その頃、乃愛と琉生は駅前の広場にいた。
「わぁ……」
目の前に広がる光景に、乃愛は思わず足を止める。
大きなクリスマスツリーを中心に、いくつもの光が夜の広場を包んでいた。
冷たい空気の中で瞬く光を見上げる乃愛の瞳にも、小さな明かりが映り込んでいる。
「すごいね、琉生くん」
「な。寄って正解だったな」
「うん」
乃愛が嬉しそうに笑う。
琉生もつられるように笑ってから、ポケットからスマートフォンを取り出した。
「写真撮る?」
「えっ……一緒に?」
「せっかくだし」
「……うん!」
二人でツリーを背に並び、画面に収まる。
一枚目を確認した乃愛が、すぐに小さく吹き出した。
「琉生くん、ちょっとぶれてる」
「え、俺?」
「ふふっ。撮るとき動いたでしょ?」
「マジか。じゃあもう一回!」
今度は二人とも動かないようにして、もう一枚。
画面の中には、光に囲まれて並んで笑う二人がいた。
乃愛はその写真を見つめながら、小さく息を吸った。
「……琉生くん」
「ん?」
「これ……クリスマスプレゼント」
鞄から取り出した包みを差し出すと、琉生の顔がぱっと明るくなる。
「俺に? ありがと、乃愛!」
「うん。……開けてみて」
包みの中から出てきたのは、深い紺色のネックウォーマーだった。
「お、いいじゃん! あったかそう」
「部活の行き帰り、寒いかなって」
「めっちゃ使う。明日から使うわ」
「ふふっ。よかった」
ほっと笑った乃愛だったが、すぐに「あ、それとね」と、もう一つ小さな包みを差し出した。
「まだあんの?」
「……うん」
琉生が包みを開く。その手が、中に入っていたものを見て止まった。
入っていたのは、一組の靴ひもだった。
「……これ」
「靴ひも。練習のときに使えるかなって」
琉生はそれを手に取ると、しばらくその色を見つめた。
そして、ふっと笑う。
「ひまわり色じゃん」
「……気づいた?」
「気づくに決まってんだろ」
その答えが嬉しくて、乃愛の頬も自然と緩む。
「次の練習から、これで走るわ」
「ほんとに?」
「おう」
「でも……すぐ汚れちゃうかも」
「いいじゃん。靴ひもなんだから」
琉生はそう言って、ひまわり色の靴ひもを大事そうに包みへ戻した。
「そのためにもらったんだろ?」
「……うん」
乃愛は小さく頷いた。大切にしまっておいてほしいわけじゃない。
琉生が好きなサッカーをして、夢へ向かって走るとき、その足元に自分が選んだ色がある。そう思うと、胸の奥が少しくすぐったくて、それ以上に嬉しかった。
乃愛はもう一度、目の前のイルミネーションへ視線を上げる。
「……来年も、一緒に見たいな」
考えていたわけではなかった。
ただ、今が楽しくて。隣に琉生がいることが嬉しくて。
だから自然にこぼれた言葉だった。
「見ようぜ」
琉生は迷うことなく答えた。
「来年は、もっとすげーとこ探すか」
「ふふっ。ここでも十分だよ?」
「じゃあここで見よ」
「うん」
来年も。その次も――。
そこまで考えかけたとき、乃愛の胸の奥を、ほんの小さな何かがよぎった。
スカウトという言葉。
琉生が夢へ近づいていけば、いつか今とは違う場所でサッカーをする日が来るのかもしれない。けれど、それがいつなのかも、どこなのかも、まだ何も決まっていない。
「乃愛?」
呼ばれて、乃愛は隣を見る。
「どうした?」
「……ううん。なんでもない」
そう答えて笑うと、琉生も「そっか」と笑った。
今はまだ、これでいい。乃愛は隣にある琉生の手へ、そっと自分の手を重ねる。
すぐにその指が握り返され、冷えた指先に温もりが広がった。
二人はもうしばらく、並んで冬の光を見上げていた。
