腹を緩やかに撫でられる。
「頑張ったね」
次は頭を撫でられる
時折、何処かに唇が落ちる。
真っ白な天井には、数える染みすらない。
……生きてる。
それだけでいい。
今日の事は忘れよう。
そして、こいつとはもう会わない。
俺の「友達」は、死んでしまったんだ。
じゃあな、あいつとの楽しかった日々。
「君は知っているかな?」
遠のく意識の中、脚を掴まれる。
「え?」
顔を見上げ、悟った。
「先生……君のお父さんとあいつは、若い頃に何度も心中しようとしていたそうだよ」
「終わったぞ?」
「でも、君のお父さんが毎回抵抗したらしい」
「終わりだって」
「私たちの命の恩人だね」
「もうしないっ。帰るっ」
「感謝していると、代わりに伝えておいてくれないかな」
「やめろっ。やめっ……」
「きっと私には会いたくないだろうからね」
何か言ってる。
「そりゃあ、悲しいさ。私はあの人が自分の父親だと良いのにと思っていた。好きだった。でも、先生にとって私は愛する人の息子でしかなかった」
分からない。
どうして突然狂った。
母親が死んだから?
ミツと離れていたから?
俺がもっと寄り添っていれば?
全部俺が悪いってか?
ふざけるな。
「……殺してやる」
痛い。
声が漏れる度、反応する度、羞恥と屈辱で死にたくなる。
「絶対に許さない……死ねよ……」
俺が譫言のように呟くと、きょとんとした彼は、途端に腹を抱え笑い出した。
「あはっ、あははっ! はっ……ああ、不安にさせてしまったかな? 安心して? 私は別に君をあの人の代わりとして見ている訳じゃない。似ているけれど、全然違う。君は強い心を持っている」
俺の上に倒れ、力強く抱き締めてきた。
「綺麗だよ。君だけだ。私は君とこうしたいって、ずっと思っていた……」
「うああっ」
杭が一層深く食い込み、痛みに襲われる。
それなのに、自分の口から出たのは妙に艶めかしい声で。
「……はぁ」
満足そうに息を吐くと、彼は蕩けた目で見つめてきた。
「今の私たちって端から見てどう映るんだろうね。ふふっ。やっぱり、あの二人みたいに、醜いのかな。不思議だ。私には全くそう見えない。こんなに素晴らしい事なんてない。君はどう思う?」
頭がおかしくなる。
頼むから、もう喋んな。
何も考えたくない。
上擦った声。跨る男。荒い息。
そう言えば、前にこんなの見た事あるな。
どこだっけ。
ああ、そうそう。
このソファだ。
ここに座って俺は――。
「……嫌だ」
「ユウ?」
「……もう、嫌だっ!」
「ユウっ」
「やっぱり、俺のこと嫌いだったんだっ。友達だと思ってたのにっ」
「落ち着いて」
「ずっと騙してたんだっ。全部、全部嘘だったんだっ!」
「ほら、良い子だから」
「信じてたのにいっ。俺、何も悪くないだろっ。俺のこと嫌いなら、もう殺せよっっ」
「それは誤解だっ」
「うるさいっ!」
頭の中、ブツっと何かが切れる音がした。
「やだっ! これぬいてっ! きらいっ! あっちいけっ! おとうさん、たすけてっ! ぼくはここに」
「ユウっ」
「うあっ」
深く口づけられた。
舌を絡められ、唾液を流し込まれる。
唇が離れた瞬間に俺が暴れ始めると、また深く口づけられる。
それを何度か繰り返し、俺がおとなしくなったのを確認すると、彼は微笑んだ。
「ハル……」
「嫌いだなんてとんでもない。好きだよ」
「すき……?」
「ああ」
「じゃあ……なんで……」
「愛しているからだ」
「あい……」
「ユウ。私は君を愛している。だから、今こうしているんだよ」
「……わかんない」
「いずれ君にも分かる日が訪れる。それまでは苦しいかもしれないが、大丈夫、君の苦労は報われるさ。私が導いてあげよう」
ハルが俺の両手を握った。
「共に生きていこう」
「……わかんない」
「頑張ったね」
次は頭を撫でられる
時折、何処かに唇が落ちる。
真っ白な天井には、数える染みすらない。
……生きてる。
それだけでいい。
今日の事は忘れよう。
そして、こいつとはもう会わない。
俺の「友達」は、死んでしまったんだ。
じゃあな、あいつとの楽しかった日々。
「君は知っているかな?」
遠のく意識の中、脚を掴まれる。
「え?」
顔を見上げ、悟った。
「先生……君のお父さんとあいつは、若い頃に何度も心中しようとしていたそうだよ」
「終わったぞ?」
「でも、君のお父さんが毎回抵抗したらしい」
「終わりだって」
「私たちの命の恩人だね」
「もうしないっ。帰るっ」
「感謝していると、代わりに伝えておいてくれないかな」
「やめろっ。やめっ……」
「きっと私には会いたくないだろうからね」
何か言ってる。
「そりゃあ、悲しいさ。私はあの人が自分の父親だと良いのにと思っていた。好きだった。でも、先生にとって私は愛する人の息子でしかなかった」
分からない。
どうして突然狂った。
母親が死んだから?
