「嫌いになったんじゃないけど。好きだから、別れたい」
付き合って三年。ある日、私は恋人からそう言われた。
中学三年生の時、私は親友の優月と絶交した。優月とは小学三年生からの付き合いだった。
それから七年後、私たちは小学校の同窓会で再会した。
私たちの小学校は六年生になる頃、生徒が多くなりすぎて二つの学校に分かれた。新しくできた学校の卒業第一期生となった私たちは、記念として校庭にタイムカプセルを埋めた。
それから十年後、そのタイムカプセルを開ける同窓会があった。正直、行くかどうか迷った。優月とのことは、恥ずかしくて痛い思い出として、心の奥に鍵をかけて閉じ込めていた。それほど、私には触れたくない過去の出来事になっていた。でも、それと同時に会いたい気持ちもあった。絶交してから七年も経っている。優月はもう、あんな出来事は忘れてしまっているかもしれない。いや、きっと忘れている。私との思い出なんて彼女の中ではそんな程度だろう。
それに、行かないことで、まだ気にしているのかと思われるよりも、同窓会へ行って、そんなこともあったねと笑えた方が、自分のプライドも守れるような気がした。まぁそんなこと考えている時点で、あの頃の私はまだそのことを気にしていたということなんだけど。
優月と初めて会ったのは、私が小学三年生の時だった。私は引っ越しをして、同じクラスだった優月と友達になった。その頃から優月は優しくて、最初に話しかけてくれたクラスメイトだった。家が近かったこともあって、中学生になった頃には、お互いに『親友だよね』と言い合うほど仲良くなった。私たちは、他の人なんて見えていないくらい、二人だけでよく遊んだ。同じ漫画を好きになって、二人で盛り上がった。
部活も同じバスケ部だった。私は二年生の終わり頃にキャプテンになり、優月はずっとマネージャーをしていた。スポーツは得意じゃないくせに、「叶芽と同じ部活がいいから」と、マネージャーとしてバスケ部に入ったのだ。練習が終わると、優月は決まって私のそばへ来て、「一緒に帰ろ」と甘えるように腕を絡めてきた。
そういう優月のところが、私はいつも照れくさくて、嬉しかった。
でも、中学三年生の、ちょうど部活を引退する頃、優月が私に嘘をついた。
「今日は進路の話で先生に呼ばれてて長くなりそうだから、先に帰っててほしい」――と。
私と優月はクラスは別々だった。それでも、休み時間も、お昼休みも一緒にいた。部活をしていた時も引退してからも、一緒に登下校していた。それなのに、その日はそう言われて、仕方なく帰った。私は、一度家に帰ってから、何となくソワソワして、家の周りを自転車であてもなくぷらぷらしていた。その時、同じクラスの阿部君と優月が恥ずかしそうにしながら、横に並んで歩いているのを見かけた。優月は恥ずかしそうにその子を見て笑っていた。それを見て、全身から血の気が引いたように、頭が真っ白になった。私は気づかれないように慌てて自転車の向きを変えると、思いっきりぶっ飛ばして、家まで帰った。
そして、泣いた。涙が止まらなくて。全身から悲鳴が聞こえるかのように、震えが止まらなかった。ベッドの上で枕に顔を押し付けて、しゃくりあげてしまう声を消した。
自分に嘘をつかれたことがショックだったのか、それとも優月が離れていきそうで怖かったのか分からなかったけど、私の涙はしばらく止まらなかった。
次の日、優月から「阿部くんと付き合うかも」と聞かされた。私はそれを知った時、なぜか許せなくて「進路相談だなんて、嘘つくとか最低」と言って、優月と絶交した。
それでも優月は、何度も私に話しかけようとしてきた。話しかけられるたび、嘘をついたのは優月なのに、まるで私の方が責められているような気持ちになった。私はどうしたらいいのか分からないまま、優月を許せずにいた。
そして、また話しかけてきた優月に、私はとうとう怒鳴った。
「優月なんて、親友だと思ったことなんて一度だってない! そんなにあいつのことが好きなら、そっちとずっと一緒にいればいいでしょ! 私のことなんてほっといてよ!」
それが、優月に言った最後の言葉になった。
優月は何か言いたそうにしていたけれど、私はそのわずかな沈黙にも耐えられず、その場から逃げた。
それ以来、私たちは話さなくなった。高校も別々のところへ進み、会うこともなかった。
だから、同窓会の案内が来た時、戸惑った。七年間、私は優月のことを忘れられなかった。私はまだ過去にいた。
