「僕、加賀美光月。京本優希くん、友達になってください」
高二の春、俺に新しい友達ができた。
前の席に座る加賀美くんが笑顔で差し出す手を取ると、「いいぞ。よろしく」と俺は快諾した。
「良かった。僕のことは、ミツって呼んでね。君のことは、ユウって呼ぶから」
いきなり渾名?
「それで、友達って何をするの?」
親しい友人が見事に一人もいないクラスになってしまった俺には、この見るからに一軍であろう美形からのお友達申請はまさに渡りに豪華客船と思ったが、早速訂正する必要がありそうだ。
「……今までのお友達とは……何をしていたんだ?」
「僕、友達いた事ないから、分からない」
「そっか……」
ヤバ系かもしれん。
いかん、いかん。ここはポジティブに考えよう。
折角縁あって前後の席になった上に、俺と友達になりたいと言ってくれたんだ。
友達がいたことない?
それがどうした。
お友達第一号として、俺が色々教えてあげればいいだけだ。
「よし。……ミツ。俺が『友達』というものを教えてやるよ」
彼は不思議そうに頭を傾げた。
その日から、俺はミツと行動を共にすることにした。
「ミツ。昼一緒に食お」
「ミツ。ペア組も」
「ミツ。日曜どっか行こ」
というか、話し掛けまくった。
こういうタイプは、とにかく押す。
押して押して押しまくるのみ。
作戦が功を奏し、ミツは俺を見るだけで笑顔になるまでに成長を遂げた。可愛い。耳と尻尾が見える。
俺は始業式から一月のうちにクラス全員と仲良くなったが、ミツは俺以外と関わろうとしない。俺が他の奴らと話しているときは、難しそうな新書を読む、勉強する、スマホで株のトレードに興じるのどれかだ。
「皆と仲良くしなくていいのか?」
「必要ないから」
とのこと。
俺とは楽しそうに話しているので、人が嫌いというよりかはシンプルに興味がないのだろう。
では、何故俺が。
理由を尋ねても、クスクスと笑い「秘密」と答えるだけだった。
話すとほわほわしているが、黙ると整った外見ゆえ近寄りがたい。おまけに成績優秀、この学校でも頭一つ抜けて金持ちときた。皆は遠巻きに見るしかできない。
そんなミツが自分にだけ懐いている事に、俺は優越感すら抱くようになった。
しかし、それを気に食わないと思う奴もいる。
「ユウ、それでね」
「うちの弟をあまり誑かさないでもらえるかな」
「げっ」
昼休み、ミツと昼食をとっていると、偶にそいつは現れる。
「ハル」
「やぁ、ミツ。順調かな?」
「うん」
加賀美陽輝。
ミツの双子の兄。
厨二病あるいは高二病。
「それは何より。君、いいかい? ミツに少しでも変な事をしたら、地獄に落ちる日を早めるからね」
こいつに俺はめちゃくちゃ嫌われている。
「何で俺は地獄行き確定なんだよ」
「そりゃあ、罪深いからさ」
「俺に弟とられたから僻んでるんだ」
「は?」
「やめなよ……」
ミツは立ち上がると、一触即発状態の俺たちの間に入った。
こうして並ぶと本当にそっくりだ。
身長、顔、体格。
違うのは、表情や纏う雰囲気くらい。
「心配しないで。僕、頑張ってるから」
「ごめんね。私も分かってはいるんだ。でも、こいつの顔を見ると頭に血が上ってしまってね」
ハルはミツの頭を撫でると、こちらを睨み、俺の弁当から玉子焼きをひょいと掴んで食べた。
「泥棒!」
父さんが作ってくれたのに!
「じゃあね、ミツ」
ひらひらと手を振り、奴は教室から出ていった。
「あいつ、マジで何?」
「心配症なんだよ……。ごめんね、代わりに僕のハンバーグあげるから」
ミツが申し訳なさそうに、弁当から大きめのハンバーグをまるまる一つ差し出してきた。
「いや、そんなのもらえないって」
「でも」
「じゃあ、半分だけもらうわ」
俺がそう言うと、ミツはパアッと笑顔になった。そして、にこにことハンバーグを箸で半分に切り始める。奴が溺愛するのもよく分かる。
「でも、高二であれはないだろ」
「僕、今までずっと対人はハル任せだったから」
「とは言っても、弟離れしろよな。っていうか俺にだけ当たり強くない? 他の奴らには愛想めっちゃいいじゃん、あいつ」
「それはそうだよ」
「え?」
俺が聞き返すと、ミツははっとした。そして緩く首を振り「何でもない」と微笑んだ。
高二の春、俺に新しい友達ができた。
前の席に座る加賀美くんが笑顔で差し出す手を取ると、「いいぞ。よろしく」と俺は快諾した。
「良かった。僕のことは、ミツって呼んでね。君のことは、ユウって呼ぶから」
いきなり渾名?
