青春18きっぷ、文学少女の乱読旅行記

 翌朝、再び鈍行列車に揺られて向かったのは、空に浮かぶ駅「余部(あまるべ)」。

 かつての巨大な鉄橋の一部が展望施設「空の駅」として保存されているその場所で、私は激しい海風に出迎えられた。

「わっ……すごい風!」

 絶景に目を奪われている間、海風が私のサマードレスを容赦なく吹き上げる。
 慌てて裾を押さえるが、薄い生地は風を孕み、まるで翼のように広がる。

 今日は下着の代わりに、スカイブルーのビキニをドレスの下に仕込んでいた。
 細い紐が、風に踊るスカートの隙間からチラチラと覗く。

(空中の空白。ここでは、私のモラルも風に吹かれて消えてしまいそう……)

 展望台にいた数人の男性旅行者たちの視線が、一斉に私の脚へと突き刺さる。
 私は恥じらうふりをして、わざと風の強い先端へと歩を進めた。

 手すりに掴まり、大きく身体を反らせる。風に煽られて、胸のラインと引き締まったウエストが強調された。

「……綺麗だ」

 隣で写真を撮っていた年配のカメラマンが、シャッターを切る手を止めて呆然と私を見つめている。

「知らんけど」

 私は心の中で小さく呟き、満足げに微笑んだ。
 空と海の間、地上四十メートルの断崖絶壁。

 私の物語は、誰にも届かない場所で、さらに鮮烈な色を帯びていく。