昼休みに比べて、多少テンションは低めだったが、無事、全てのネタの読み合わせが終わった。
僕はノートをすぐに閉じる。僕の手元を望陽と風太は不思議そうに見つめていた。
これから、ノートに書いたメモと照らし合わせて、長々とお説教でもあると思っていたのだろうか。
「ネタ、思いのほか、しっかりしてて、面白かったよ――でも、笑えなくてごめん」
僕がそう切り出すと、望陽と風太は顔を見合わせた。
「なんていうか、僕が上手に笑えないからって言うより、普通に笑えなかった」
さすがにハッキリ言い過ぎたかと思ったが、望陽と風太も、真剣な顔で頷いた。おそらく、読み合わせをしてみて、自分たちでもそう感じたのだろう。
「まず、君たち、ビジュ良すぎ」
「えっ!?」
望陽と風太の真剣な顔が一気に崩れた。
多少、間は取ってしまったが、これは本心だった。問題はネタじゃない。ビジュアルとネタが合っていないのだ。
「多分、望陽のネタをやりたいなら、望陽はもっと不細工になるべきだし、風太のネタをやりたいなら、もっと陰キャオーラを出すべきだと思う。でも、君たちって、どっからどう見てもクラスヒエラルキートップのイケメン陽キャなんだよ」
「中には、実際はカッコいいけど、太って角刈りとか坊主にして、ビジュアルを変えてまで自分たちのやりたいネタやってる芸人さんもいるけれど、このネタのためにそこまでするほどじゃないかなってのが素直な感想」
一気に捲し立てると、望陽と風太は呆然としたように僕を見ていた。それから、また二人で顔を見合わせる。
「いや、でも多日登……俺たち……」
「なぁ、ビジュ売りしたくないんだけど……」
「じゃあ、まず坊主にしてきて、それから、太るように菓子パンいっぱい食べなよ」
僕って、こんなに大人げなかったんだ、と自分でも少し呆れる。
でも、二人が真剣にやりたいと言ってるのだから、真剣に向き合いたいと思っていた。そのせいで、どうも言葉を選べない。
「ごめん。言い過ぎた。気持ちはわかるよ、ビジュ売り勧められて研究部飛び出してきたんだもんね……でも、僕が言ってるのはそういうことであって、そういうことじゃないんだ」
「え?」
「だから、売れるものは何でも売ろう! 君たち、ネタよりもそのビジュでふざけ合ってるのが面白いんだと思う」
「つまり?」
風太が眉を寄せた。
僕は頷いた。
「つまり、しゃべくり漫才がベスト!」
「え、え?」
望陽もわからないと言うように、こめかみに指を当てて、宙に視線を泳がせていた。
「だから、そのビジュアルで、高校生男子が軽口の延長でふざけ合ってるのが楽しいんだって」
「いや、待って待って、それじゃあ、やっぱり、佐山たちが言ってるのと変わらなくね?」
少しがっかりしたように風太がため息をついた。
「まあ、つまりそのクソ先輩が言っていたことも一理ある。だけど、君たちはしっかりネタというかキャラを作って、その上でビジュも武器にするってこと」
「ん、ごめん。まだわからん」
「だから、風太のサイコネタは、ビジュはいいけどちょっとキレてるキャラとして活かす。望陽のふざけネタは、ビジュはいいけどちょっと飛んでるキャラとして活かす。その二人で、しゃべくり漫才を目指すんだ!」
決まったとばかりに拳を握る僕に対し、二人はぽかんと口を開けた。
急に恥ずかしくなってきた。
多分、拳を握りながら満面の笑みでも浮かべられたら良かったのだけれど、ほぼ表情筋が動いてなかったせいで、いまいち伝わっていないのかもしれない。
「まあ、とりあえず、二人のネタのどちらかを選ぶというより、そのままキャラとして落とし込んで、ネタ自体は、しゃべくり中心で……」
「う、うん……うん?」
「お、おう……」
「あーもう、いいよ! とりあえず、みんなで一緒に作ろう!」
「あ、うん」
それならわかったらしく、望陽も風太も同時に頷いた。
「じゃあ……スケジュールなんだけど、放課後とか土日とかもできれば集まりたいんだけど……」
僕はスマホを取り出した。
メッセージアプリにあるスケジュール調整機能の画面に手早く決定事項のみを入力して、上目で二人を窺う。
それに、望陽も風太も少しギョッとしたように目を丸くしてから、自分のスマホを取り出した。
「休みも集まるのはいいけどさ……」
風太がスマホに視線を落とす。
「場所とかもあるしね」
望陽が、風太のスマホを覗き込む。
風太は自分のスマホ画面をサッと胸元に隠した。
「放課後はここでいいとして――土曜なら、俺んちでいいよ」
「うん。じゃあ、そうしよう。あとは、これにお互いのスケジュール入力して、場所も合わせて調整しようか」
そう言うと、僕は、自分の予定――と言っても、ほとんどないけれど――とエントリー期間などを入力したスケジュールを送信した。
それを受け取って確認した望陽と風太が、同時に「ん?」とスマホ画面に釘付けになった。
「この……テスト勉強って?」
望陽の言葉に僕はきょとんと首を傾げた。
「いや、一応、学生の本分は勉強でしょ?」
