夏休みにはロマンスのヒロイン?

 夏休みは終わった。

 まだまだ暑い始業式の朝、オレはめちゃくちゃドキドキしながら少し早めに登校した。
 今のところ、誠大(まさひろ)の姿はどこにもない。

 ホッとして自分の下駄箱を覗くと、サンダルの上にリボンで可愛く口を縛った小さな袋が置いてある。

 なんだこれ?

 リボンをほどき開けてみると、猫の顔型のピアスが入っていた。

 これ、こないだ誠大と見てたヤツじゃん!
 なんで、これがここに?

 考えられる理由はひとつしかねーけど、確かめるのはちょっと怖い。
 でも!

 オレは思い切ってA組の教室を訪ねた。
 後ろからチラッと様子を窺うと、席についた誠大の後ろ姿が見え、胸がぎゅっと締め付けられる。
 教室へ入ろうとしていた生徒に呼び出しを頼んだら、誠大はすぐに廊下へ飛び出してきた。

 オレを見るなり、レンズの奥の目を丸くする。

「髪切ったんだ」

 開口一番いわれたとおり、オレは夏休み最終日に髪を切っていた。
 襟足はスッキリ刈り上げ、前髪はおでこが見える長さにした。
 家族には小学生のころみたいで可愛いとかいわれたけど、これなら絶対女には見えねーはずだ。
 夏服もきちっと身に付け、ピアスも透明のに替えた。
 うわべだけカッコつけるのがいいとは、思えなくなっていたから。

「俺には、もう会えないんじゃなかった?」

 嫌みのようなことをさらりといわれ、確信した。

「知ってたのか。オレが同じ高校の男子だって」

 念のため確認すると、誠大は頷く。

「知ってたよ。君、校内で有名だし。まあ、女装趣味があって男が好きなのは知らなかったけど」
「ねーよ、ねー! 女装趣味なんて! あれはただの変装だって」

 とんでもねー誤解を慌てて否定し、オレは誠大を引っ張って廊下の隅へ移動した。
 誰もいないのを確かめ、また続きを切り出す。

「つーかお前こそ、オレが男だって知ってるのにす……好きって」
「うん。好きだよ。最初は目立つから気になって、いつも楽しそうでいいなって勝手に憧れてた。俺は勉強しか取り柄がな──」
「待て! お前、その顔と身長で、あの強さで、勉強しか取り柄がないとかいうなよ。嫌みか。謝れ。オレと全世界に謝れ」

 我慢できずに突っ込むと、彼は素直にゴメンと謝る。

「でも、本当につまらないヤツだと思ってたから、君に面白いヤツっていわれたとき、戸惑ったけどすごく嬉しかったし、君といると楽しくて、自分も変われそうだと思ったんだ」
「オレも! オレも誠大と一緒にいて、すげー楽しかった」

 暑さと恋心を残し、夏休みは終わっちまった。
 でも、楽しい時間は終わらせたくない。
 そのためにはオレも、いうべきことをいわねーと。

「ピアスありがとう。今度これつけてデートしたい」

 まっすぐ彼を見上げ、オレは口を開く。

「オレも誠大のこと好きだよ」