余命一年の彼女に贈る習作

 三月。画材を見るために街中を歩けば、卒業シーズンで盛り上がっていた。出会いが別れに変わる季節。
 白い息を吐きながら歩き、電車に乗り込んだ。人は少なく、座席に座って流れゆく景色を眺める。この見慣れた景色ともしばらくはお別れ。
 明日からはイギリス留学だ。
 緋夏と別れてからもう二ヶ月。彼女のことを思わない日はない。それでも緋夏に言った通りになってしまっている。
 立ち直って、一月締め切りだった留学の二次募集に応募、合格。緋夏に会いたいとは思っても、留学に行けば思い出す機会も少なくなるだろう。記憶を塗り替えるような新しい経験が待っているだろうから。
 楽しみにしている。同時に、怖くもある。緋夏との思い出が薄れるのは仕方のないことだとしても受け入れ難い。いつ会えるかも、そもそも会えるかもわからないのに、僕はいまだに彼女に恋をしている。
 どこかで生きていれば、きっとまた会える。
 信じて、自分の人生を歩き続けなければならない。
 緋夏は今、どうしているのだろうか。
 ペットシッターの夢に一歩近づけているだろうか。
 それとも、などとは考えたくない。いっそのこと、嫌い、と面と向かって言ってくれたら楽だったのかもしれない。
 好きだから、辛くなる。
「……緋夏」
 眠りの世界に入っていた僕は最寄り駅の名前が聞こえた途端、慌てて下車をする。外の耐え難い寒さで眠気は覚めた。固まった姿勢をほぐしつつ、改札に向かって歩いた。
 改札から出ると、騒ぎ声が耳に入ってきた。
「ねえねえ、そろそろかえろー。さむい」
「今日はここで寝るって言っただろ。兄ちゃんとすれ違っても困る」
 騒ぎ声だと思われたそれは聞き慣れた声の間違いだった。聞き慣れていたから、すんなりと耳に入ってきた。僕は見慣れた二人に近づく。
 懐かしい。二人に出会った時を思い出す。
「……どうした? 迷子か?」
 僕は駅のベンチ前で騒ぐ恭平と陽平の二人に、声をかけた。
「だ、誰……って」
 恭平は陽平を庇うように僕を見上げる。僕だと気づくと、一歩、後退りをした。
「久しぶり、二人とも」
「……久しぶり」
 恭平は肩にバッグをかけて、拳をギュッと握っていた。
「お姉ちゃんはいないのか?」
「うん、二人で兄ちゃんに会いに来た」
「僕に?」
 恭平は頷く。先ほどから恭平の足は震えていて、目も合わない。緊張しているのだろうか。陽平も寒さで落ち着きがない。
「とりあえず中に入ろう」
「じゃあ……あの喫茶店がいい」
「わかった」
 僕は力んでいる恭平の手を握り、三人並んで喫茶店へ向かった。僕たちにとっては思い出深い喫茶店だ。店の外観を視界に入れた時はどこか落ち着く感覚がした。緋夏がいなくなってからは喫茶店に行っていない。喫茶店での思い出は全て緋夏との思い出だ。
 中に入ると、中年の女性店長が驚いた顔で僕たちを見る。声をかけようとしてくれたが雰囲気を感じ取って口をつぐんでいた。客は僕たち以外に誰もいなかった。僕はミルクティーのホットを注文。恭平と陽平は何もオーダーしなかった。
 注文を終え、僕は目の前に座る二人を見る。恭平の顔はムスッとしていて、陽平もいつもの元気はない。ここに来るまでの間、二人は無言だった。
「緋夏は……生きてるのか?」
 最初に僕の口から出た言葉は緋夏の生存確認だった。もしかしたら二人は緋夏の訃報を、と真っ先に思い浮かんだことだったから。
 しかし杞憂だったらしく、恭平は僕の質問に頷く。
「生きてる」
「そっか。よかった」
「でも治ったわけじゃない。いつ死んでも……おかしくないって」
「余命、また縮んだのか?」
