列車が動き出す。規則正しい振動が、太ももを通して身体の芯まで伝わってくる。
私は、一番端のボックス席を確保した。四人掛けを独り占めする贅沢。迷わず、サンダルを脱いでシートの上に足を投げ出した。
「ふぅ……。やっぱり、夏休みはこうじゃないと」
窓から差し込む陽光が、私の白い脚を眩しく照らす。
クーラーの風でドレスの裾がひらひらと舞い、膝の上まで露わになる。それを直そうともせず、手にしたきっぷをじっと見つめた。
左側に並ぶ、五つのスタンプ欄。まだ一つも押されていない、真っ白な余白。
「ここを、私の書き込みだらけにしてやるんだから」
私にとって、このきっぷは単なる乗車券ではない。五つの「情事」を予約した、白紙の原稿用紙だ。
カバンの中から、小さな手帳と万年筆を取り出す。
『八月某日。鈍行列車は、現実を置き去りにして加速する。私の体温は、冷房の風よりも少しだけ高い。それは、期待という名の微熱。知らんけど』
最後の一言を書き加え、クスクスと笑った。
車窓の外、ビル群が次第に低くなり、緑の濃い山々が見え始める。
ブラジャーのホックが少しだけ肌に食い込むのを感じて、ドレスの上から胸の膨らみを軽く整えた。指先に伝わる自分の熱に、頬が少しだけ上気するのがわかる。
さて、そろそろ「一文字目」が欲しいところ。
私は、わざとらしく、ドレスの襟元をパタパタと仰いで、誰かの視線を待った。
私は、一番端のボックス席を確保した。四人掛けを独り占めする贅沢。迷わず、サンダルを脱いでシートの上に足を投げ出した。
「ふぅ……。やっぱり、夏休みはこうじゃないと」
窓から差し込む陽光が、私の白い脚を眩しく照らす。
クーラーの風でドレスの裾がひらひらと舞い、膝の上まで露わになる。それを直そうともせず、手にしたきっぷをじっと見つめた。
左側に並ぶ、五つのスタンプ欄。まだ一つも押されていない、真っ白な余白。
「ここを、私の書き込みだらけにしてやるんだから」
私にとって、このきっぷは単なる乗車券ではない。五つの「情事」を予約した、白紙の原稿用紙だ。
カバンの中から、小さな手帳と万年筆を取り出す。
『八月某日。鈍行列車は、現実を置き去りにして加速する。私の体温は、冷房の風よりも少しだけ高い。それは、期待という名の微熱。知らんけど』
最後の一言を書き加え、クスクスと笑った。
車窓の外、ビル群が次第に低くなり、緑の濃い山々が見え始める。
ブラジャーのホックが少しだけ肌に食い込むのを感じて、ドレスの上から胸の膨らみを軽く整えた。指先に伝わる自分の熱に、頬が少しだけ上気するのがわかる。
さて、そろそろ「一文字目」が欲しいところ。
私は、わざとらしく、ドレスの襟元をパタパタと仰いで、誰かの視線を待った。


