これからの予定を含め、スケジュールを組むことにした。
すっかり忘れていたが、学校行事を無視するわけにもいかない。
「っていうか、さすがに補習とかは大丈夫なレベル?」
二人がどれくらい勉強ができるかまでは、さすがに知らなかった。一応、望陽も風太も塾などには行っていないらしい。
「ああ、俺は、まあ大丈夫」
言いながら、風太はチラリと望陽を見る。僕もその視線を追うと、望陽は変な顔で口を結んでいた。
「望陽……?」
「いや、あの……前回は、もう進級も危ういレベルでして」
「えっ!?」
まるで謝罪会見でも始めるように、望陽はその場に正座して、縮こまりながら続けた。
「えっと……中学受験で一生分の勉強をした気になっていまして……あとは、まあ、ギリギリでもなんとか過ごせればいいかなと。テスト前にもろくに勉強してこなくてですね……」
「いや、それで赤点取ってたら世話ないだろ」
風太が呆れたため息をついた。望陽がますます縮こまる。
「はい。もう、やらないもんだから、できなくなる一方でして……」
「そりゃあ、そうだろうね」
僕からもため息が漏れた。
今は卒業後の進路まで考える必要はない。ただ、補習なんていう、本来必要のないものに時間を割くほど余裕があるわけでもない。それに、一応私立校なのだから、成績次第では進級だって危うくなるかもしれない。
「じゃあ、勉強の時間もしっかり取らなきゃダメだね……」
「本当に申し訳ない」
望陽がガクッと頭を落とした。
本当は、勉強は各自でやってもらって、三人で集まれる時はお笑いの方に集中したかったが――おそらく、勉強の習慣がない望陽は、誰かの目がないとできない状態になってしまっているだろう。
「じゃあ、中間までは、まず九十分勉強して、休憩がてら三十分ネタの話し合い、みたいな感じにしようか?」
風太がじろりと望陽を睨む。
望陽はへらっと笑う。これは望陽の癖だが、心なしかいつもよりは申し訳なさそうな顔をしているので、風太も僕も諦めたように鼻からふぅっと長い息を吐いた。
「じゃあ、集まれる時は集まるでもいい?」
僕の提案に、二人が頷く。
「放課後と休みの日も集まりたいんだけど、都合は?」
僕たちが通う学校は、やむを得ない事情がない限りはバイト禁止なので、そのへんは心配ないだろう。
先に風太が小さく手を上げた。
「あ、俺、水曜の放課後は無理かな? あとは土日とかも大丈夫」
「なにかあるの?」
何気なく聞いたつもりだったが、自分が予定ゼロなのをいいことに、詰めている感じになっていないか不安になった。もしくは、踏み込み過ぎか。
だいぶ打ち解けたつもりではあったが、この辺の距離感がなかなかつかめない。
「いや、その日は親が遅いから、俺が夕飯係なんだよね……買い出しとか妹の迎えとか考えると、ちょっとでも残るの難しいかも」
そんな僕の不安をよそに、風太はなんでもないことのように言った。
「え、料理できんの!?」
望陽と僕が同時に反応した。
おそらく望陽は風太の家族構成くらいは知っているのだろう。ただ、料理ができることが意外だったらしい。
風太が少し心外そうに眉間に皺を寄せた。
「うち、共働きだから、普通に家事は分担してやってるけど? そんな意外?」
「いや、でも料理って、家事としても高度じゃない?」
望陽の言葉に、僕は内心で頷いた。それに僕まで同調すると、風太が拗ねてしまいそうだったからだ。
なんでもそつなくこなす風太なら、ある程度の家事はできるだろうけれど、なんとなく料理となると、焼く、炒める、チンする、みたいなTHE男子飯くらいしか思いつかなかった。
「するよ。っていっても週一と、たまに昼飯作るくらいだから、大したもの作れるわけじゃないけど。妹と弟たちの分もね」
「え、弟もいるの?」
「ああ。妹一人に弟二人」
「わぁ、お兄ちゃんなんだ」
「意外か?」