 恭平は黙り込む。僕は察するだけで追求はしなかった。元々の余命は一年だった。その通りになろうとしている。
 緋夏の話題が気になったが、話の中心を二人に変えることにした。
「転院した後、二人はどうしてたんだ?」
「引っ越しをして、病院の近くに住んでる」
「学校も転校したのか」
「……うん」
「新しい友達はできたか?」
「ううん、まだ慣れてない」
「陽平は?」
「ぼくもおなじ」
 姉がいつ死んでもおかしくない状態で、学校生活を楽しめる雰囲気ではないだろう。友達もいただろうに離れ離れ。母も姉のことで忙しいから二人で生きていくしかない。
「大変……だな。転院先はどこなんだ?」
「関東の方。姉ちゃんからは教えちゃダメって言われた。」
「流石に関西からは遠いな」
 店長が注文した品を持ってくる。ミルクティーのホットとクッキーが六枚乗った皿が机に置かれた。サービスでつけてくれたらしい。
「恭平くん、陽平くん……」
 店長は何か言おうとするが、口だけが動いている。言葉がまとまらなかったのか、しばらくは二人のことを見ていた。
「今度は……お姉ちゃんと一緒に来てね」
 二人は店長を見上げ、頷いた。それ以上は何も言わず、店長は去っていった。
 僕がミルクティーを飲むと、二人もクッキーを頬張り、コップに入った水をちびちびと飲み始める。
「クッキー、おいしーよ」
「俺の分もあげる」
 二人のやりとりを見ていると懐かしいものを感じる。記憶は全く薄れていないもので、雰囲気がいつもと違うこともわかっている。和ませながら、僕は二人が本題を切り出すのを待っていた。関東から関西に来ているのだ。それなりの用事があるのだろう。
 しかし僕から先に口を開いていた。
「ここに……何しに来たんだ?」
 恭平は口の中のクッキーを飲み込み、答えた。
「兄ちゃんに会いに来た」
「僕に?」
「渡したいものがあったから」
 恭平は膝に置いていたバッグを漁ると、一冊のノートブックを取り出した。見覚えのある、思い出深い一冊。
『死ぬまでにすることリスト』
 表紙にはそう書かれている。
 僕は恭平からノートを受け取った。すぐに開けなかったのは前まで緋夏が開けることを許してくれなかったからだろう。
「緋夏から渡すように言われたのか?」
 恭平は首を横に振る。
「俺、そのノートを勝手に見たんだ。兄ちゃんのこと、いっぱい書いてあった。だから届けなきゃって思った」
「まさか、このノートを渡すためにわざわざ?」
「うん。姉ちゃんは知らない。でも、兄ちゃんに届けたかった」
「黙って来たわけか。悪い子だな、家出少年だ」
「良い子になっても……姉ちゃんは救われないもん」
 返す言葉が見つからなかった。代わりに、僕は恭平の頭を撫でる。良い行動ではなくても、頑張ってここまで来たことを褒めたかった。少なくとも僕はこのノートを受け取って、救われた気持ちになったから。
「やっぱり、兄ちゃんも一緒に来てよ。病院の場所教えるから、俺たちと一緒に来てよ!」
「でも、おねーちゃんが……」
「いいじゃん! 姉ちゃんが喜ばないわけない。だって……だって、兄ちゃんのこと毎日、話してる。会いたいって、ずっと言ってる。死ぬ前に兄ちゃんと会えないなんて、救われないよ……」
 恭平はポタポタと机の上に涙を落とす。僕がティッシュを渡すより先に袖で涙を拭い、話を続けた。
「姉ちゃん、もうすぐ手術がある。成功しなきゃ……死んじゃう」
「……そっか」
「ずっと怖がってる。寝てる時も兄ちゃんの名前、いつも呼んでる。だから兄ちゃんに来てほしい。俺、それくらいしかできることなくて、だから……一緒に来てよ!」
