誰がお前を好きになるかよ


「あれ……って、都築じゃ……?」
 
 日曜日に何となく出かけた先で、都築と可愛らしい男の子が歩いているのを見かけた。

 「俺、ゲイなんだよね」という都築の言葉は、どこかで現実味がないようにも思っていた。
 けれど、こうして楽しそうに並んでいる姿を見ると、本当にそうだったんだと、急に彼がゲイであるという事実を突きつけられたような気持ちになった。

 その男の子は、都築と腕を組んでおり、友人にしては近すぎる距離だった。それを見ているだけなのに、なぜだかそわそわと落ち着かなくなってしまう。
 俺とは正反対のビジュアルと雰囲気で、俺を好みではないと言ったことも、本心だったと改めて実感させられてしまった。

「都築……!」
 
 知らないふりをすればいいのに、俺は遠くから都築を呼ぶと、俺のほうを振り返った都築に向かって走り出した。
 どうしてか勝手に足が動いてしまう。息も上がり、都築のもとへ着く頃には、額に汗が滲んでいた。

「お前、何で──いってえ!」

 何でここにいるのか? 何で声をかけて来たのか? 恐らく都築はそういうことを尋ねようとしたのだろうけれど、俺はその言葉を遮る勢いで都築の腕を掴んだ。

「何……!?」
「お前の好みって、そういう奴かよ」
「はあ……?」
 
 思わず叫んでしまったその言葉は、明らかに都築を不快にさせた。彼は今まで見たことがないくらい眉間に皺を寄せ、いつも以上に睨むようにして俺を見ていた。
 自分でもどうしてこの言葉を伝えてしまったのかは分からない。都築のもとへ走り出したときにも、浮かんでいなかった言葉だった。

「ねぇ、侑志。この子、誰?」

 可愛い顔をしたその男の子は、都築に腕を絡め、べったりとくっついたままで俺を見つめている。

「誰でもないよ。関係ないから行こう」

 都築は俺に対してそれ以上何か言うこともなく、俺のことを無視するようにして、その子と一緒に俺に背を向け歩き出した。

「関係なくない! クラスメイトだろ!」

 去って行く都築にそう怒鳴ると、「ただのクラスメイトが何か用?」とだけ言い残し、二度と振り返ることはなかった。




 次の日、昨日のことを何か言われるかと思って構えていたが、都築は何も言うことはなかった。授業でグループワークをする機会もなかったから、その日俺たちは何の会話もしなかった。

 どんな形であれ、自分から都築に話しかけなければ、些細な会話さえできない。あまりにも一方的な関係に落ち込んでしまう。

 でも、自分でも、落ち込んでいる理由が分からない。
 都築から好かれなくても何の問題もないし、好かれたとして俺はゲイではないんだし……と悶々とする。

 都築のことを考えれば考えるほど、俺だけが気にしていて、都築には何の関係もない悩みだという事実に惨めになる。
 それでも考えることをやめられないのはどうしてなのかと、混乱する日々が続いた。