「初めまして、都築侑志です。よろしく」
黒板の前には、高身長で細身のイケメンが立っていて、座っている俺たちを教壇から見つめていた。
女子たちは「きゃあ……!」と高い声で叫び、手で口元を覆いながら、その彼へと視線を送っている。
高校二年生になり、昨年はできる気配すらなかった彼女を、修学旅行に向けて今年こそ作るぞと意気込んでいたというのに。
その俺の意欲を、女子の黄色い歓声が消し去って行った。
挨拶を終えた転校生は、身長が百八十はありそうで、スポーツでもしているのか体格が良い。
前髪はセンター分けで整えられていて、その下にはややつり気味な眉と、少しだけ垂れている目元が覗いている。漫画にいそうな、リアルではなかなか見ない整った顔だ。
挨拶をした声も、低めで心地いい声質だった。加えて、教壇から俺の席までは離れているのに、いい匂いが漂っている気がする。実際の匂いなのか、彼のイメージがそうさせているのかは、分からないけれど。
「転校生の都築くんです。みんな仲良く過ごしてね。それじゃあ、川北くんの横に座ってください」
担任に軽く会釈した都築は、少し乱れた前髪を上げた。
教壇の段差を気にして下がっていた都築の視線が、ゆっくりと正面へと向けられる。
座るように促された席を確認するためか、都築は俺のほうを見ている。そのせいで、最高にかっこいい瞬間に目が合ってしまった。
「う……やば……」
彼が俺のほうへ歩いてくる。通り過ぎた彼の姿を、女子たちは振り返ってまで見つめ、「かっこいい……」と声を漏らしている。
俺が何となく可愛いなと思っていた女子は皆、もう都築にしか意識がないようだ。このままでは、俺に彼女ができることはないのかもしれない。四月早々、俺のモテライフへの道が砕け散った。
「川北、よろしくな」
「お、おお……」
都築は机に荷物を置きながら俺へ笑いかけ、椅子を引いた。
「……っ」
椅子の背もたれ部分を掴む指先は、男らしさはありつつも、細くて長くて綺麗だ。たった数秒のことなのに、頭から離れなくなってしまう。
……って、ちょっと待って、やっぱり爽やかな良い匂いがするじゃあねえか!
隣の席に座った都築から、ふわっと香った。
何か香水でも付けているのかと思ったけれど、人工感が少ない優しい匂いに、思わず頭を抱える。
……え? コイツの体臭? こんなにいい匂いなのか?
絶対に無理、何があっても無理! 俺が勝てるはずがない!
登場してからのたった数分で、全てを持っていかれてしまった。
「それじゃあ、騒ぐのはやめて、授業に戻るぞー」
担任が朝のホームルーム後にさらりと授業に入ったが、俺の頭の中は隣の席の都築でいっぱいだった。
