それから、二十年が経った。今、優月は結婚して、高校生の息子がいる。
数か月前、デパートで優月とばったり再会した。子供と一緒にいる優月を見て、やっぱりあの時、優月は結婚や、私との将来について悩んでいたのかもしれないと思った。
優月が、また会いたいと言った。
私も会いたかった。
それから、私たちは月に何度か会うようになった。
あれから、私も何人かと付き合った。でも、やっぱり優月のことを忘れられなかった。私は、あの頃の気持ちと何も変わっていない。
優月は母になって、強くなったように思う。今のところ、優月から私を試すようなことは言われていない。まぁ、もう、試す必要もないのかもしれないけれど。
私は、優月の家族とも会うようになった。優月は夫と息子に、私をとても大切な親友だと紹介した。そう、私たちは親友だ。色々あったけど、今は親友なのだ。
それでもやっぱり私は優月が好きだ。
――もういいや。恋人だとか、親友だとか、そんな肩書きなんて、付けなくていい。私は優月を愛している。それだけでいい。そこに名前なんてつけなくてもいいんだと思う。
優月は家族を大切にしている。私も優月が大切にしている人たちを大切にしたい。
優月がキッチンで、お茶を入れるためのお湯を沸かしている。
リビングからは、優月が手入れしている庭が見えた。薔薇の花が綺麗に咲いている。
「薔薇、綺麗だね」
振り返ると、優月が優しく微笑んでいた。
優月は時々、私を愛おしそうに見つめる。私もそれに気づいているけれど、私がそれを受け入れていいのか分からない。優月はそうやって、私をまた試しているのだろうか? それとも、親友という一線を越えれば家族との関係が壊れてしまうと思って、踏みとどまっているのかもしれない……。
――あ、私、進歩してない。
私は可笑しくなって、優月のそばにゆっくりと歩み寄った。
「ねぇ、優月。私はまだ優月のことを愛しているよ」
優月が驚いたように私を見た。
「だからこれからのこと、ちゃんと話したい」
「叶芽……」
「優月、家族のことも大切なんでしょ。壊したくないのかなって……当たり前だよね」
私が笑うと、優月が少し困ったように笑った。
「優月が私を試したくなったのはさ、私がちゃんと言葉にしてなかったからかなって今思った。だからゆっくりでいいからさ、優月の気持ちも知りたい。どうしていくのがいいのかちゃんと話していこうよ」
「うん」
優月の瞳に涙が滲んでいた。
私はそれを指で拭って微笑んだ。
「手伝うよ」
私は優月と一緒に食器棚からカップを取り出した。
「私が叶芽を試したのは叶芽のせいじゃないよ。私が怖がってただけ」
私はふふっと笑って頷いた。
「ありがとう」
「うん」
優月がティーポットに湯を注いだ。ゆっくりと紅茶の茶葉が広がっていった。
優月が家族と一緒に作り上げてきたものを私も大切にしたいと思った。そして、私たちのこの気持ちも大切にしていきたいと思う。
二階の部屋から優月の息子が弾くギターの音が聞こえた。窓の外には色鮮やかな薔薇が風に静かに揺れていた。