望陽と風太は、また顔を見合わせた。
僕はノートをすぐに閉じる。僕の手元を望陽と風太は不思議そうに見つめていた。
これから、ノートに書いたメモと照らし合わせて、長々とお説教でもあると思っていたのだろうか。
「ネタ、思いのほか、しっかりしてて、面白かったよ――でも、笑えなくてごめん」
僕がそう切り出すと、望陽と風太は顔を見合わせた。
「なんていうか、僕が上手に笑えないからって言うより、普通に笑えなかった」
さすがにハッキリ言い過ぎたかと思ったが、望陽と風太も、真剣な顔で頷いた。おそらく、読み合わせをしてみて、自分たちでもそう感じたのだろう。
「まず、君たち、ビジュ良すぎ」
「えっ!?」
望陽と風太の真剣な顔が一気に崩れた。
多少、間は取ってしまったが、これは本心だった。問題はネタじゃない。ビジュアルとネタが合っていないのだ。
「多分、望陽のネタをやりたいなら、望陽はもっと不細工になるべきだし、風太のネタをやりたいなら、もっと陰キャオーラを出すべきだと思う。でも、君たちって、どっからどう見てもクラスヒエラルキートップのイケメン陽キャなんだよ」
「中には、実際はカッコいいけど、太って角刈りとか坊主にして、ビジュアルを変えてまで自分たちのやりたいネタやってる芸人さんもいるけれど、このネタのためにそこまでするほどじゃないかなってのが素直な感想」
一気に捲し立てると、望陽と風太は呆然としたように僕を見ていた。それから、また二人で顔を見合わせる。
「いや、でも多日登……俺たち……」
「なぁ、ビジュ売りしたくないんだけど……」
「じゃあ、まず坊主にしてきて、それから、太るように菓子パンいっぱい食べなよ」
僕って、こんなに大人げなかったんだ、と自分でも少し呆れる。
でも、二人が真剣にやりたいと言ってるのだから、真剣に向き合いたいと思っていた。そのせいで、どうも言葉を選べない。
「ごめん。言い過ぎた。気持ちはわかるよ、ビジュ売り勧められて研究部飛び出してきたんだもんね……でも、僕が言ってるのはそういうことであって、そういうことじゃないんだ」
「え?」
「だから、売れるものは何でも売ろう! 君たち、ネタよりもそのビジュでふざけ合ってるのが面白いんだと思う」
「つまり?」
風太が眉を寄せた。
僕は頷いた。
「つまり、しゃべくり漫才がベスト!」
「え、え?」
望陽もわからないと言うように、こめかみに指を当てて、宙に視線を泳がせていた。
「だから、そのビジュアルで、高校生男子が軽口の延長でふざけ合ってるのが楽しいんだって」
「いや、待って待って、それじゃあ、やっぱり、佐山たちが言ってるのと変わらなくね?」
少しがっかりしたように風太がため息をついた。
「まあ、つまりそのクソ先輩が言っていたことも一理ある。だけど、君たちはしっかりネタというかキャラを作って、その上でビジュも武器にするってこと」
「ん、ごめん。まだわからん」
「だから、風太のサイコネタは、ビジュはいいけどちょっとキレてるキャラとして活かす。望陽のふざけネタは、ビジュはいいけどちょっと飛んでるキャラとして活かす。その二人で、しゃべくり漫才を目指すんだ!」
決まったとばかりに拳を握る僕に対し、二人はぽかんと口を開けた。
急に恥ずかしくなってきた。
多分、拳を握りながら満面の笑みでも浮かべられたら良かったのだけれど、ほぼ表情筋が動いてなかったせいで、いまいち伝わっていないのかもしれない。
「まあ、とりあえず、二人のネタのどちらかを選ぶというより、そのままキャラとして落とし込んで、ネタ自体は、しゃべくり中心で……」
「う、うん……うん?」
「お、おう……」
「あーもう、いいよ! とりあえず、みんなで一緒に作ろう!」
「あ、うん」
それならわかったらしく、望陽も風太も同時に頷いた。
「じゃあ……スケジュールなんだけど、放課後とか土日とかもできれば集まりたいんだけど……」
僕はスマホを取り出した。
メッセージアプリにあるスケジュール調整機能の画面に手早く決定事項のみを入力して、上目で二人を窺う。
それに、望陽も風太も少しギョッとしたように目を丸くしてから、自分のスマホを取り出した。
「休みも集まるのはいいけどさ……」
風太がスマホに視線を落とす。
「場所とかもあるしね」
望陽が、風太のスマホを覗き込む。
風太は自分のスマホ画面をサッと胸元に隠した。
「放課後はここでいいとして――土曜なら、俺んちでいいよ」
「うん。じゃあ、そうしよう。あとは、これにお互いのスケジュール入力して、場所も合わせて調整しようか」
そう言うと、僕は、自分の予定――と言っても、ほとんどないけれど――とエントリー期間などを入力したスケジュールを送信した。
それを受け取って確認した望陽と風太が、同時に「ん?」とスマホ画面に釘付けになった。
「この……テスト勉強って?」
望陽の言葉に僕はきょとんと首を傾げた。
「いや、一応、学生の本分は勉強でしょ?」
望陽と風太は、また顔を見合わせた。