「それで、友達って何をするの?」
親しい友人が見事に一人もいないクラスになってしまった俺には、この見るからに一軍であろう美形からのお友達申請はまさに渡りに豪華客船と思ったが、早速訂正する必要がありそうだ。
「……今までのお友達とは……何をしていたんだ?」
「僕、友達いた事ないから、分からない」
「そっか……」
ヤバ系かもしれん。
いかん、いかん。ここはポジティブに考えよう。
折角縁あって前後の席になった上に、俺と友達になりたいと言ってくれたんだ。
友達がいたことない?
それがどうした。
お友達第一号として、俺が色々教えてあげればいいだけだ。
「よし。……ミツ。俺が『友達』というものを教えてやるよ」
彼は不思議そうに頭を傾げた。
その日から、俺はミツと行動を共にすることにした。
「ミツ。昼一緒に食お」
「ミツ。ペア組も」
「ミツ。日曜どっか行こ」
というか、話し掛けまくった。
こういうタイプは、とにかく押す。
押して押して押しまくるのみ。
作戦が功を奏し、ミツは俺を見るだけで笑顔になるまでに成長を遂げた。可愛い。耳と尻尾が見える。
俺は始業式から一月のうちにクラス全員と仲良くなったが、ミツは俺以外と関わろうとしない。俺が他の奴らと話しているときは、難しそうな新書を読む、勉強する、スマホで株のトレードに興じるのどれかだ。
「皆と仲良くしなくていいのか?」
「必要ないから」
とのこと。
俺とは楽しそうに話しているので、人が嫌いというよりかはシンプルに興味がないのだろう。
では、何故俺が。
理由を尋ねても、クスクスと笑い「秘密」と答えるだけだった。
話すとほわほわしているが、黙ると整った外見ゆえ近寄りがたい。おまけに成績優秀、この学校でも頭一つ抜けて金持ちときた。皆は遠巻きに見るしかできない。
そんなミツが自分にだけ懐いている事に、俺は優越感すら抱くようになった。
しかし、それを気に食わないと思う奴もいる。
「ユウ、それでね」
「うちの弟をあまり誑かさないでもらえるかな」
「げっ」
昼休み、ミツと昼食をとっていると、偶にそいつは現れる。
「ハル」
「やぁ、ミツ。順調かな?」
「うん」
加賀美陽輝。
ミツの双子の兄。
厨二病あるいは高二病。
「それは何より。君、いいかい? ミツに少しでも変な事をしたら、地獄に落ちる日を早めるからね」
こいつに俺はめちゃくちゃ嫌われている。
「何で俺は地獄行き確定なんだよ」
「そりゃあ、罪深いからさ」
「俺に弟とられたから僻んでるんだ」
「は?」
「やめなよ……」
ミツは立ち上がると、一触即発状態の俺たちの間に入った。
こうして並ぶと本当にそっくりだ。
身長、顔、体格。
違うのは、表情や纏う雰囲気くらい。
「心配しないで。僕、頑張ってるから」
「ごめんね。私も分かってはいるんだ。でも、こいつの顔を見ると頭に血が上ってしまってね」
ハルはミツの頭を撫でると、こちらを睨み、俺の弁当から玉子焼きをひょいと掴んで食べた。
「泥棒!」
父さんが作ってくれたのに!
「じゃあね、ミツ」
ひらひらと手を振り、奴は教室から出ていった。
「あいつ、マジで何?」
「心配症なんだよ……。ごめんね、代わりに僕のハンバーグあげるから」
ミツが申し訳なさそうに、弁当から大きめのハンバーグをまるまる一つ差し出してきた。
「いや、そんなのもらえないって」
「でも」
「じゃあ、半分だけもらうわ」
俺がそう言うと、ミツはパアッと笑顔になった。そして、にこにことハンバーグを箸で半分に切り始める。奴が溺愛するのもよく分かる。
「でも、高二であれはないだろ」
「僕、今までずっと対人はハル任せだったから」
「とは言っても、弟離れしろよな。っていうか俺にだけ当たり強くない? 他の奴らには愛想めっちゃいいじゃん、あいつ」
「それはそうだよ」
「え?」
俺が聞き返すと、ミツははっとした。そして緩く首を振り「何でもない」と微笑んだ。
