三階へ案内される。この階は客室なようで、同じような扉が廊下に均等に並びホテルみたいだ。
「昔は、お客さんをここの階に泊めていたらしいよ」
「今じゃあ、めったに使わないが」
「一応ここも清掃してもらっているけど」
「一部屋だけ例外がある」
二人が足を止めた。
その扉には大きな板がバツ印に打ち付けられ、見るからに立ち入りを禁じている。ハルが鍵を開け、ノブをぐっと奥へ押すと、鈍い音を立てて扉が開いた。
「開けるのにコツがいるのさ」
「僕たちの秘密基地だよ」
元は客室らしく、ベッドやソファの合間に、屏風、壺、西洋絵画、謎のオブジェと雑然とした印象を受ける。
その中で一際目を引くのが、ソファの前に下がるスクリーンだった。
「これで映画を観る」
「恋愛ものじゃなくて、ミステリとかサスペンスがみたい」
「俺、アクション。肉弾戦多めで」
「バラバラじゃないか。そんな映画は……あるな」
ハルが腕を組んで考え込み始めてしまう。
別にそんなお子様ランチみたいな、俺たちの好きなもの全部盛り作品が観たい訳ではない。
「時間なくなるから、順番に観たいもの観ようぜ」
「六時間かぁ。途中で寝ちゃいそう」
「じゃあ、ミツが観たいものを最初に観るとするか」
「やったぁ。ハルのは最後ね。僕、その頃に寝るから」
「反抗期め」
「俺が一緒に観てやるよ」
「いらん」
肩に手を置くと、はたかれた。
何だコイツ。
ハルが機材を操作すると、スクリーンにパソコンのデスクトップが映った。ミツはソファの真ん中に座り、動画サイトを開く。
手持ち無沙汰な俺は部屋の中をうろつくことにした。カーテンを開け外を見ると、予報通り雨が降り始めている。
窓から離れてベッドに近づく。
「眠くなったら、今日はそこで寝てね」
一人用にしては大きい。自宅は布団なので、テンションが上がる。
棚の前に移動し、大量の本を見渡した。
どれどれ。
「汚い手で触るな」
ハルに叱られ、慌てて手を引っ込める。
「ごめん」
勝手に触られたら怒るよな。
反省すると、ふと頭に疑問が浮かんだ。
「なあ。お前らの父親は、何で俺に抱きついてきたんだ?」
途端に二人揃って固まった。顔を見合わせ、ハルが口を開く。
「あいつは……若い男が好きなんだ」
「は?」
「だから、私も友人を自宅に招いたことはない……危ないからね」
「じゃあ、俺、ヤバいじゃん」
「大丈夫! ユウは父さんの好みじゃなかったみたい!」
「あれで?」
「うん! 好みのときは……そう! その場で脱がしてくるから!」
「犯罪者だ……」
俺が「変態……」と怯えると、ミツは「ハルぅ」と情けない声を上げた。
「いや、冗談。冗談だ。奴は私たちがこの部屋に入れると知らない。君を客室に泊めると考えるだろう。でも、開けども開けども君はいない。となると、私たちの部屋だ。息子の前で手は出さない」
「怖ぇよっ。なぁ、今日三人で寝ないか? ほら、このベッドなら、俺ら三人並んでも十分広いし」
「嫌だね。気持ち悪い」
「そんなつれない事言うなよっ。ミツは俺と寝てくれるよな?」
「えっ。えっ」
「変態!」
「それはお前らの父親だろうが!」
ハルは疲れたように溜息をついた。
「とにかく、安全は保証する。襲われたら速攻で通報してやる。早くこっちに来い」
苛立った声のハルに呼ばれ、俺は渋々ミツの隣に座った。ソファ前のテーブルには、ジュースにお茶、お菓子に軽食と空腹の男子高校生を満たす量の食べ物が積まれている。
俺はポテトチップスの袋を開けると、一枚口にくわえた。
事後じゃなくて、事前に対策してくれよ。
ハルは長い脚を組むと、リモコンで照明を落とした。
