青春18きっぷ、文学少女の乱読旅行記

 福知山線から山陰本線へと乗り継ぎ、たどり着いたのは文豪・志賀直哉が愛した「城崎温泉」。

 駅に降り立った瞬間、まとわりつくような湿った熱気が私を包み込んだ。

「……暑ぅ。これ、温泉入る前に茹で上がってまうわ」

 浴衣姿の観光客が行き交う中、私はあえてサマードレスのままで柳並木の道を歩く。
 汗でしっとりと肌に張り付くコットン生地。下着のレースの凹凸が、一歩踏み出すたびに浮き上がっては消える。

(志賀直哉はここで『生と死』を見つめたらしいけど……)

 私は、一軒の外湯「御所の湯」の暖簾をくぐった。

 脱衣所でドレスを脱ぎ捨てると、都会の冷房で守られていた白い肌が、夏の熱に少しだけ赤らんでいる。

 フロントホックのブラジャーを外し、解放感に小さく吐息をつく。

 露天風呂に身を沈めれば、立ち上る湯気が私の「よそ行き」の表情を柔らかく溶かしていった。

 お湯が、私のデリケートな場所を優しく撫で上げる。それはまるで、流麗な筆致で書かれた一遍の詩のよう。

「……ふぅ。私は今、自分の『生』の熱さしか分からへん」

 お湯から上がり、火照った身体に再び薄いドレスを通す。

 下着は、あえてつけない。
 温泉上がりの特権としての「ノーブラ」。

 ドレス一枚の下で、まだお湯の温もりを残した胸が、歩くたびに自由な形を描いた。