空を飛ぶ夢

 昔は空を飛ぶ夢をよく見た。
 飛んでいる場所は様々だ。学校、街、見知らぬ土地、家の近く、漫画やアニメの世界。
 基本的に杖や魔法のほうきなどの道具は持っていない。私は手ぶらのまま建物の屋上あたりまで、びゅーんと飛んでいく。
 建物から建物を飛び渡ることもある。
 色んな空を飛ぶ夢を見たが、どの夢にも共通点があった。

 必ず、夢の中盤から飛べなくなるのだ。しぼんだ風船のように地上に降り立ってしまう。
 夢の中の私は飛びたくて、必死にジャンプするのだが、その日の夢の中で二度と飛べることはない。
 私はこの話を母にしたことがある。
 すると、母はこう言ったのだった。

「もしかすると、ずっとずっと高くまで飛んでいってしまったら、天国に行ってしまうかもしれない。飛び続けると死んでしまうのかもしれないよ。だから飛べなくていいんじゃない?」

 私は空を飛ぶ夢が怖くなった。
 大きくなって、気づけば私は飛ぶ夢を見なくなっていた。

 ふと、あのまま高く高く飛んでしまっていたら、死んでいたのかな。と母の言葉をたまに思い出すことがある。
 もう、空を飛ぶ夢は見なくなったけれど。