青春18きっぷ、文学少女の乱読旅行記

 理性をかなぐり捨てた情事が始まった。

 それは愛でも慰めでもなく、どちらが相手を完全に屈服させるかという、剥き出しの解体劇。
 廃墟の床に敷かれたリネンシャツの上で、私の身体は容赦なく暴かれていった。

「あっ……、嘘……っ!」

 蓮見の手指は、カメラのピントを合わせるように冷酷で、そして正確だった。

 私の最も敏感な場所、触れられただけで腰が浮いてしまうような粘膜の襞を、ミリ単位でなぞり、焦らし、容赦なく抉り込んでくる。

「どうした? 大阪弁で喘いでみろよ。君の薄っぺらいプライド、全部暴いてやるから」
「く……っ、あぁんっ……! あんたなんかに……ッ、ひぁっ!」

 身体が激しく痙攣し、床を爪で掻きむしる。
 重なる肉体。瀬戸内から吹き上げる熱風が、汗まみれの二人の肌を撫でていく。
 激しい結合の最中、蓮見が私の首筋に噛みついた。

「痛っ……!」
「君の首に、僕のサインを残しておく。一生消えない、蔵書印だ」

 皮膚を裂くような痛烈な痛みが、そのまま痺れるような絶頂の引き金になった。
 私の視界が真っ白に弾け飛ぶ。

「あ、あぁぁぁっ……! いく、いっちゃう……っ!」

 完璧な大阪弁で叫びながら、私は彼の逞しい背中にしがみつき、激しい痙攣の中で果てた。
 ――どれくらい時間が経っただろうか。

 我に返ったとき、蓮見はすでに服を着終え、ライカのレンズを拭いていた。

「楽しかったよ。なかなか読み応えのある身体だった」

 彼は床に散らばった私のドレスを拾い上げ、私の顔の上に無造作に投げ捨てた。

「じゃあね。次の列車に遅れるなよ、文学少女」

 足音を残して、男は去っていった。

 一人残された廃墟の床で、私は震える指で自分の首筋に触れた。
 そこには、鮮血が滲むほどくっきりと、男の歯型が刻まれていた。

「……っ、ふざけんなや……!」

 屈辱と、そして信じられないほどの昂奮で、涙が一筋こぼれ落ちる。
 初めて、読まれる側に墜とされた。

 このままでは、終われない。この汚名と熱を、誰か別の男に擦り付けて上書きしなければ、私は狂ってしまう。