「わぁ……」
目の前に広がる光景に、乃愛は思わず足を止める。
大きなクリスマスツリーを中心に、いくつもの光が夜の広場を包んでいた。
冷たい空気の中で瞬く光を見上げる乃愛の瞳にも、小さな明かりが映り込んでいる。
「すごいね、琉生くん」
「な。寄って正解だったな」
「うん」
乃愛が嬉しそうに笑う。
琉生もつられるように笑ってから、ポケットからスマートフォンを取り出した。
「写真撮る?」
「えっ……一緒に?」
「せっかくだし」
「……うん!」
二人でツリーを背に並び、画面に収まる。
一枚目を確認した乃愛が、すぐに小さく吹き出した。
「琉生くん、ちょっとぶれてる」
「え、俺?」
「ふふっ。撮るとき動いたでしょ?」
「マジか。じゃあもう一回!」
今度は二人とも動かないようにして、もう一枚。
画面の中には、光に囲まれて並んで笑う二人がいた。
乃愛はその写真を見つめながら、小さく息を吸った。
「……琉生くん」
「ん?」
「これ……クリスマスプレゼント」
鞄から取り出した包みを差し出すと、琉生の顔がぱっと明るくなる。
「俺に? ありがと、乃愛!」
「うん。……開けてみて」
包みの中から出てきたのは、深い紺色のネックウォーマーだった。
「お、いいじゃん! あったかそう」
「部活の行き帰り、寒いかなって」
「めっちゃ使う。明日から使うわ」
「ふふっ。よかった」
ほっと笑った乃愛だったが、すぐに「あ、それとね」と、もう一つ小さな包みを差し出した。
「まだあんの?」
「……うん」
琉生が包みを開く。その手が、中に入っていたものを見て止まった。
入っていたのは、一組の靴ひもだった。
「……これ」
「靴ひも。練習のときに使えるかなって」
琉生はそれを手に取ると、しばらくその色を見つめた。
そして、ふっと笑う。
「ひまわり色じゃん」
「……気づいた?」
「気づくに決まってんだろ」
その答えが嬉しくて、乃愛の頬も自然と緩む。
「次の練習から、これで走るわ」
「ほんとに?」
「おう」
「でも……すぐ汚れちゃうかも」
「いいじゃん。靴ひもなんだから」
琉生はそう言って、ひまわり色の靴ひもを大事そうに包みへ戻した。
「そのためにもらったんだろ?」
「……うん」
乃愛は小さく頷いた。大切にしまっておいてほしいわけじゃない。
琉生が好きなサッカーをして、夢へ向かって走るとき、その足元に自分が選んだ色がある。そう思うと、胸の奥が少しくすぐったくて、それ以上に嬉しかった。
乃愛はもう一度、目の前のイルミネーションへ視線を上げる。
「……来年も、一緒に見たいな」
考えていたわけではなかった。
ただ、今が楽しくて。隣に琉生がいることが嬉しくて。
だから自然にこぼれた言葉だった。
「見ようぜ」
琉生は迷うことなく答えた。
「来年は、もっとすげーとこ探すか」
「ふふっ。ここでも十分だよ?」
「じゃあここで見よ」
「うん」
来年も。その次も――。
そこまで考えかけたとき、乃愛の胸の奥を、ほんの小さな何かがよぎった。
スカウトという言葉。
琉生が夢へ近づいていけば、いつか今とは違う場所でサッカーをする日が来るのかもしれない。けれど、それがいつなのかも、どこなのかも、まだ何も決まっていない。
「乃愛?」
呼ばれて、乃愛は隣を見る。
「どうした?」
「……ううん。なんでもない」
そう答えて笑うと、琉生も「そっか」と笑った。
今はまだ、これでいい。乃愛は隣にある琉生の手へ、そっと自分の手を重ねる。
すぐにその指が握り返され、冷えた指先に温もりが広がった。
二人はもうしばらく、並んで冬の光を見上げていた。

