蛇に見初められた太郎さん

 早急な手が僕の服の中に入り込むと、肌の感触をくすぐるように確かめるので反射的に身をよじった。そんな手はいたずらに胸の突起をかすめて僕の喉から悩ましい嬌声を引き出した。
「ん、ぅ」
「触ってほしいって顔してる」
「う、るさ……」
 鋭いのに甘くもある竜也の目に見つめられて体温はどんどんと上がっていく。
「んあっ……!」
 強がりを言っても自分の意志とは反対に背中が反ってしまって竜也の指に突起が擦り寄った。ピリリと甘く痺れる快楽に脳がとろけてもっと欲しくなる……のに、なぜだろう。
 竜也の手が僕の下半身の方に伸びてズボンを脱がしてくる。
(やばい……バレる……)
 僕は先程からあることを懸念していた。その懸念が現実になりそうなので、焦っているのだ。その焦りをよそに竜也はパンツの上からふにふに、と僕のモノを触って不思議そうな顔をする。
「なんで勃ってないの……?」
「ご、ごめん……」
「気持ちよく……なかった?」
「そ、そういう訳じゃなくて……」
 そろそろと起き上がって、困り顔の竜也に弁明しようとするが、理由を説明するか凄く迷う理由なので僕はどうしていいか分からなくなってきた。
「え、えっと……」
「あ、ごめん……無理に説明しようとしなくて大丈夫、だから……今日は帰ろっか」
「う、うん……」
 僕がマゾなせいで勃たなくて竜也がきまずくなってしまうなんて、なぜこんなことに……。
 帰りはもちろん一緒に帰るのだが、帰り道がこんなに長く感じたことはない、というくらい沈黙が気まずくて、一緒のマンションに住んでいることを恨んだ。

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 あの事件から数日が経とうとしていた頃、僕は締め切りに追われていた。
(やばい……描かなきゃなのに……!描けないよ〜!)
 僕はサドマゾ系を描いているエロ漫画家なのだが、どうしても原稿を書こうとすると、数日前のあのことを思い出してしまって手がつかなくなってしまうのだ。
「あ゛〜あと五日なのに〜!」
 締め切りは五日後、ページ数はあと五枚。一日一枚描けば間に合うのだが、このペースだと描けそうにない。
(竜也と、こういうこと……してみたいのにな……)
 すでに描けているページを見ながらそう思う。竜也とは数日前から会っておらず、ろくに話もできてない状態で説明しようにも連絡を取ればごめん、忙しいと返されるばかりでままならない。
「避けられてる……よな?」
(外、出てみるか……)
 連絡はしても、また断られるだけなのでどこかで偶然会えないかな、と考え始めた。そうとなれば、部屋着から外着に着替えて少し身なりを整えてドアを開けた。
「え、太郎さん?」
 いつかのように上から声が降ってくる。驚いて声がした方を見上げると、スマホを持って驚いた顔をした竜也がいた。
「竜也?何してるの?」
「今、太郎さんに連絡しようとしてたんだよ」
「そ、そうなんだ」
「太郎さんはどこに行こうとしてたの?」
「僕は竜也に会いに行こうとしてた……」
「ほんとに?嬉しい……」
「とりあえず……入る?」
 お互いが探り探りだが、何を求めてるかうっすら分かっているようで気が急いてしまう。
「お邪魔します」
「そこ座ってて、お茶出すから」
 お茶を用意している間も、ドキドキと胸が高鳴っておかしくなりそうだった。
「はい、麦茶で良かった?」
「うん」
 竜也の目の前に座ってお互い目を合わせたり、合わせなかったりして数秒時が流れた。これはそろそろ話すしかないか……と思い、口を開く。
「あ、あの……僕、実はマゾ……なんだよね、だからこの前勃たなくて……決して、竜也との行為が嫌とかじゃないから!安心、してほしいんだけど……」
 打ち明けてちらっと竜也の顔を見ると、竜也は先程の緊張の面持ちから一転、顔を輝かせていた。
「良かったぁ……やっぱり、男同士が無理で俺と会いたくないんじゃないかと思って……」
 竜也がホッとした面持ちに変わって正座を崩したのを見て僕も安心した。
「そんなことないよ!ていうか避けてたのそっちじゃん」
「え?避けてた?何の話……俺忙しいって言ってなかったっけ……」
「いや、忙しいって理由で避けられてるのかと思って……」
「そんなわけない!俺が太郎さんを避けるなんてありえないから!俺、ずっと仕事に行くとき太郎さんが出てこないかしばらく待ってたんだよ?」
「え……そうだったんだ、ごめん……締切に追われててなかなか外出てなかったから……」
 そうか、待っててくれてたのか。気持ちがすれ違っていただけで竜也は僕のこと嫌いになったわけじゃなかったのか。
(良かった……)
「隣、座っていい?」
「もちろん」
 対面から横に移動して竜也の肩に頭を乗せる。こうすると、なんだか安心できて竜也の隣を永久に確保できる気がした。
「あの、太郎さん?」
「ん?なに?」
 竜也がそわそわし始めたかと思ったら、僕の肩を掴んで向き直ってきた。
「俺、もう我慢できないんだけど……シてもいい……?今、道具持ってるから今度こそ気持ちよくできると思う」
「うん……!」