「あ、いや……」
勝手なイメージではあるが、風太はなんとなく、男ばかりの兄弟の二番目とか三番目だと思っていた。
「多日登は?」
「あ、僕は、歳の近い兄と、歳の離れた弟がいるよ」
「えっ?」
望陽と風太の声が重なった。
「一人っ子だと思ってた」
「俺も……」
顔を見合わせる二人に、一体どんな風に見えているのかと思ったが、風太に対して僕も偏見を持っていたので何も言えない。
ちなみに望陽は、予想通り年の離れた兄姉がいる末っ子だ。
「あー、俺はね、土曜日は午前中ピアノがあるから」
「ピアノ!?」
今度は僕と風太の声が重なった。
僕は親しくなってから間もないので、そんな一面があるのに驚くのはわかる。
しかし、付き合いの長い風太も知らなかったのは意外だった。
「あれ? 言ってなかったっけ? コンクールに出ろ出ろって感じの先生じゃないから、幼稚園から好きにやらせてもらってるけど」
幼稚園から今まで続けているのなら、それなりの腕前ではあるのだろう。望陽が提案するリズムネタや歌ネタなどを考えると、案外腑に落ちるものだった。
「じゃあ、放課後はここに集まるとして、休みの日はどうする?」
「まあ、俺んちでいいよ。親はいたりいなかったりするけど、自分の部屋もあるし。親がいない日はどうせ昼飯も作らなきゃならないし、逆に都合いいかも?」
風太の提案に僕は頷いた。
「じゃあ、お言葉に甘えて、そうしよう」
「えー、じゃあ、俺らの分も昼飯、風太が作ってくれるの?」
多少の茶化しも含めて、望陽は言ったのだろうが、風太はあっさりと頷いた。
「うん。全然いいけど」
「いやいや、それは悪いから、持ち寄ったり出前代くらい出すよ」
僕が慌てて手を振ると、風太は少し不機嫌そうに唇を結んだ。
「いや、これからエントリー代もかかってくるし、余計な金は使わない方がいいだろ」
その言葉が本音なのか、実は僕たちに料理を振る舞いたいのかまでは、よくわからなかった。
すっかり忘れていたが、学校行事を無視するわけにもいかない。
「っていうか、さすがに補習とかは大丈夫なレベル?」
二人がどれくらい勉強ができるかまでは、さすがに知らなかった。一応、望陽も風太も塾などには行っていないらしい。
「ああ、俺は、まあ大丈夫」
言いながら、風太はチラリと望陽を見る。僕もその視線を追うと、望陽は変な顔で口を結んでいた。
「望陽……?」
「いや、あの……前回は、もう進級も危ういレベルでして」
「えっ!?」
まるで謝罪会見でも始めるように、望陽はその場に正座して、縮こまりながら続けた。
「えっと……中学受験で一生分の勉強をした気になっていまして……あとは、まあ、ギリギリでもなんとか過ごせればいいかなと。テスト前にもろくに勉強してこなくてですね……」
「いや、それで赤点取ってたら世話ないだろ」
風太が呆れたため息をついた。望陽がますます縮こまる。
「はい。もう、やらないもんだから、できなくなる一方でして……」
「そりゃあ、そうだろうね」
僕からもため息が漏れた。
今は卒業後の進路まで考える必要はない。ただ、補習なんていう、本来必要のないものに時間を割くほど余裕があるわけでもない。それに、一応私立校なのだから、成績次第では進級だって危うくなるかもしれない。
「じゃあ、勉強の時間もしっかり取らなきゃダメだね……」
「本当に申し訳ない」
望陽がガクッと頭を落とした。
本当は、勉強は各自でやってもらって、三人で集まれる時はお笑いの方に集中したかったが――おそらく、勉強の習慣がない望陽は、誰かの目がないとできない状態になってしまっているだろう。
「じゃあ、中間までは、まず九十分勉強して、休憩がてら三十分ネタの話し合い、みたいな感じにしようか?」
風太がじろりと望陽を睨む。
望陽はへらっと笑う。これは望陽の癖だが、心なしかいつもよりは申し訳なさそうな顔をしているので、風太も僕も諦めたように鼻からふぅっと長い息を吐いた。
