「そうか」
私はぽつりと呟いた。
そして、彼の両肩を思い切り突き飛ばした。
立ち上がりかけていた彼はバランスを崩し、ソファに沈む。私は彼に乗り上げると、全体重を掛けて押さえつけた。
「痛っ……はぁ?」
「分かった」
「じゃあ、退けよ」
「全部分かったんだ」
「何の話だ」
私は、彼のシャツの下に左手を滑り込ませた。そして、よく鍛えられた肉の凹凸を楽しむように撫で始める。
「えっ? ……何?」
「何だろうねぇ」
確か先生は……。
私は手を上へ滑らせ、突起を摘んだ。
「痛いっ。やめろっ」
「あー、ここは開発だったか」
私が残念そうにすると、状況を理解し始めたのか彼の表情が恐怖に染まりだす。
「……は? 嘘だろ、冗談キツイって。はは……」
目を泳がせ、身体をよじり始めたので、私は右手で彼の顔横を思い切り殴りつけた。すると、小さな悲鳴が彼から漏れた。
「ダメだよ、逃げたりなんてしては。ちゃんと向き合わないと」
彼はすぐ横の拳に釘付けなようで、目を見開き荒く呼吸している。
私が君の顔を殴る訳なんてないのに。
怯えている様がとても愛らしく、誘われるように首筋に顔を埋めると彼の汗と花、ボディシートの柑橘系の香りが混ざった匂いがして、頭がクラクラする。持っていかれてしまいそうな理性を何とか耐えながら舌を這わせると、彼の身体が大きく跳ねた。
その唇から漏れた声が想像より遥かに甘くて、自分の全身にぐわっと血が巡る。
君はこんな声を上げるのか。
もっと聞かせてほしい。
恥ずかしかったのか、彼は耳まで真っ赤になった。
「舐められるの好きなんだね」
耳元でぽそりと囁き縁を舌先でなぞると、また彼の身体が跳ね、甘えるような声を上げた。
先生と好きな所が同じらしい。やはり親子だな。
「黙れっっ」
彼が私の頭を殴った。
重い音と共に、鈍い痛みが広がっていく。
「痛っ……」
「最低だ、お前! 自分が何してるか、分かってんのか⁉」
前にも同じような台詞を聞いたな。
思い出し笑いをすると、「何笑ってんだっ」と叱られてしまった。
「ごめん、ごめん……分かってる、分かってるってば……ゴホッ」
あまりの興奮に咳き込み、喉の調子を整えている私を、彼は不気味なものでも見るかのような目で凝視してくる。
「……はぁ。では、君に問おう。私は何をしているでしょうか?」
「はあ?」
咳き込みながら戯けると、彼は心底訳が分からないという顔をした。
それは仕方ない。
だって彼は、まだ理解していないのだから。
この全てのピースがあるべき箇所に収まり、一枚の絵画が完成したような高揚感を……。
「分からないかなぁ」
「質問に質問で返すな」
それもそうか。
私は彼に顔を近づけた。
「では、回答しよう」
てっきり顔を背けると思ったのに、真っ直ぐ私を睨みつけてくるものだから、嬉しさが込み上げてくる。
あーあ。壊してしまった。
戻らないね、これは。
彼に心底嫌われた。
ならば、もう知るか。
どうせ他に手段などありやしない。
だからせめて、完璧に。
「君を手籠めにしている」
私が笑うと、彼は固まった。
時が止まったかのように口をぽかんと開けていたかと思うと、彼はぱちぱちとまばたきした。
「あれ? 思っていたのと違ったかな?」
「……は……はあ? お前……頭、おかしいんじゃねぇの……?」
「さっき君に頭を強く殴られてしまったからね。それで、おかしくなってしまったのかな」
「ふざけんなっっ」
彼が拳を固める。
また殴られると困るな。
私は最後の手札を切ることにした。
「バラすよ」
その言葉にピクリと反応し、彼は動きを止めた。
「君の母親に、父さんたちのこと、全部」
信じられないという顔で彼が私を見上げてきたので、思わず口角が吊り上がる。そんな私の表情を見た彼は震えだしてしまった。
いけない。怖がらせすぎたか。
「私だって、本当はこんな事したくなかったんだよ」
彼はじっと私を凝視している。
嬉しい。
もっと私だけを見て欲しい。
「でもね、仕方ないんだよ……ほらっ! 君だってさあ! 真っ暗闇の中で一匹の蛍を見つけたら、そりゃあ捕まえるだろう?」
彼の頬にそっと手を添える。
「分かってくれたかな? さあ、選びな。君の家族ごと壊されるか」
彼は微動だにしない。
「君だけが壊されるか」