 恭平の声が揺れる。今までずっと我慢していたものを流しながら、視線は僕をまっすぐ捉えていた。胸が締め付けられた。でも僕は首を横に振るしかなかった。
「なんで……兄ちゃん、姉ちゃんのこと嫌いになった?」
「違う。緋夏のことはずっと好きだ。だからこそ……会いに行けない」
「好きなら……!」
「明日から留学で海外に行くんだ。ここから遠くの国に行く。関西と関東の距離じゃない。もっと遠い」
「なんで! 姉ちゃんの方が大事じゃないの!」
「大事だよ。でも留学は母親との約束で、小さい頃からの夢だった。母親が見れなかった海外の景色を、母親が思い描いていた天国の景色を僕は描かなきゃいけない」
 恭平は言葉を発しようとするが、むせび泣いていたせいで言葉になっていなかった。そして大声を出しながら子供のように泣き始めた。
「姉ちゃん……姉ちゃん……」
 陽平が恭平の背中をさする。僕は立ち上がり、恭平を抱きしめた。頭を撫で、陽平の代わりに背中をさすった。恭平は僕の服に顔を擦り付けて、泣いていた。
「……頑張ったな」
「だって、俺……何にもできてなくて、だから……」
店長が様子を見にやって来る。ティッシュ箱をテーブルの上に置き、三人だけの空間にしてくれた。
しばらくすると泣き止んだ恭平が顔を上げる。僕から離れて、ティッシュで顔を拭き始めた。
「……ごめん」
「子供が気にするな。頑張って来てくれたのに、謝るのは僕の方だ」
 僕は恭平のお願いに答えてあげることはできない。
「俺……姉ちゃんにまだ何にもできてないのに。姉ちゃんは俺たちのためにずっと頑張ってくれて、だからなんとかしてあげたいって思って、でも俺じゃ何もできなくて……」
「いいんだ。今までいっぱい我慢した。それだけで十分。カードどころか、何も欲しがらないで良い子でいてくれる。緋夏がそんなことを言っていた」
「カードなんていらない……姉ちゃんがいればそれで良いんだもん。カードゲームで負けても姉ちゃんがいればそれでいい。でも、負けて、それを貧乏だって馬鹿にされて、怒る以外に何もできない自分は……もう、嫌だもん」
 恭平はまた涙を流し始める。ティッシュと袖でぐちゃぐちゃになった顔を拭う。
 ふと、思った。泣き顔が緋夏とよく似ていた。
 二人は笑った僕を不思議そうに見つめる。
「じゃあ、最後に頼まれてくれないか?」
「……何を?」
「ちょっとだけ待っててくれ」
 僕は手提げバッグにノートをしまい、代わりに横開きのスケッチブックを取り出す。鉛筆も取り出し、最後のページに二人のスケッチを描き始めた。
 二人は黙って、僕が描く様子を見ていた。僕はページを線で縦に二分割して、左半分に恭平と陽平を描いていく。これが最後だ。丁寧に、慎重に、スケッチをした。
 タイトルは『うりみっつ』
 描き終えると、僕は陽平に渡した。
「まだ絵、描いてるか?」
 陽平は首を縦に振る。
「じゃあ僕のスケッチをしてくれ」
 陽平は慣れた手つきでスケッチを始めた。練習をしていたのだろう。まだ不格好。でも、誰にも再現出来ない僕の絵だった。
 僕は描き終えた陽平からスケッチを受け取り、タイトルをつけた。
『。』
 最後にページの端を折ったら完成だ。これで折れのあるページは九つ。
「本当は次に二人で出かけた時に渡す予定だった。結局、渡せなかったから、僕の代わりに渡してほしい。できるか?」
 僕は恭平に問う。恭平はまっすぐとした目で言った。
「できる」
「頼もしくなったな」
 僕は恭平にスケッチブックを託した。大事にバッグにしまい、チャックを閉じる。恭平ならきっと届けてくれるだろう。
 店から出ると、朝よりは暖かくなった日差しが僕たちを照らしていた。
