俺は結局、ほとんど眠れないまま朝を迎えた。
告白の緊張と、目をつぶると——いや、つぶらなくても、脳と心が常に伊織のことを思ってしまって。
『僕は颯太のことが好きなのに』と、涙を流しながら俺を見てくる伊織とか。『友達も解任する。颯太、僕の恋人になれ』と、伊織に言われたシーンとか。
胸がキュンキュンして、たまらなくて、奇声をあげながらのたうちまわりたくなる。
他にも以前、俺が違和感を覚えた伊織の行動——例えば、突然の世話係解任宣言は嫉妬からだったのか? とか。劇が終わった後、自分を取り囲む女子に興味を示さず、一直線に俺のとこに来たのって……とか。文化祭準備中に理貴ちゃんと話し込んでいたら、後ろからぶつかってきたのも嫉妬? とか。
そんなわけでソワソワしっぱなしの俺は、目覚ましが鳴る前にベッドから起き上がるしかなかった。
「おはよう。身体の具合はどう?」
リビングへ行くと、母さんがキッチンで朝食用の卵を焼きながら、聞いてきた。
「元気になったから、今日は学校行く」
俺はのんびり朝食を食べ、ノロノロと制服に着替えたが、それでも普段よりだいぶ早く学校へ行く準備を終えてしまった。
「行ってきます」
何もせずじっとしていられない俺は、いつもより十分も早いが、家を出た。
玄関扉を開け、空を見上げると雲一つない快晴で、空気は少し肌寒い。
俺は通学路をゆっくり歩きながら、これからの予定を脳内でおさらいする。
伊織と合流したら、まず謝る。
昨日はトンチンカンなことを言って、本当にごめん。伊織が勇気を出して告白してくれたのに、『お前が俺を好きなんておかしい』なんて、酷いことを言ってごめん! と。
そして次に、告白、しようと思うんだけど……思うんだけど。
『もう颯太なんて好きじゃない』と言われることが怖くて、決意したはずなのに、「今日慌ててしなくてもよくね?」と日和ってしまう。
それに、謝っても許されず、伊織が怒ったままだったら、告白なんてできないし。
「うーん……」
俺は紅葉している街路樹を横目で見ながら、腕を組む。
告白は、伊織の様子を見てから、だな。
ということで、告白は今日に限定せず、一ヶ月以内を目指す、が現実的では?……ヘタレだな、俺。
「俺のスペックがもっと高かったらなぁー」
——って、違うだろ!
俺は足を止め、両手で自分の顔を叩く。
人はスペックだけで人を好きにならない、と昨日気がついたのに、またスペックとか言って!
……昨日の今日じゃ、長年の歪んだ俺の恋愛観というか思考の癖は、直らないか。
正直なところ、今でも俺はまだ少し疑問に思っていたりする。ハイスペ寄りの伊織が、コミュ力しか取り柄がない俺を好きなんて、どんな気まぐれ? と。
でも今は恋愛ってそういうことだけじゃない、と理解している。
それでもふとした瞬間に、『本当に?』と不安が顔を出す。
俺のココとココが優れているから、伊織に好かれたのだという、分かりやすく安心できるスペックが欲しいと思ってしまう。
俺と伊織の好きは、そういうのじゃないと分かっているのに。
要は俺は自分に自信がなくて、不安なのだ。
「大丈夫」
俺は握った右手を心臓の上にあて、声は出さずに唇だけ動かす。
昨日伊織が俺に好きと言ってくれたことと、昨日自分で気がついたことを信じよう。
怖いけど、ここで変わらなきゃ、絶対後悔すると分かるから。
告白の緊張と、目をつぶると——いや、つぶらなくても、脳と心が常に伊織のことを思ってしまって。
『僕は颯太のことが好きなのに』と、涙を流しながら俺を見てくる伊織とか。『友達も解任する。颯太、僕の恋人になれ』と、伊織に言われたシーンとか。
胸がキュンキュンして、たまらなくて、奇声をあげながらのたうちまわりたくなる。
他にも以前、俺が違和感を覚えた伊織の行動——例えば、突然の世話係解任宣言は嫉妬からだったのか? とか。劇が終わった後、自分を取り囲む女子に興味を示さず、一直線に俺のとこに来たのって……とか。文化祭準備中に理貴ちゃんと話し込んでいたら、後ろからぶつかってきたのも嫉妬? とか。
そんなわけでソワソワしっぱなしの俺は、目覚ましが鳴る前にベッドから起き上がるしかなかった。
「おはよう。身体の具合はどう?」
リビングへ行くと、母さんがキッチンで朝食用の卵を焼きながら、聞いてきた。
「元気になったから、今日は学校行く」
俺はのんびり朝食を食べ、ノロノロと制服に着替えたが、それでも普段よりだいぶ早く学校へ行く準備を終えてしまった。
「行ってきます」
何もせずじっとしていられない俺は、いつもより十分も早いが、家を出た。
玄関扉を開け、空を見上げると雲一つない快晴で、空気は少し肌寒い。
俺は通学路をゆっくり歩きながら、これからの予定を脳内でおさらいする。
伊織と合流したら、まず謝る。
昨日はトンチンカンなことを言って、本当にごめん。伊織が勇気を出して告白してくれたのに、『お前が俺を好きなんておかしい』なんて、酷いことを言ってごめん! と。
そして次に、告白、しようと思うんだけど……思うんだけど。
『もう颯太なんて好きじゃない』と言われることが怖くて、決意したはずなのに、「今日慌ててしなくてもよくね?」と日和ってしまう。
それに、謝っても許されず、伊織が怒ったままだったら、告白なんてできないし。
「うーん……」
俺は紅葉している街路樹を横目で見ながら、腕を組む。
告白は、伊織の様子を見てから、だな。
ということで、告白は今日に限定せず、一ヶ月以内を目指す、が現実的では?……ヘタレだな、俺。
「俺のスペックがもっと高かったらなぁー」
——って、違うだろ!
俺は足を止め、両手で自分の顔を叩く。
人はスペックだけで人を好きにならない、と昨日気がついたのに、またスペックとか言って!
……昨日の今日じゃ、長年の歪んだ俺の恋愛観というか思考の癖は、直らないか。
正直なところ、今でも俺はまだ少し疑問に思っていたりする。ハイスペ寄りの伊織が、コミュ力しか取り柄がない俺を好きなんて、どんな気まぐれ? と。
でも今は恋愛ってそういうことだけじゃない、と理解している。
それでもふとした瞬間に、『本当に?』と不安が顔を出す。
俺のココとココが優れているから、伊織に好かれたのだという、分かりやすく安心できるスペックが欲しいと思ってしまう。
俺と伊織の好きは、そういうのじゃないと分かっているのに。
要は俺は自分に自信がなくて、不安なのだ。
「大丈夫」
俺は握った右手を心臓の上にあて、声は出さずに唇だけ動かす。
昨日伊織が俺に好きと言ってくれたことと、昨日自分で気がついたことを信じよう。
怖いけど、ここで変わらなきゃ、絶対後悔すると分かるから。