上映が始まる。
友達とこーゆーのって、何かいいな。
「昔は、お客さんをここの階に泊めていたらしいよ」
「今じゃあ、めったに使わないが」
「一応ここも清掃してもらっているけど」
「一部屋だけ例外がある」
二人が足を止めた。
その扉には大きな板がバツ印に打ち付けられ、見るからに立ち入りを禁じている。ハルが鍵を開け、ノブをぐっと奥へ押すと、鈍い音を立てて扉が開いた。
「開けるのにコツがいるのさ」
「僕たちの秘密基地だよ」
元は客室らしく、ベッドやソファの合間に、屏風、壺、西洋絵画、謎のオブジェと雑然とした印象を受ける。
その中で一際目を引くのが、ソファの前に下がるスクリーンだった。
「これで映画を観る」
「恋愛ものじゃなくて、ミステリとかサスペンスがみたい」
「俺、アクション。肉弾戦多めで」
「バラバラじゃないか。そんな映画は……あるな」
ハルが腕を組んで考え込み始めてしまう。
別にそんなお子様ランチみたいな、俺たちの好きなもの全部盛り作品が観たい訳ではない。
「時間なくなるから、順番に観たいもの観ようぜ」
「六時間かぁ。途中で寝ちゃいそう」
「じゃあ、ミツが観たいものを最初に観るとするか」
「やったぁ。ハルのは最後ね。僕、その頃に寝るから」
「反抗期め」
「俺が一緒に観てやるよ」
「いらん」
肩に手を置くと、はたかれた。
何だコイツ。
ハルが機材を操作すると、スクリーンにパソコンのデスクトップが映った。ミツはソファの真ん中に座り、動画サイトを開く。
手持ち無沙汰な俺は部屋の中をうろつくことにした。カーテンを開け外を見ると、予報通り雨が降り始めている。
窓から離れてベッドに近づく。
「眠くなったら、今日はそこで寝てね」
一人用にしては大きい。自宅は布団なので、テンションが上がる。
棚の前に移動し、大量の本を見渡した。
どれどれ。
「汚い手で触るな」
ハルに叱られ、慌てて手を引っ込める。
「ごめん」
勝手に触られたら怒るよな。
反省すると、ふと頭に疑問が浮かんだ。
「なあ。お前らの父親は、何で俺に抱きついてきたんだ?」
途端に二人揃って固まった。顔を見合わせ、ハルが口を開く。
「あいつは……若い男が好きなんだ」
「は?」
「だから、私も友人を自宅に招いたことはない……危ないからね」
「じゃあ、俺、ヤバいじゃん」
「大丈夫! ユウは父さんの好みじゃなかったみたい!」
「あれで?」
「うん! 好みのときは……そう! その場で脱がしてくるから!」
「犯罪者だ……」
俺が「変態……」と怯えると、ミツは「ハルぅ」と情けない声を上げた。
「いや、冗談。冗談だ。奴は私たちがこの部屋に入れると知らない。君を客室に泊めると考えるだろう。でも、開けども開けども君はいない。となると、私たちの部屋だ。息子の前で手は出さない」
「怖ぇよっ。なぁ、今日三人で寝ないか? ほら、このベッドなら、俺ら三人並んでも十分広いし」
「嫌だね。気持ち悪い」
「そんなつれない事言うなよっ。ミツは俺と寝てくれるよな?」
「えっ。えっ」
「変態!」
「それはお前らの父親だろうが!」
ハルは疲れたように溜息をついた。
「とにかく、安全は保証する。襲われたら速攻で通報してやる。早くこっちに来い」
苛立った声のハルに呼ばれ、俺は渋々ミツの隣に座った。ソファ前のテーブルには、ジュースにお茶、お菓子に軽食と空腹の男子高校生を満たす量の食べ物が積まれている。
俺はポテトチップスの袋を開けると、一枚口にくわえた。
事後じゃなくて、事前に対策してくれよ。
ハルは長い脚を組むと、リモコンで照明を落とした。
上映が始まる。
友達とこーゆーのって、何かいいな。
