星と塵

教室の扉を開け、自席を見た瞬間言葉を失った。人が多いのが苦手な俺はいつも余裕を持って学校に来る。って言うのに俺の席には楠見が座っている…

もうそろそろあいつの取り巻きも学校に来る頃だから一刻も早くその場を退いてもらわなければと思い、殴りそうな勢いで近づいた。

「お前席間違ってる退いて」

「何?上乗ればいいじゃん」

いや意味が分からん…上に乗る乗らない以前になぜそこに居る
「いや、何でいるんだよ…」

「鳴海待ってた、それ以上でもそれ以下でもない。」

そういうのって真顔で言うものじゃ無いんですよお兄さん?
「待ってたってど、どゆこと?」

流石に待たれる理由がよく分からないと思い少しオドついた。
「そのままの意味。待ってた。」

本当に意味がわからない…理解が出来んこれは
「良いから退いて」

椅子から離そうと楠見を引っ張るがビクともしない。
何こいつ、こいつに掛かってる重力俺の5倍ぐらいあんだろこれ。

「鳴海の方に重心やってもいい?」

ニヤニヤとしながら聞いてくる楠見。そんなんしたら俺倒れるじゃん…!


「待って!!!」

こちらに重心を落とされるのかと思い目をギュッと瞑ったらなぜか後ろではなく前に進んだ。
恐る恐る目を開けると目の前に楠見の顔が視野いっぱいに広がった。

「いえーい鳴海げっと〜」

は?????なぜか楠見にガッチリホールドされた俺「ちょ、まじ離せって、」

ほんとにこいつの取り巻きが来てしまう…こんなの見られたら絶対何か言われる。俺の平穏スクールライフがここで終わってしまう…

「あー、もう!何したら離してくれる?」

「うんまぁ、ちょっと考え中」

まじしね。許さんから。

「ほんとお前みたいなヤツ嫌い!スカしてる冷笑界隈のくせに!!!!どうせ心の中ではバカにしてんだろ!!」

勢いでボロクソ言ってしまったが後悔はしてない。
楠見は少し驚いた顔をして俺をぱっと離した。

「めっちゃ喋れるじゃん。てか俺そんな事思われてたんだ。」

へーとは言っているが少し悲しそうな表情を見せた。
なに被害者ヅラしてんの?同情なんて絶っっ対にしないからな。そんな憐れなこと、俺は一番嫌いなんだよ

取り巻きが来たかと思えば自席に戻っていった
まじで何がしたいんだよあいつは…朝から調子が狂わされ好きな本を読む時間も半分程減ってしまった。
正直星とか月は届かない存在で輝いていればそれでいいと思う、わざわざ自分からやってきて自分自身を穢すなんて行動は見合わない。
星は星らしく塵は塵らしくそれに合った環境で生きていくべきだ。

とは思ったが楠見が思った以上に元気を無くしている…いや、俺のせいか、?謝ったほうが良いのか、、結局は俺も人間だ、多少の心配だって込み上がってくる。

俺は授業なんてそっちのけで謝罪文を頭の中で百通り程考えた。
心臓がバクバクして口から出てきそう、
放課後のチャイムがなった瞬間俺は楠見の席に走った

「く、楠見…さっきはごめん」

頭をバッと下げた。
絶対怒ってるし落ち込んでるよな…
恐る恐る顔を上げると

「いえーい作戦大成功」

ニッコニコで言ってくる楠見がいた
うっわまじかまじかえ、俺これハメられた?

「鳴海案外俺の事気にしてるだろうなって思ったからちょっと悪知恵働かせた。」

「俺れ流石に名演技過ぎた」と自信満々に言う楠見を今日だけは怒る気になれなかった。

「でもちょっとは傷ついたんだぞ、?」

そりゃそうだよな、大して仲良くない奴に冷笑界隈だのバカにしてるだの推し量られたら、俺だったら傷つくどころか自殺案件だわ…

「ほんとにごめん、…でも席勝手に座るの控えてほしい…」

「控えたら良いんだ。」

多分フォーカス当てる部分間違ってるよ楠見。
何か思いついたようにあ、と楠見が口を開いた

「お詫びにさ、連絡先交換してよ。」

「いやだから持ってな────」

そう言いかけた途端ブブッとスマホが震えた。
あ…
「ね。持ってるよね?」

今はその笑顔が怖いです、楠見さん…
いかにも早く出せさもないと命ないぞって顔してる。俺は渋々スマホを出した。スマホの馬鹿野郎と思ったが結局どこかで連絡先を交換しそうだなと不意に思いまぁ良いやと自己完結を果たした。

「はい出来た」

光の速度で交換したかと思えばもう犬の可愛らしいペコっとしたスタンプが送られてきていた
どういうセンスだよ、ギャップが大きすぎて不意に笑ってしまった。

「あ、笑った」

「笑ってないこっち見んな」

照れてる?と俺の顔を覗いてきた。

「照れてない。顔覗いてくんな。」

星というものはたまに手に届きそうな程近くに来ることがある。
向こうは散歩程度かもしれないが塵にとったらこれはもう奇跡の巡り合わせに等しいものだ。でも届かないからこそいいのかもしれない…
俺にそんな考えが出来る日が来るなんてな、
少しだけ心が浄化されている気がする。