あなたが眠っている隣で、この日記を書いています。
あなたが時々、ぴくっと動くのを見ると――強く胸を打たれます。必死に生きようとしている姿に、不思議と涙がこぼれます。
今日、数か月後、もしかしたら数年後。
いつかあなたに、この日記を見せる日は来るのでしょうか。
もしそんな日が来たら、これは日記じゃなくて手紙かもしれません。
そのときはどうか、笑わないで読んで下さいね。
私の声は、お母さんにすごく似ているそうです。
私が小学生の頃に父が再婚し、新しい母となった人から言われました。
もともとお母さんの幼馴染だった人で、当時からあまり仲が良くなかったそうです。
声を出すたびに怒られて、黙っていても苛立ちをぶつけられる日々が続きました。
きっと、お母さんの面影を私に見つけては傷ついていたのだと思います。
父も兄も私を心配して庇ってくれています。
その優しさにいつも感謝していますが、同時に申し訳なく思っています。
私の声は疎まれるだけ。だんだんと声を出すのが辛くなってきました。
私も自分の声に自信がなくなっていき、嫌いになっていきました。
ある日突然、声が出なくなっていたとき、驚きましたが、心のどこかでは、良かったと思う自分もいて、涙が止まらなくなった日は忘れられません。
自分を嫌いになるなんて。
そんなことを思ってしまった自分が、すごく悲しくて、辛かったです。
私は無理を言って、普通クラスへの移動をお願いしました。きっかけは、ちょっとした反抗心だったのかもしれません。いつまでも、こんな弱い自分が嫌で悔しかったからです。
けどやっぱり、毎日を過ごすのに精一杯で、うまくはいきませんでした。
病室で漏らしてしまった『普通になりたい』という言葉。
ずっと心にしまい込んでいた私の本音です。
あなたは強いとか、勇気があるなんて、たくさん褒めてくれますが、本当は逆です。
私は弱いんです。あのときだって今だって、考えるだけで体が震えてきます。
ただの意地っ張りで、そんな自分を認められないだけなんです。
放課後の教室で好きと言われたとき、あなたに手を上げてしまったことがずっと気になっています。
その日の朝は、母にいつもよりひどく叱られて気持ちが沈んでいました。冗談の告白をされたとき、そのまま帰ろうと思っていたのですが、「声」と言われた瞬間、考えるより先に手が動いてしまいました。
あんな始まりでしたが、あなたが毎日ノートを届けてくれたこと凄く嬉しかったです。
昔の漫画の主人公みたいに頭が丸くなっていたのは、ちょっとびっくりしましたけど、何だか可愛らしくて。すごく似合っていると思います。
あなたとちゃんと話すようになってから、まだそれほど長い時間は経っていません。
それなのに、何か月も、何年も一緒にいたような気がします。
クラスで挨拶してくれた日。クラスの景色がパッと明るく見えました。
屋上の前で抱きしめてくれたあなたの温もり。今でも覚えています。
グループチャットで勇気を出して声を出したこと。思い出すとドキドキしますが、後悔はしていません。
病室で、恥ずかしいくらいに泣いちゃって、こんな私を受け入れてくれて、キスを、してくれたこと。
そして、あなたにとって、大きな過去と向き合った放課後の屋上のこと。
私を信じてくれて、大切な妹さんを守って、過去から目を逸らさなかったこと。
辛い日々も含め、あなたと過ごした日々はどれも、私の大切な思い出です。
私は自分の声が怖いです。もし声が出たとしても、誰かを傷つけてしまったり、また嫌われたりしたらどうしようと考えてしまいます。
家にいても兄が、家族がいるのに、ずっと孤独を感じていました。だから、前に進む道が正しいのかわかりませんでした。
今は違います。少なくとも、この道を歩いてきてよかったと思っています。
少し、長くなりすぎました。ごめんなさい。
最後に、一つだけ私のお願いを聞いてくれますか?
