ガタゴトと車体が激しく揺れ、列車は長いトンネルへと滑り込んだ。
車内灯が心許なく光るだけの、狭いボックス席。対面に座る青年の顔が、一気に闇に沈む。
(……さて、ここからは非公開の編集作業やね)
私は、テーブルの下で彼の膝に押し当てていた足を、ゆっくりと上へと滑らせた。スラックスの硬い生地越しに、彼の太ももがびくりと震えるのが伝わってくる。
「……っ、あの……」
「しーっ。就活の資料、そんなに大事ですか? 今は、こっちのページをめくる方が……ずっと有意義だと思いません?」
私は、最高に甘く、湿り気を帯びた標準語で囁いた。
彼の呼吸が浅くなり、資料を持つ指先がわなないている。私は、空いた手で自分のドレスの肩紐をそっとずらした。
闇の中で、白い肩が露わになる。トンネルの入り口から差し込むわずかな光が、私の鎖骨のラインをなぞった。
「……君、は……」
「私は、ただの読者。あなたの、その……教科書通りじゃない部分を読み取りたいだけ」
青年の手が、吸い寄せられるように私の手首を掴む。その手は驚くほど熱く、そして必死だった。
トンネルを抜けるまでの、わずか数分間。
規則正しいレールの音が、私の心音と重なって、絶頂へのリズムを刻んでいく。
ふっと視界が開け、真夏の太陽が車内に降り注いだ。
青年は、顔を真っ赤にして、逃げるように次の駅で降りていった。
私は、乱れたドレスの裾をゆっくりと整え、独り言を漏らす。
「……ふぅ。初版にしては、なかなかの読み応えやったわ。知らんけど」
手帳に「一画目」を書き込み、私は満足げに窓の外を眺めた。
車内灯が心許なく光るだけの、狭いボックス席。対面に座る青年の顔が、一気に闇に沈む。
(……さて、ここからは非公開の編集作業やね)
私は、テーブルの下で彼の膝に押し当てていた足を、ゆっくりと上へと滑らせた。スラックスの硬い生地越しに、彼の太ももがびくりと震えるのが伝わってくる。
「……っ、あの……」
「しーっ。就活の資料、そんなに大事ですか? 今は、こっちのページをめくる方が……ずっと有意義だと思いません?」
私は、最高に甘く、湿り気を帯びた標準語で囁いた。
彼の呼吸が浅くなり、資料を持つ指先がわなないている。私は、空いた手で自分のドレスの肩紐をそっとずらした。
闇の中で、白い肩が露わになる。トンネルの入り口から差し込むわずかな光が、私の鎖骨のラインをなぞった。
「……君、は……」
「私は、ただの読者。あなたの、その……教科書通りじゃない部分を読み取りたいだけ」
青年の手が、吸い寄せられるように私の手首を掴む。その手は驚くほど熱く、そして必死だった。
トンネルを抜けるまでの、わずか数分間。
規則正しいレールの音が、私の心音と重なって、絶頂へのリズムを刻んでいく。
ふっと視界が開け、真夏の太陽が車内に降り注いだ。
青年は、顔を真っ赤にして、逃げるように次の駅で降りていった。
私は、乱れたドレスの裾をゆっくりと整え、独り言を漏らす。
「……ふぅ。初版にしては、なかなかの読み応えやったわ。知らんけど」
手帳に「一画目」を書き込み、私は満足げに窓の外を眺めた。


