないのにそんな扱いする?絶対おかしい!」
「……おかしくねーよ」
「おかしい!おかしいよ柊は!そんなんじゃなかったのに!なんでモブなんかと」
「いい加減にしろよ。俺、お前のそーゆーとこ無理だわ」
冷たく言うと萌々は再び泣きそうな顔になった。
「あたしとは、デートもしなかったのに、あの子とは出かけるんだ」
「だから部活仲間だって言ってるだろ」
「何回誘っても、どこにも来てくんなかったくせに」
「だから、あんとき受験だったじゃん。普通に勉強は一緒にしたじゃん」
「つきあって、って言ったらいいよっていったくせに」
「だから付き合ってただろ、一応」
すると萌々は呆れたように笑った。
「なにそれ。部活以下の関わりしかないのに、付き合ってた、とかあるの?」
「……じゃあもうそれでいいじゃん。付き合ってなかった!俺らなんもなかった!それでいいな」
「うそ、そんなんヤダ!」
必死に止める萌々に、柊は面倒くさくてなんだよ、と肩を落とす。
(ああもう、マジめんどいわ、なんなんコイツ)
「あーもう、なにお前。マジでなんでそんなんなん」
「当たり前だよ……!だって、ずっと柊のことが好きなんだもん」
そういって萌々は泣くが、柊の心には何一つ刺さらない。
何を言っても、結局泣いている女のほうが正しいんだろうな、と思っていると、萌々が顔を上げた。
「あの子は彼女じゃないって言ったよね?」
「あ、ああ。うん」
「じゃあ、あたしとデートしても問題ないんだよね?」
「なにそれ。イミフだわ」
「あの子とはマックでデートしてるのに、あたしとはない」
「だからデートじゃねえって」
「ねえ柊、試験っていつ?」
「あ?ああ、十三日から、十六日」
「あたしの学校と一緒。じゃあ、十八日の日曜日。映画館とスタバ」
「は?」
「一度で良いから、柊と一緒に映画見たかったの。いいでしょ?」
「いや、その日は無理だ。文化祭前だし、展示物を作らなくちゃ」
言い訳をする柊に、萌々は言った。
「じゃあ、友達と一緒に柊の文化祭に行って滅茶苦茶にしてやるから」
「は?」
「別にチケットくれなくても、お姉ちゃんとか友達に頼んだら手に入るもん」
つんとそっぽを向く萌々に、柊は焦った。
折角クラブのみんながはりきって文化祭に向けて頑張っているのに、またあんな連中に来られてはたまったもんじゃない。
「お前、そういうことをだな」
「なにしたって柊は怒るんでしょ。だったら滅茶苦茶にしてやるわよ。あの子にだって文句言ってやる」
「おい、ちょ待て!マジでやめろ!」
「だったら映画とスタバね」
「だからなんでそうなるんだよ」
はあ、とため息をつく柊に、萌々は向かい合って柊をきつく見つめた。
「それで諦める。あたし本気だから。お願い、柊。ほんとうに、本当に、これで最後にする、だから」
頭を深々と下げる萌々に、柊は本当は嫌だと言いたかった。
でも、こうして頭を下げる萌々の姿が、柊に告白してきた時の姿が重なる。
あの時の萌々も、顔を真っ赤にして、親権に、柊に頭を下げて来た。
学年で、学校でも一番かわいいといっても過言じゃなかった萌々が柊を好きだと告白してきた時、柊は悪い気はしなかった。
確かに、デートらしいデートなんかしたことはない。
初詣すら、柊はヨータと行ったし、萌々を誘いもしなかった。
そんな事を思い出すと、ちょっと心が痛む。
でも。
「お前が本気なら」
柊の言葉に、萌々は自分の願いが通ると思ったのだ。
でも、そうじゃなかった。
「学校に報告する。お前らの学校出禁にしてもらう。美術部も―――――俺が守る」
元カノのはずなのに、萌々に対して、柊はどこまでも冷たく、そう言い放った。
やはり図星かと柊は呆れた。
「カフェでもどこでも行けばいいだろ。なんで勉強してる連中の邪魔してんだよ」
「だってカフェだって高いし……」
「じゃあ大人しく勉強しとけばいいだろ。なに他人いびってはしゃいでたんだよ。くそさびぃ」
すると萌々は、ぽろぽろと涙を流し始めた。
「そんな言い方、ないじゃない……」
「だからなんだよ。真剣なヤツ邪魔するの、俺が一番嫌ってるってお前知ってるだろ。忘れたのかよ」
「覚えてるよ」
むっとしたまま萌々は言い返す。
「覚えてるけど、でもあたしにも付き合いが」
「スマホで晒すって脅す付き合いか?」
すると萌々は驚いたみたいに目を見開いた。
「なにそれ?あたしそんなのしてない」
「あそこに居る連中が教えてくれたぞ。席を奪っちゃ、スマホ向けて晒してやるって言ってたって」
「うそ、そんなのあたし、知らない」
驚く萌々の様子に、ひょっとしたら本当に知らなかったのかもしれない、と柊は思う。
だが、だからといってりおを傷つけたことは許せない。
例え、萌々本人がそう言ったわけでなくとも。
「……だから、学校であんなに怒られたんだ」
呟く萌々は、なにか合致したようで、柊の前に立ち上がると、深々と頭を下げた。
「本当に、あたしの友達がごめんなさい。学校でも、もうあそこには行っちゃいけないって言われたから、もう行けないと思う」
「そっか。良かった」
ほっとする柊の言葉に、萌々の目はすっと傷ついた色になる。