「今から帰ると遠いだろうし、家に泊まってくか?」
「ううん、帰る……届けなきゃ、いけないから」
「なら頼んだ」
 僕は駅まで二人についていく。財布の中の日本円を使わなくなる僕は二人に乗り換え駅までのチケットを買い、残りの電車賃を渡した。
 改札の前で、二人とはお別れ。次はいつ会えるかもわからない。
「ありがとう、兄ちゃん」
「……ありがとー」
「どうしたしまして。でも二人で家出するのは今日だけな」
 二人は同時に頷く。泣きそうになるのを抑えながら、僕は二人を抱きしめた。姉のために動ける弟たちが悪い子なわけがない。
「また、おえかきおしえて」
「ああ、次会った時には僕より上手くなっててくれ」
「うん」
「次、いつ会える?」
「いつ会えるか、約束はできない。でも自分の人生を生きて、その先で会える」
 僕は二人の背中を叩き、離れる。
「さあ、行ってこい」
「俺、絶対に届けるから……ばいばい」
「おにーちゃん、ばいばい」
 恭平と陽平は僕に手を振り、僕も二人の背中が見えなくなるまで手を振った。
 僕は二人を見送った後、しばらくはその場に立っていた。家に帰れば、留学のこと以外を頭に入れる余裕はなくなる。今は過去の思い出に浸りたかった。
 去年の初夏が懐かしい。迷子の恭平たちと出会って、緋夏と連絡先を交換して、喫茶店で同じ時間を過ごした。一年にも満たない思い出が僕を大きく変えてくれた。
「……緋夏」
 僕はバッグからノートを取り出し、駅前のベンチに座る。これを読んでしまえば緋夏との繋がりは無くなってしまうだろう。とはいえ元から無かったものを二人が繋いでくれた。
 緋夏はノートの全てをやり遂げられたのだろうか。緋夏は何をしようとしていたのだろうか。
 僕は息を整えて、一ページ目をめくった。一番上にはノートの名前と同じ言葉が大きく書かれていた。その下から箇条書きで書き込まれている。
――家庭が困らないようにお金を貯めておく
――恭平と陽平にプレゼントを渡す
――私が死んだ後でも元気になってくれるサプライズを考える
――大切な人たちに手紙を遺す
――親孝行する、お母さんを笑顔にさせる
 最初の五つはやり遂げたのか、もう必要がないのか、文字の上に一本線が引かれている。自分のためのリストでは無かった。
 けれど次第に内容が変わっていく。
――恋愛をしてみる
――歩夢くんとデートに行く
――弟たちといっぱい遊ぶ
――夏休みを満喫する
――歩夢くんに告白の返事
――歩夢くんと夏祭りに行く
――歩夢くんと花火を見る
――恭平のわがままに付き合う
――陽平とお絵描きする
――歩夢くんといっぱいハグをする
 リストは自分がしたい内容へと変わっていた。半分以上が僕に関することだった。その大半を僕と緋夏は達成していた。ページをめくり、思い出をなぞる。達成できていない項目も中にはあった。
――歩夢くんとお泊まりデート
――二十歳になってから歩夢くんとお酒を飲む
 リストは五ページにわたった。最後のページの最後の項目を見た時、僕はノートを強く握った。
――歩夢くんとずっと一緒にいる
 線は引かれていなかった。
 次のページからは日記が書かれていた。特定の日の出来事が書き込まれている。始まりは、僕だった。
『男性のお客さんが連絡先の置き紙をしてくれた。でも肝心の連絡先が書かれていなくて、ちょっと笑っちゃった。次に来てくれた時、交換したいな』
 それからは僕もよく覚えている思い出が緋夏視点で書かれていた。喫茶店での思い出、僕が初めてデートに誘ったときのこと、余命を僕に伝えたときのこと、デートのこと、告白のこと、付き合った日のこと。緋夏が僕と過ごした思い出が綴られている。家族との思い出も同じくらい綴られていた。