前に言ったかもしれませんが、私は人の名前を呼ぶのが苦手です。名前を呼んだら、その人が私から離れてしまうような気がするからです。
それでも。私はあなたを――善吉さん、って呼びたいです。
いつかきっと、自分の声を使って、直接あなたに。
私は、善吉さんのことが好きです。
良かったら、読み終わった後、お返事をもらえたら嬉しいです。今でなくても構いません。
明日でも、明後日でも。いつまでも、ずっと待っています。二つのお願いになってしまいました。欲張りで、ごめんなさい。
どうか明日もあなたの隣で、あなたを見ていられますように。
そしてその明日が、ずっと――続きますように。
恋仲ひな緒
あなたが時々、ぴくっと動くのを見ると――強く胸を打たれます。必死に生きようとしている姿に、不思議と涙がこぼれます。
今日、数か月後、もしかしたら数年後。
いつかあなたに、この日記を見せる日は来るのでしょうか。
もしそんな日が来たら、これは日記じゃなくて手紙かもしれません。
そのときはどうか、笑わないで読んで下さいね。
私の声は、お母さんにすごく似ているそうです。
私が小学生の頃に父が再婚し、新しい母となった人から言われました。
もともとお母さんの幼馴染だった人で、当時からあまり仲が良くなかったそうです。
声を出すたびに怒られて、黙っていても苛立ちをぶつけられる日々が続きました。
きっと、お母さんの面影を私に見つけては傷ついていたのだと思います。
父も兄も私を心配して庇ってくれています。
その優しさにいつも感謝していますが、同時に申し訳なく思っています。
私の声は疎まれるだけ。だんだんと声を出すのが辛くなってきました。
私も自分の声に自信がなくなっていき、嫌いになっていきました。
ある日突然、声が出なくなっていたとき、驚きましたが、心のどこかでは、良かったと思う自分もいて、涙が止まらなくなった日は忘れられません。
自分を嫌いになるなんて。
そんなことを思ってしまった自分が、すごく悲しくて、辛かったです。
私は無理を言って、普通クラスへの移動をお願いしました。きっかけは、ちょっとした反抗心だったのかもしれません。いつまでも、こんな弱い自分が嫌で悔しかったからです。
けどやっぱり、毎日を過ごすのに精一杯で、うまくはいきませんでした。
病室で漏らしてしまった『普通になりたい』という言葉。
ずっと心にしまい込んでいた私の本音です。
あなたは強いとか、勇気があるなんて、たくさん褒めてくれますが、本当は逆です。
私は弱いんです。あのときだって今だって、考えるだけで体が震えてきます。
ただの意地っ張りで、そんな自分を認められないだけなんです。
放課後の教室で好きと言われたとき、あなたに手を上げてしまったことがずっと気になっています。
その日の朝は、母にいつもよりひどく叱られて気持ちが沈んでいました。冗談の告白をされたとき、そのまま帰ろうと思っていたのですが、「声」と言われた瞬間、考えるより先に手が動いてしまいました。
あんな始まりでしたが、あなたが毎日ノートを届けてくれたこと凄く嬉しかったです。
昔の漫画の主人公みたいに頭が丸くなっていたのは、ちょっとびっくりしましたけど、何だか可愛らしくて。すごく似合っていると思います。
あなたとちゃんと話すようになってから、まだそれほど長い時間は経っていません。
それなのに、何か月も、何年も一緒にいたような気がします。
クラスで挨拶してくれた日。クラスの景色がパッと明るく見えました。
屋上の前で抱きしめてくれたあなたの温もり。今でも覚えています。
グループチャットで勇気を出して声を出したこと。思い出すとドキドキしますが、後悔はしていません。
病室で、恥ずかしいくらいに泣いちゃって、こんな私を受け入れてくれて、キスを、してくれたこと。
そして、あなたにとって、大きな過去と向き合った放課後の屋上のこと。
私を信じてくれて、大切な妹さんを守って、過去から目を逸らさなかったこと。
辛い日々も含め、あなたと過ごした日々はどれも、私の大切な思い出です。
私は自分の声が怖いです。もし声が出たとしても、誰かを傷つけてしまったり、また嫌われたりしたらどうしようと考えてしまいます。
家にいても兄が、家族がいるのに、ずっと孤独を感じていました。だから、前に進む道が正しいのかわかりませんでした。
今は違います。少なくとも、この道を歩いてきてよかったと思っています。
少し、長くなりすぎました。ごめんなさい。
最後に、一つだけ私のお願いを聞いてくれますか?
前に言ったかもしれませんが、私は人の名前を呼ぶのが苦手です。名前を呼んだら、その人が私から離れてしまうような気がするからです。
それでも。私はあなたを――善吉さん、って呼びたいです。
いつかきっと、自分の声を使って、直接あなたに。
私は、善吉さんのことが好きです。
良かったら、読み終わった後、お返事をもらえたら嬉しいです。今でなくても構いません。
明日でも、明後日でも。いつまでも、ずっと待っています。二つのお願いになってしまいました。欲張りで、ごめんなさい。
どうか明日もあなたの隣で、あなたを見ていられますように。
そしてその明日が、ずっと――続きますように。
恋仲ひな緒