「ハァハァ……」
 真っ暗闇の中、自分が犬のように呼吸する音と、竜也がズボンのチャックを下ろしている音だけが耳についてそれだけで期待が膨らんでさらに呼吸が荒くなるのだった。
「ほら、舐めて」
 竜也に胸ぐらを掴まれてモノの位置まで誘導されて勢い余ってしまい、鼻に竜也のモノが当たる。
「んぐ……っ、はふ……」
 手を縛られているので口だけでモノを咥えて一生懸命、顔を上下させて竜也を喜ばせようとした。
「もっと、奥まで咥えて?」
 竜也の興奮した声と共に髪の毛を掴まれ、顔の位置を沈められる。それだけに飽き足らず、竜也は俺の頭を掴んでオナホのように僕の喉を蹂躙した。
「ん゛おっ……お゛っ、ぉえ……っ!」
 視界も奪われ、自由も効かない中で玩具みたいに扱われる感覚がたまらなくて勃起が止まらない。まだパンツを履いているため、閉じ込められたモノが苦しくて痛いくらいだ。
「太郎さん、キスしたい……」
 髪を掴まれたまま、顔を上げさせられて恐らく、竜也と見合っている状態になっているであろう状況を感じた途端、唇を奪われた。押し当てられた唇の隙間から容易に滑り込んでくる舌を受け入れると、口の中を好き勝手検められた。深いキスに戸惑うが、上手く鼻で呼吸しようと、鼻から息を抜くと、それを感じた竜也に鼻を抓まれる。完全に空気の逃げ場がなくなって酸素が薄くなってくると、頭がふわふわしてきて気持ちがいい。酸素が尽きそうで頭が白んできた、というタイミングでパッと唇を離された。
「はぁ……ふ、……」
「はぁ、もうエロすぎるよ太郎さん……」
「ふぇ……?」
 自分の絵にはエロいなんて言われ慣れているが、自分自身にエロいと言われるのは慣れてないので面食らっていると、突き飛ばされる形で押し倒される。期待感が高まってくる中、パンツをはぎ取られ、足を持ち上げられて局部が露わになる感覚。少し間があって冷たいものがお尻に垂らされた。
「挿入れるよ」
その声と共に、いきなり奥まで入ってくる竜也のモノの衝撃で脳が震えた。
「お゛っ!?」
 最初からガツガツと奥を責められてあまりの快楽に意識が飛びそうだ。なんとか耐えていると、首に手が伸びてくる気配がした。その気配に喜びと期待で喉が鳴った。垂直に喉仏へ親指が当たる。呼吸が荒くなった。グッと手全体に力が掛かる。やがて、呼吸が止まった。
「かっ……ひゅっ、」
 何度、喘ごうと空気が入らない感覚に脳汁が出た。白目を向きそうなほど苦しくて気持ちがいい。ビクビクと体が震えてもうちょっとで飛べそうな時に手が離された。
「首締められてイクとか変態だね」
 耳元でそう囁かれて気づいたが、どうやら僕は首を締められている間にイッていたらしい。
「俺もイクから受け止めてよ」
 その発言を合図としてラストスパートとばかりに中をグチャグチャにされる。イッたばかりなのにまたイキそうな初めての感覚に襲われて困惑していると、中に暖かいものが流れ込んできてそれと共に背中が反って脳に強い多幸感が溢れだした。
「もしかして、太郎さんドライでイッた?」
 目隠しを取られながら嬉しそうな竜也が顔を覗き込んでくる。
「ど、どらい?」
「うん、射精せずにイクことだよ」
「なにそれ……」
 確かに竜也の言うとおり、僕は今、精子を出さずにイッたみたいなのでそうなのかもしれない。男体がそんなことできるなんて初めて聞いたが。
「ふふ、可愛い、頑張ったね太郎さん」
 竜也の膝に乗せられて頭をよしよし、と撫でられる。ただでさえ、謎に多幸感が凄いのに、そんなことされたら幸せで頭が爆発してしまいそうだ。
「竜也、ありがとう」
「俺は何もしてないよ?」
「してるし」
少しムッとすると頬を突かれてニコニコの笑顔で見つめられるのがすこぶるむず痒い。
「可愛い」
「何回も可愛いって言うな」
「だって毎秒可愛いから仕方ないでしょ?」
「あっそ」
「照れてる」
「そこは照れてて可愛い〜でしょ」
「え!何その発言!可愛すぎ!」
これでもかと抱きしめられて息が苦しい。これが幸せと言わなかったらなんと言うのだろう。