だが、そのことに柊は当然気づかない。
「ね、謝ったでしょ。だから柊、ブロック解いてよ」
「俺いまスマホねえし。いますぐは無理」
「だったら後でもいいから!」
「しつけー。そんなんお前に言われる筋合いねえし」
そっぽを向く柊に、萌々は突然怒って言った。
「あの子がいまの柊の彼女なの?スマホもあの子が持ってんのね?」
萌々の突っ込みに、柊は一瞬言葉が止まった。
ふん、と萌々は柊を一瞥した。
「じゃあ、あたし挨拶してくるね。柊の元カノでーすって」
「おいやめろよ!」
真剣に怒鳴る柊に、萌々の怒りは沸き上がる。
「なんでよ!本当のことでしょ!別にいーじゃん、今カノなら気にしなくてもさあ」
「だからあいつはちげーよ!ただの部活仲間なんだよ!」
怒鳴る柊に、萌々はむかっときて怒鳴り返した。
「嘘つくのやめてよ、あたし見たんだから!あの子にはキャップ被らせてたでしょ!あたしには触らせもしなかったくせに!」
萌々に言われ、初めて柊はその事に気づき、呆然と立ち尽くす。
そうだ、確かに柊はあのキャップがものすごくお気に入りで大切で、萌々に触られそうになったとき触らせなかった。
でも、りおには、そんなことはしなかった。
「……大事だから、預かって貰ったんだよ。あいつは人のもの大事にするヤツだから」
「なにそれ。あたしが滅茶苦茶するみたい」
「そんな事は」
「あーもう、ムカつく!ムカつくムカつく!なんなの!彼女じゃないのにそんな扱いする?絶対おかしい!」
「……おかしくねーよ」
「おかしい!おかしいよ柊は!そんなんじゃなかったのに!なんでモブなんかと」
「いい加減にしろよ。俺、お前のそーゆーとこ無理だわ」
冷たく言うと萌々は再び泣きそうな顔になった。
「あたしとは、デートもしなかったのに、あの子とは出かけるんだ」
「だから部活仲間だって言ってるだろ」
「何回誘っても、どこにも来てくんなかったくせに」
「だから、あんとき受験だったじゃん。普通に勉強は一緒にしたじゃん」
「つきあって、って言ったらいいよっていったくせに」
「だから付き合ってただろ、一応」
すると萌々は呆れたように笑った。
「なにそれ。部活以下の関わりしかないのに、付き合ってた、とかあるの?」
「……じゃあもうそれでいいじゃん。付き合ってなかった!俺らなんもなかった!それでいいな」
「うそ、そんなんヤダ!」
必死に止める萌々に、柊は面倒くさくてなんだよ、と肩を落とす。
(ああもう、マジめんどいわ、なんなんコイツ)
「あーもう、なにお前。マジでなんでそんなんなん」
「当たり前だよ……!だって、ずっと柊のことが好きなんだもん」
そういって萌々は泣くが、柊の心には何一つ刺さらない。
何を言っても、結局泣いている女のほうが正しいんだろうな、と思っていると、萌々が顔を上げた。
「あの子は彼女じゃないって言ったよね?」
「あ、ああ。うん」
「じゃあ、あたしとデートしても問題ないんだよね?」
「なにそれ。イミフだわ」
「あの子とはマックでデートしてるのに、あたしとはない」
「だからデートじゃねえって」
「ねえ柊、試験っていつ?」
「あ?ああ、十三日から、十六日」
「あたしの学校と一緒。じゃあ、十八日の日曜日。映画館とスタバ」
「は?」
「一度で良いから、柊と一緒に映画見たかったの。いいでしょ?」
「いや、その日は無理だ。文化祭前だし、展示物を作らなくちゃ」
言い訳をする柊に、萌々は言った。
「じゃあ、友達と一緒に柊の文化祭に行って滅茶苦茶にしてやるから」
「は?」
「別にチケットくれなくても、お姉ちゃんとか友達に頼んだら手に入るもん」
つんとそっぽを向く萌々に、柊は焦った。
折角クラブのみんながはりきって文化祭に向けて頑張っているのに、またあんな連中に来られてはたまったもんじゃない。
「お前、そういうことをだな」
「なにしたって柊は怒るんでしょ。だったら滅茶苦茶にしてやるわよ。あの子にだって文句言ってやる」
「おい、ちょ待て!マジでやめろ!」
「だったら映画とスタバね」
「だからなんでそうなるんだよ」
はあ、とため息をつく柊に、萌々は向かい合って柊をきつく見つめた。
「それで諦める。あたし本気だから。お願い、柊。ほんとうに、本当に、これで最後にする、だから」
頭を深々と下げる萌々に、柊は本当は嫌だと言いたかった。
でも、こうして頭を下げる萌々の姿が、柊に告白してきた時の姿が重なる。
あの時の萌々も、顔を真っ赤にして、親権に、柊に頭を下げて来た。
学年で、学校でも一番かわいいといっても過言じゃなかった萌々が柊を好きだと告白してきた時、柊は悪い気はしなかった。
確かに、デートらしいデートなんかしたことはない。
初詣すら、柊はヨータと行ったし、萌々を誘いもしなかった。
そんな事を思い出すと、ちょっと心が痛む。
でも。
「お前が本気なら」
柊の言葉に、萌々は自分の願いが通ると思ったのだ。
でも、そうじゃなかった。
「学校に報告する。お前らの学校出禁にしてもらう。美術部も―――――俺が守る」
元カノのはずなのに、萌々に対して、柊はどこまでも冷たく、そう言い放った。