私はぽつりと呟いた。
そして、彼の両肩を思い切り突き飛ばした。
立ち上がりかけていた彼はバランスを崩し、ソファに沈む。私は彼に乗り上げると、全体重を掛けて押さえつけた。
「痛っ……はぁ?」
「分かった」
「じゃあ、退けよ」
「全部分かったんだ」
「何の話だ」
私は、彼のシャツの下に左手を滑り込ませた。そして、よく鍛えられた肉の凹凸を楽しむように撫で始める。
「えっ? ……何?」
「何だろうねぇ」
確か先生は……。
私は手を上へ滑らせ、突起を摘んだ。
「痛いっ。やめろっ」
「あー、ここは開発だったか」
私が残念そうにすると、状況を理解し始めたのか彼の表情が恐怖に染まりだす。
「……は? 嘘だろ、冗談キツイって。はは……」
目を泳がせ、身体をよじり始めたので、私は右手で彼の顔横を思い切り殴りつけた。すると、小さな悲鳴が彼から漏れた。
「ダメだよ、逃げたりなんてしては。ちゃんと向き合わないと」
彼はすぐ横の拳に釘付けなようで、目を見開き荒く呼吸している。
私が君の顔を殴る訳なんてないのに。
怯えている様がとても愛らしく、誘われるように首筋に顔を埋めると彼の汗と花、ボディシートの柑橘系の香りが混ざった匂いがして、頭がクラクラする。持っていかれてしまいそうな理性を何とか耐えながら舌を這わせると、彼の身体が大きく跳ねた。
その唇から漏れた声が想像より遥かに甘くて、自分の全身にぐわっと血が巡る。
君はこんな声を上げるのか。
もっと聞かせてほしい。
恥ずかしかったのか、彼は耳まで真っ赤になった。
「舐められるの好きなんだね」
耳元でぽそりと囁き縁を舌先でなぞると、また彼の身体が跳ね、甘えるような声を上げた。
先生と好きな所が同じらしい。やはり親子だな。
「黙れっっ」
彼が私の頭を殴った。
重い音と共に、鈍い痛みが広がっていく。
「痛っ……」
「最低だ、お前! 自分が何してるか、分かってんのか⁉」
前にも同じような台詞を聞いたな。
思い出し笑いをすると、「何笑ってんだっ」と叱られてしまった。
「ごめん、ごめん……分かってる、分かってるってば……ゴホッ」
あまりの興奮に咳き込み、喉の調子を整えている私を、彼は不気味なものでも見るかのような目で凝視してくる。
「……はぁ。では、君に問おう。私は何をしているでしょうか?」
「はあ?」
咳き込みながら戯けると、彼は心底訳が分からないという顔をした。
それは仕方ない。
だって彼は、まだ理解していないのだから。
この全てのピースがあるべき箇所に収まり、一枚の絵画が完成したような高揚感を……。
「分からないかなぁ」
「質問に質問で返すな」
それもそうか。
私は彼に顔を近づけた。
「では、回答しよう」
てっきり顔を背けると思ったのに、真っ直ぐ私を睨みつけてくるものだから、嬉しさが込み上げてくる。
あーあ。壊してしまった。
戻らないね、これは。
彼に心底嫌われた。
ならば、もう知るか。
どうせ他に手段などありやしない。
だからせめて、完璧に。
「君を手籠めにしている」
私が笑うと、彼は固まった。
時が止まったかのように口をぽかんと開けていたかと思うと、彼はぱちぱちとまばたきした。
「あれ? 思っていたのと違ったかな?」
「……は……はあ? お前……頭、おかしいんじゃねぇの……?」
「さっき君に頭を強く殴られてしまったからね。それで、おかしくなってしまったのかな」
「ふざけんなっっ」
彼が拳を固める。
また殴られると困るな。
私は最後の手札を切ることにした。
「バラすよ」
その言葉にピクリと反応し、彼は動きを止めた。
「君の母親に、父さんたちのこと、全部」
信じられないという顔で彼が私を見上げてきたので、思わず口角が吊り上がる。そんな私の表情を見た彼は震えだしてしまった。
いけない。怖がらせすぎたか。
「私だって、本当はこんな事したくなかったんだよ」
彼はじっと私を凝視している。
嬉しい。
もっと私だけを見て欲しい。
「でもね、仕方ないんだよ……ほらっ! 君だってさあ! 真っ暗闇の中で一匹の蛍を見つけたら、そりゃあ捕まえるだろう?」
彼の頬にそっと手を添える。
「分かってくれたかな? さあ、選びな。君の家族ごと壊されるか」
彼は微動だにしない。
「君だけが壊されるか」