 最後のページに差し掛かったときだった。厳密には最後のページは破られているので、その一つ前のページだ。これまでとは違う文章が綴られていた。
 歩夢くんへ、から始まっている。明らかに僕に向けたメッセージだ。恭平が届けてくれた理由はおそらくこれだろう。
 緋夏の本当のメッセージが書かれている。
 読むか、迷った。けれど読まなければ先に進めない気がした。駅のベンチ、人は行き交う。だからこそ一人だけの空間が生まれる。
 文字に緋夏の声を当てはめて、僕は最後のメッセージを読み始めた。
『歩夢くんへ
 勝手に転院してしまってごめんなさい。きっとすごく怒っていると思う。
 歩夢くんが嫌いになったわけじゃないよ。大好きだから、これ以上は歩夢くんの負担になりたくないと思った。
 転院先が関東の方だって言われちゃったんだ。私のことが大好きな歩夢くんだから何がなんでもついてくると思った。
 想像したら嬉しいようで、やっぱり嬉しくなかった。歩夢くんの迷惑にはなりたくなかったから。それにいつまでも歩夢くんにばかり甘えていられないと思った。
 だからここでお別れにしましょう。
 歩夢くんと出会えて、毎日が楽しかったです。バイトばかりで恋愛なんてしたことがなくて、余命宣告もされて、そんな灰色の人生にあなたが色をつけてくれました。
 あなたは恩人であり、自慢の彼氏でした。歩夢くん以上に好きな人は現れないだろうし、歩夢くん以上に私を好きでいてくれる人もいないと思う。歩夢くんも同じ気持ちだと嬉しいな。
 それはそれとして、私がいなくなっても恋人は作ってね。歩夢くんには幸せな人生を歩んでほしい。
 リストの最後の項目は『歩夢くんが幸せな人生を歩むこと』だから。
 夢に向かって歩いて。私も生きて、ペットシッターになるから。
 でも、もしその先で会うことがあれば、その時は積もった話でもしましょう。
 私はあなたが世界で一番好きです。
 挫けそうになっても忘れないで。
 あなたをこんなにも好きで、愛していた女性がいたことを、忘れないでね。
 そして、たまには思い出して、笑ってね。
 これでお別れです。
 今までありがとう。
 私と出会ってくれて、ありがとう。
 こんな私と付き合ってくれて、ありがとう。
 生きればいいって言ってくれて、ありがとう。
 いつまでも大好きだよ。
 緋夏より』
 メッセージを読み終えた僕はノートを閉じる。
 ふと、広大な空を見上げる。スケッチの対象としてしか見ていなかったが、意外にも綺麗なものだった。この光景の先にきっと天国はある。僕はそれを白いキャンバスに描き映さなければならない。そして、さらにその先で、僕は彼女を待っていたい。
 いつか緋夏を思い出して、泣く時はあるだろう。それでも泣きながら、前に進んでいける気がした。
 そう、思っていた。
 玄関扉の前に着いた時だった。
 鍵を開けようとして、付けていた犬のキーホルダーが目に入った。緋夏とお揃いで買った物だった。途端に、僕は泣き崩れた。
 胸が苦しくて、どうしようもないほど辛かった。耐えられるはずがなかった。
 緋夏は最初から最後まで僕のことを思ってくれていた。好きでいてくれた。
 だからこそ胸が握りつぶされるような感覚がした。
 目も喉も熱くなって、えずいて、泣いて、声を上げた。
「緋夏……会いたい、緋夏に、会いたい……」
 キーホルダーを握りしめながら、緋夏を想う。
 今はただ好きだと伝えたかった。世界で一番好きな女性に、僕が愛した恋人に。