「じゃあ、集まれる時は集まるでもいい?」
僕の提案に、二人が頷く。
「放課後と休みの日も集まりたいんだけど、都合は?」
僕たちが通う学校は、やむを得ない事情がない限りはバイト禁止なので、そのへんは心配ないだろう。
先に風太が小さく手を上げた。
「あ、俺、水曜の放課後は無理かな? あとは土日とかも大丈夫」
「なにかあるの?」
何気なく聞いたつもりだったが、自分が予定ゼロなのをいいことに、詰めている感じになっていないか不安になった。もしくは、踏み込み過ぎか。
だいぶ打ち解けたつもりではあったが、この辺の距離感がなかなかつかめない。
「いや、その日は親が遅いから、俺が夕飯係なんだよね……買い出しとか妹の迎えとか考えると、ちょっとでも残るの難しいかも」
そんな僕の不安をよそに、風太はなんでもないことのように言った。
「え、料理できんの!?」
望陽と僕が同時に反応した。
おそらく望陽は風太の家族構成くらいは知っているのだろう。ただ、料理ができることが意外だったらしい。
風太が少し心外そうに眉間に皺を寄せた。
「うち、共働きだから、普通に家事は分担してやってるけど? そんな意外?」
「いや、でも料理って、家事としても高度じゃない?」
望陽の言葉に、僕は内心で頷いた。それに僕まで同調すると、風太が拗ねてしまいそうだったからだ。
なんでもそつなくこなす風太なら、ある程度の家事はできるだろうけれど、なんとなく料理となると、焼く、炒める、チンする、みたいなTHE男子飯くらいしか思いつかなかった。
「するよ。っていっても週一と、たまに昼飯作るくらいだから、大したもの作れるわけじゃないけど。妹と弟たちの分もね」
「え、弟もいるの?」
「ああ。妹一人に弟二人」
「わぁ、お兄ちゃんなんだ」
「意外か?」
「あ、いや……」
勝手なイメージではあるが、風太はなんとなく、男ばかりの兄弟の二番目とか三番目だと思っていた。
「多日登は?」
「あ、僕は、歳の近い兄と、歳の離れた弟がいるよ」
「えっ?」
望陽と風太の声が重なった。
「一人っ子だと思ってた」
「俺も……」
顔を見合わせる二人に、一体どんな風に見えているのかと思ったが、風太に対して僕も偏見を持っていたので何も言えない。
ちなみに望陽は、予想通り年の離れた兄姉がいる末っ子だ。
「あー、俺はね、土曜日は午前中ピアノがあるから」
「ピアノ!?」
今度は僕と風太の声が重なった。
僕は親しくなってから間もないので、そんな一面があるのに驚くのはわかる。
しかし、付き合いの長い風太も知らなかったのは意外だった。
「あれ? 言ってなかったっけ? コンクールに出ろ出ろって感じの先生じゃないから、幼稚園から好きにやらせてもらってるけど」
幼稚園から今まで続けているのなら、それなりの腕前ではあるのだろう。望陽が提案するリズムネタや歌ネタなどを考えると、案外腑に落ちるものだった。
「じゃあ、放課後はここに集まるとして、休みの日はどうする?」
「まあ、俺んちでいいよ。親はいたりいなかったりするけど、自分の部屋もあるし。親がいない日はどうせ昼飯も作らなきゃならないし、逆に都合いいかも?」
風太の提案に僕は頷いた。
「じゃあ、お言葉に甘えて、そうしよう」
「えー、じゃあ、俺らの分も昼飯、風太が作ってくれるの?」
多少の茶化しも含めて、望陽は言ったのだろうが、風太はあっさりと頷いた。
「うん。全然いいけど」
「いやいや、それは悪いから、持ち寄ったり出前代くらい出すよ」
僕が慌てて手を振ると、風太は少し不機嫌そうに唇を結んだ。
「いや、これからエントリー代もかかってくるし、余計な金は使わない方がいいだろ」
その言葉が本音なのか、実は僕たちに料理を振る舞いたいのかまでは、よくわからなかった。
