星と塵

次の授業は理科で移動教室だ。俺は軽い足取りで理科室に向かった。なぜかって?大して話しを聞いてなくてもそれっぽくレポートを書けば点が貰えるからだ
ここまでイージーモードなのも中々に珍しい。
ラッキーと思いながら4階へ駆け上がった


実験中浮かれすぎたあまりぼーっとしてしまいそのまま薬品を混ぜようとした瞬間

「鳴海くん待って!!!!」

出席番号が俺の一つ前の七瀬さんにストップをかけられ、硬直していると

「薬品違う!!先生が一番だめだって言ってる混ぜ方してる…!」

今改めて見てみるとほんとだった、下手したら爆発するかもしれなかったみたい。

「うわ、ほんとじゃんありがとう七瀬さん」

「全然!鳴海くんに何もなくて良かったよ…!!」

七瀬さんは「もー気をつけてよね!」とか言うタイプじゃなくとても接しやすい。俺のミスなのに俺を気遣ってくれる最高のフォローも出来るまさに神的存在だ。皆が惚れる理由が分かる。

実験は基本4人班だが七瀬さんがいればほぼ安心に等しいがこの子に全てを任せるのはとても心が痛い…
なんせあと二人の丹羽と根室は本当に使えないからな女の子1野郎3なのに女子に全任せとか情けなさすぎる…が七瀬さんに任せっきりな俺も戦力外だろう。

「鳴海くん計算得意だと思うから任せても良いかな?私結果言っていくから」

「もちろん、任せて」

このように人に物事を頼むのも上手だ…流石すぎる。
七瀬さんに感嘆していたらどこかから視線が感じるような、と思いパッと後ろを振り向くと楠見とバッチリ目が合った。
こっっっわ…めっちゃこっち見てるじゃん…しかも口パクで何か言ってる

「どうしたの鳴海くん?」

「え、いや何でもない!」

怪訝そうな顔を見たのだろう、心配してくれた。

「鳴海くん朝いつも本読んでたり勉強してたりしてて凄いよね!」

「私には出来ないわ〜」と俺を褒めてくれた

「朝早いと時間あるから暇つぶし程度だよ」

間違ってはいないが言い方はこれで良かったのだろうかとドキドキしていたら

「私なら寝ちゃうな」

ふふっと笑いながらレポート用紙にペンを走らせていた。
コミュ力がレベチ過ぎる…眩しいっす七瀬さん…

七瀬さんと談笑をしていたら向かいにいる根室にすごい顔をしながら「あっちみろって」と指を差された。

そこには目に光の灯っていない楠見凪沙が一人。
俺はぎこちない笑顔でひらひら〜と手を振ったが何も反応が無い。

近くにいる女子に「凪沙どしたの、体調わるい?」とまで心配されていた
授業中だから仕方なく前を向いたが視線が痛い。後10分近くをこのまま過ごせと?俺は化学式がどうとかの次元じゃなかった。

3限を締めくくるチャイムの音が鳴り響き、号令をしたあと鬼の形相で楠見がやって来た。
あ、もしかして七瀬さん好きだったやつ!?やっべぇじゃん俺

「あのさ、女の子とニコニコ話すの辞めてくんない?」

絶対そうだ、ごめんて楠見…わざとじゃないんだ

「で、でも俺が誰と話そうと俺の勝手だろ?俺がちょっと話したぐらいで酷くないか?自分だって女子とよく話してるくせに…」

すぐ謝りたかったが俺の中で引っかかるものがあったそれに楠見に制限される筋合いはない。なんでそんなに怒ってくるんだ?いつも周りに女子いるじゃないか…
「ちがっ、そうじゃなくて!」

「じゃあどういう事だよ!!!」

流石の俺でもここまで言われるとイラッとくるもので怒鳴ったあとそのまま理科室を去ってしまった。
周りのみんなが目を丸くしてたのはよく分かってた、けどあれは無くないか?
楠見の怒りの沸点がよく分からず俺もなぜ怒られたのかが分からずじまいだった。

教室の扉を勢いよく開けドンッと席に荷物を起き座った。
ほんっとにイライラする。これだから陽キャは嫌いなんだよ!少しでも仲良くなれそうとか思った俺がバカだった。期待しなきゃ良かった、見損なった。

無意識に貧乏ゆすりをしていたのだろう先程の一部始終を見ていた七瀬さんに声をかけられた。

「鳴海くん大丈夫?私と話してたせいだよね多分…ごめんね…」

「七瀬さんは謝らないで、?ほんとに何も悪くないから」

「そうだよね」と言っているがよほど心配なんだろう。こんな可愛い子に心配させる楠見は本当にクズだ今すぐにでも葛見(くずみ)にでも改名してこい

「何かあれば相談してね…あんな理不尽な怒り方私も許せない!」

「ほんとにね…何で俺怒られたんだ、、」

七瀬さんは人一倍に人の事を考えていて、よく言えば感情移入が激しい。でもこの優しさに救われる人が必ずしもいるのだろう。

七瀬さんと愚痴っていたら休み時間が終わっていた。
少し話すとスッキリするもんだなと心底思った、全世界の女子を自分の物だと思ってる勘違い傲慢野郎とは訳が違う。
4限が終わればご飯、4限が終われば、、と自分を落ち着かせ極力楠見の事は考えず古文の授業を受けた。