ミツと離れていたから?
俺がもっと寄り添っていれば?
全部俺が悪いってか?
ふざけるな。
「……殺してやる」
痛い。
声が漏れる度、反応する度、羞恥と屈辱で死にたくなる。
「絶対に許さない……死ねよ……」
俺が譫言のように呟くと、きょとんとした彼は、途端に腹を抱え笑い出した。
「あはっ、あははっ! はっ……ああ、不安にさせてしまったかな? 安心して? 私は別に君をあの人の代わりとして見ている訳じゃない。似ているけれど、全然違う。君は強い心を持っている」
俺の上に倒れ、力強く抱き締めてきた。
「綺麗だよ。君だけだ。私は君とこうしたいって、ずっと思っていた……」
「うああっ」
杭が一層深く食い込み、痛みに襲われる。
それなのに、自分の口から出たのは妙に艶めかしい声で。
「……はぁ」
満足そうに息を吐くと、彼は蕩けた目で見つめてきた。
「今の私たちって端から見てどう映るんだろうね。ふふっ。やっぱり、あの二人みたいに、醜いのかな。不思議だ。私には全くそう見えない。こんなに素晴らしい事なんてない。君はどう思う?」
頭がおかしくなる。
頼むから、もう喋んな。
何も考えたくない。
上擦った声。跨る男。荒い息。
そう言えば、前にこんなの見た事あるな。
どこだっけ。
ああ、そうそう。
このソファだ。
ここに座って俺は――。
「……嫌だ」
「ユウ?」
「……もう、嫌だっ!」
「ユウっ」
「やっぱり、俺のこと嫌いだったんだっ。友達だと思ってたのにっ」
「落ち着いて」
「ずっと騙してたんだっ。全部、全部嘘だったんだっ!」
「ほら、良い子だから」
「信じてたのにいっ。俺、何も悪くないだろっ。俺のこと嫌いなら、もう殺せよっっ」
「それは誤解だっ」
「うるさいっ!」
頭の中、ブツっと何かが切れる音がした。
「やだっ! これぬいてっ! きらいっ! あっちいけっ! おとうさん、たすけてっ! ぼくはここに」
「ユウっ」
「うあっ」
深く口づけられた。
舌を絡められ、唾液を流し込まれる。
唇が離れた瞬間に俺が暴れ始めると、また深く口づけられる。
それを何度か繰り返し、俺がおとなしくなったのを確認すると、彼は微笑んだ。
「ハル……」
「嫌いだなんてとんでもない。好きだよ」
「すき……?」
「ああ」
「じゃあ……なんで……」
「愛しているからだ」
「あい……」
「ユウ。私は君を愛している。だから、今こうしているんだよ」
「……わかんない」
「いずれ君にも分かる日が訪れる。それまでは苦しいかもしれないが、大丈夫、君の苦労は報われるさ。私が導いてあげよう」
ハルが俺の両手を握った。
「共に生きていこう」
「……わかんない」