付き合って三年。ある日、私は恋人からそう言われた。
中学三年生の時、私は親友の優月と絶交した。優月とは小学三年生からの付き合いだった。
それから七年後、私たちは小学校の同窓会で再会した。
私たちの小学校は六年生になる頃、生徒が多くなりすぎて二つの学校に分かれた。新しくできた学校の卒業第一期生となった私たちは、記念として校庭にタイムカプセルを埋めた。
それから十年後、そのタイムカプセルを開ける同窓会があった。正直、行くかどうか迷った。優月とのことは、恥ずかしくて痛い思い出として、心の奥に鍵をかけて閉じ込めていた。それほど、私には触れたくない過去の出来事になっていた。でも、それと同時に会いたい気持ちもあった。絶交してから七年も経っている。優月はもう、あんな出来事は忘れてしまっているかもしれない。いや、きっと忘れている。私との思い出なんて彼女の中ではそんな程度だろう。
それに、行かないことで、まだ気にしているのかと思われるよりも、同窓会へ行って、そんなこともあったねと笑えた方が、自分のプライドも守れるような気がした。まぁそんなこと考えている時点で、あの頃の私はまだそのことを気にしていたということなんだけど。
優月と初めて会ったのは、私が小学三年生の時だった。私は引っ越しをして、同じクラスだった優月と友達になった。その頃から優月は優しくて、最初に話しかけてくれたクラスメイトだった。家が近かったこともあって、中学生になった頃には、お互いに『親友だよね』と言い合うほど仲良くなった。私たちは、他の人なんて見えていないくらい、二人だけでよく遊んだ。同じ漫画を好きになって、二人で盛り上がった。
部活も同じバスケ部だった。私は二年生の終わり頃にキャプテンになり、優月はずっとマネージャーをしていた。スポーツは得意じゃないくせに、「叶芽と同じ部活がいいから」と、マネージャーとしてバスケ部に入ったのだ。練習が終わると、優月は決まって私のそばへ来て、「一緒に帰ろ」と甘えるように腕を絡めてきた。
そういう優月のところが、私はいつも照れくさくて、嬉しかった。
でも、中学三年生の、ちょうど部活を引退する頃、優月が私に嘘をついた。
「今日は進路の話で先生に呼ばれてて長くなりそうだから、先に帰っててほしい」――と。
私と優月はクラスは別々だった。それでも、休み時間も、お昼休みも一緒にいた。部活をしていた時も引退してからも、一緒に登下校していた。それなのに、その日はそう言われて、仕方なく帰った。私は、一度家に帰ってから、何となくソワソワして、家の周りを自転車であてもなくぷらぷらしていた。その時、同じクラスの阿部君と優月が恥ずかしそうにしながら、横に並んで歩いているのを見かけた。優月は恥ずかしそうにその子を見て笑っていた。それを見て、全身から血の気が引いたように、頭が真っ白になった。私は気づかれないように慌てて自転車の向きを変えると、思いっきりぶっ飛ばして、家まで帰った。
そして、泣いた。涙が止まらなくて。全身から悲鳴が聞こえるかのように、震えが止まらなかった。ベッドの上で枕に顔を押し付けて、しゃくりあげてしまう声を消した。
自分に嘘をつかれたことがショックだったのか、それとも優月が離れていきそうで怖かったのか分からなかったけど、私の涙はしばらく止まらなかった。
次の日、優月から「阿部くんと付き合うかも」と聞かされた。私はそれを知った時、なぜか許せなくて「進路相談だなんて、嘘つくとか最低」と言って、優月と絶交した。
それでも優月は、何度も私に話しかけようとしてきた。話しかけられるたび、嘘をついたのは優月なのに、まるで私の方が責められているような気持ちになった。私はどうしたらいいのか分からないまま、優月を許せずにいた。
そして、また話しかけてきた優月に、私はとうとう怒鳴った。
「優月なんて、親友だと思ったことなんて一度だってない! そんなにあいつのことが好きなら、そっちとずっと一緒にいればいいでしょ! 私のことなんてほっといてよ!」
それが、優月に言った最後の言葉になった。
優月は何か言いたそうにしていたけれど、私はそのわずかな沈黙にも耐えられず、その場から逃げた。
それ以来、私たちは話さなくなった。高校も別々のところへ進み、会うこともなかった。
だから、同窓会の案内が来た時、戸惑った。七年間、私は優月のことを忘れられなかった。私はまだ過去にいた。