「ここの寵愛(ちょうあい)と言う意味は、身分の高い人から優遇されたり特別扱いされることを寵愛と言います。寵愛とにて鍾愛(しょうあい)ありますが、鍾愛はものに対しても使うもので純粋に深く愛すと言う意味を持ちます。テストで出すか出さないかは分からないが勉強はしとけ〜」

何が寵愛と鍾愛だ、全部一緒だろと思いながらも重要らしいので付箋に書いて貼った。
 授業の話を聞いていると寵愛を受けた身分の低い女性はやはり煙たがられたりするのだそう…

でも俺は思う、身分の高い人に好かれるぐらい素敵な方なんだろうと、煙たがってる人達はその時点で性格がモロバレだし好かれない理由が必ずしも伴っている。
好かれた方も必然だと思って堂々とすればいいのにね

昔の人の考えはよく分からんとつくづく思うが古文はそれが醍醐味であるから好きだ。
今日の4限は割と楽しくすぐに終わってしまった。
もうお昼か、早いな

古文に現を抜かしていたが俺は楠見にキレたばっかりなんだった、めっちゃ忘れてた…でも忘れてたほうが俺的には都合が良さそう。

教室だと楠見がいるし居心地が最悪なので他の場所で昼食を取ろうと思い弁当を持って教室を出たら中学からの友達とばったり会った九条優稀だ。会ったら早々にハグしてくるような距離感バク男だから注意しなければと身構えたが遅かったっぽい

「斜ー!!!元気にしてた?」

廊下でもこういう事を堂々としてくる、、ハグしてくるのは良いんだけどもうコアラなんだよな…言葉で言うと足でホールドしてくるタイプしかも地味に重い

「優稀、元気にしてたけどこれやめろって毎回言ってるだろ、、」

ごめんごめんと言っているが多分反省していない。でも悪い気はしないし、しかも面白いことにこのまま頭を撫でたら猫みたいに顔をスリスリとしてくる。

「まじ撫でられるためにやってるようなもん。」

「いやきも笑笑」

こんなやり取りをしていたらもう予鈴がなってしまった。お昼、食べることは出来なかったが全くもって嫌ではなかった。寧ろ楽しかった。

廊下から帰り教室内にいる楠見をチラッと一瞥すると周りの友達にすごい落ち着けってなだめられてる?止められてる?よく分からないが気持を落ち着かせられている。
自分の気持ちでさへコントロール出来ないとかガキかよ見てらんね、と思い自席に戻ろうとしたら予鈴が鳴ったのにも関わらず楠見は俺を引っ張って教室を出た




「────は?ちょ、お前ヤバいって離せ」

授業に遅れてしまう…何やっているんだこいつは
「無理。鳴海が悪い。」

何言ってんだこいつ。お前が悪いよ?俺の大切な授業時間削るのやめれる?

人が明らかいなさそうな場所に連れて行かれたと思えばハグされた。
ん????何をしてらっしゃるのかなこのお方は。

「鳴海が知らない人にハグされてたから上書き」

しなくて良いよ。うん。 

困惑で硬直していたら楠見が口を開いた。





「鳴海は誰にも触られてほしくないし、話してほしくない、俺以外にニコニコしないでほしい、自分から話しかけに行くとか論外。」

口を開いたかと思えば意味不明発言が止まらない。


「いや、意味わかんねぇよ…」

こんな茶番付き合ってられね、と教室に戻ろうとしたら腕を引っ張られて楠見の中に収まった俺

「待って、行かないで…一日我慢した、怒って悪かった…鳴海が他の子と仲良くしてるのが見てられなかった」

不貞腐れたように言う楠見は本当に幼児そのものだった

「俺の事怒鳴っても良いし嫌っても良いから離れて行かないで…」

今にも消えてしまいそうな声量だった。なんだよその声色は、女々しいかよ

「分かった、分かったから…」

今日の楠見はちょっと調子が悪いっぽい。心の綻び的な?人には限界というものがあるんだろう…仕方ないと思い1時間丸々楠見に付き合った。

「寝不足とかならちゃんと寝ろよ」

いつもより調子悪いし、、と言うと的外れなことを言われたみたいな顔をして笑った

「気をつけまーす」

情緒のおかしい奴の相手をするのは疲れるもんだ…
雲に隠れる月はあるが星も同じようなものなのだろう?知らないけど、、
星が雲に隠れて見えないということは明日は雨が降りそうだ。